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素人と科学の交差点

俺らは、想像以上に安く肉類をゲットした。

気分が高揚する。

俺の仕事は、

安く買って高く売る事。

安く買えるのは、人生の喜びだ。


ひぐらしさんの顔を横目で見る。

気持ちうれしそうだ。

つれさんは、スマホを見ている。


「俺、仕事がら安く買えるとうれしいんですよね」

俺は言った。


ひぐらしさんは笑みをこぼす。

こんな表情をするんだ。

そう思った。


「一緒ですね。私も、仕事がら安く買えるとうれしいです」

ひぐらしさんは言った。


「投資って何を売買してるんですか?」

俺は尋ねた。


「私は、主に政策関連銘柄を見てます」


「政策関連銘柄ってなんですか?」


「政府や官庁の動きで上がりうる銘柄ですね」


「そんな政府や官庁の動きってわかるんですか? やはりツテとか」


「投資にツテは使いませんよ。毎年予算案ってあるでしょ。あれです」


「予算案?」


「はい。その省庁がどんな分野にお金を使おうとしているか。それがわかるんですよ」


「省庁がお金を使うと、その業界の売上が上がる。そんな感じですか」


「まぁ端的にいうと、そうですね」


「それで、儲かりますか?」


「そうですね。どのくらいの時期見続けるかにもよりますね」


「というと」


「政策関連銘柄は、答えがわかっているようなもの。いわば受験で言う過去問のようなものです」


「過去問ですか」


「そうです。受験生は過去問対策をしますよね」


「はい。しますね。俺もかなり過去問はしました」


「私もです。過去問対策をするから、まぁ正直、すぐに市場に反映されるわけです」


「それじゃあ、勝ち目はないんじゃないですか?」


「それがね。ほら白書とかあるでしょ」


「白書。たしか省庁が出しているレポートのようなものですよね」


「そうです。あれを毎年精査して、株価、マクロ経済の動き、個別銘柄の売上、そういうものを追っていくと、ある程度予想はできるようになるんですよ」


そんな話をしていると、

俺たちは吉田荘に着いていた。


「それで、今からカレーの仕込みします?」

つれさんが尋ねた。


「俺は大丈夫です」


「私も一時間程なら、大丈夫です」


俺たちはカレーの準備をはじめる。

「家庭科でカレーって作ったよな」


「そうですね。でも家庭科で作るカレーってウレシイから美味く感じるけど、実際は味が微妙なんですよね」


「あれはなんで微妙なんだろう」

ひぐらしさんは、首を傾げる。


「なんか生煮えというか堅いですよね」


「あれなんじゃないの。家庭科の時間って短い。でも本格カレーって何時間も煮込む。その違いじゃ」


「おぉなるほど。でも婆ちゃんって何時間も煮込んでました?」


「あの。ちょっと待ってくださいな」

つれさんが、戸棚の奥から、ブランケットのようなものを取り出す。


「これです。これで鍋を包んでました」


「鍋を包む?」


「はい。なにしてるの?って聞くと、カレーが煮立ってから、こうやって鍋を包んで置いておくと、勝手に火が通るんだよって言ってました」


「ほう。それは面白いですね。これならカレーの番はいらない」


「じゃあ、その方法でやるとして、カレーの準備をしようか」

俺らはカレーの準備を始めた。


皆、家庭科の授業でやっていたらしく、手際は悪かったが、完全な素人というわけでもなかった。


「うわ。目が痛い」

つれさんは、玉葱に苦戦している。


「わかる。わかる。玉葱切るのって微妙に罰ゲームだよな」


「あの玉葱の目が痛い成分って、揮発成分なんじゃ」

ひぐらしさんは、スマホで調べ出す。


「やはりそうです。揮発成分ですので、火をつければ、消えます」

そう言い、

ひぐらしさんは、ライターで火をつける。


「うわ。何するんですか。揮発成分なら爆発するかもしれないじゃないですか」

俺は抗議した。


「さすがに玉葱の揮発成分で、火事にはならないでしょ。もし火事になるなら、料理では使いませんよ」

ひぐらしさんは笑った。


「いや。これすごい。ちょっと目の痛みがマシになりました」


「良かった。じゃあ私はライター係になりましょう」


「ちょっと待って、前にもらったアロマのキャンドルがあるから、それ持ってくるわ」

俺は部屋に戻り、アロマのキャンドルを持ってくる。

アロマのキャンドルに火をつけると、ラベンダーの香りが辺りに広がる。

そして玉葱の嫌なニオイも多少ましになった。


俺たちは気を取り直し、食材を切る。


ただ調理スキルは低く、あらゆる食材はボロボロになった。


「いや~。なれないと、具材がボロボロですね」

つれさんは苦笑いをしている。


「食材と調味料、レシピさえあれば良いと思ってましたが、違いますね。

調理技術というのも必要になる」

ひぐらしさんは、頷いている。


この人は、

いつも分析するんだな。

そう思った。


「ちょっと待って、これじゃがいもとか手で剥いてたけど、婆ちゃん、なんか道具使ってたよ」

つれさんは台所を探し出す。


「じゃがいもの皮を剥く道具ですか。ちょっと調べてみます」


「あぁこれですね。ピーラー。こういうのですか?」

ひぐらしさんは、画面を見せる。


「あぁこれです」


「えぇっとどんなん? あぁこれなら、こっちの引き出しに」

俺はそのピーラーというのを取り出す。


「これです。これでたしか、こうやってスーッと」

つれさんは、ジャガイモの皮を剥き出す。


「おぉめっちゃキレイじゃないか。次からこれで行こう」


二人とも頷いた。


「まぁでも、あとは焼いて、煮るだけだな」

俺は火をつける。


「あの、中火ってどのくらい?」


「そのガスコンロに書いてない?」

ひぐらしさんは目を細める。


「これくらいが、中火だそうです」

つれさんはスマホを見せた。


「なるほど、これで5分」

俺はスマホのアラームをセットする。


「あとは見てるだけですか」

それから、ルーや水を入れ、カレーはあと煮込むだけになった。


「じゃあ沸騰したことだし、あとは鍋を包もう」

俺たちは恐る恐る、

カレーの鍋を包む。

本当にこれでいいのか?

俺は疑問だった。

でも、

インスタントコーヒーも、俺の常識を崩した。

きっとまた、

俺の常識を崩してくれるのだろう。

そう思った。


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