71.お別れ
***寛太***
隣国の砂漠までひとっ飛びして、リオを目一杯満足させた。
「ねえ、ユズ、気のせいかな。砂が、ここに来た時よりキラキラして見えない?」
「そうよねぇ。集めておく?きっと宝石よ」
「だよねぇ」
*****
兄ちゃんズが、対戦ゲーム感覚でやろうと提案してからは、怒涛のながれだった。
渉チームはリオとアクセル。光太チームはカケル様と柚子。
作戦会議が始まり、スタートの合図とともに、何か途轍もない力がぶつかり合った。
そこらじゅうの物が圧縮されて宝石になる程だ。
対戦前に、柚子とカケル様の結界二重重ねバージョンを提案した僕自身を、心の底からほめてやりたい。
*****
ピートは、「こんなものが世にでたら、宝石の市場価格が……」と呆然と口にした。
時々、商家の息子らしいことを口にするピートだった。
「お父さんお母さんへのお土産これでいいかな」と光太が口にすると、渉は、
「ついこの間まで一緒に旅行してたのに、お土産なんかいるか?」と驚いている。
「ただなんだから、持って帰ったら?」
柚子は大雑把に袋にいれて押し付けている。
拾っても拾っても、まだある。腰が痛くなってきた。
しかし、後々、宝石の大暴落のニュースを聞くのも後味が悪い。もう少し頑張るか。
僕らは、楽しいイベントの後始末で疲れ切ってしまった。
夜、スーパー銭湯につかりながら、光太が話し出した。
「寛太、僕ら、そろそろ帰るよ。二人を置いて帰らなきゃならないなんて、すっごく嫌だけど。ここに来られただけでもラッキーだと思わなきゃね」
「光太ちゃん……」
「おいおい、大丈夫。そんな顔すんなって、光太はすぐにでもまた来られるんだろ?異世界トリップの能力があるっていわれたからさ」
「でも、渉を置いては……」
「気にすんなって。最初に聞いた時は、置いて行かれるって思って大反対したけどな。でも、やっぱり二人が寂しそうに見送るのを考えると、またすぐ来るからなって言ってやりたいじゃん。俺は熱が出ようが、腹を下そうが、大きな休みの度にくるつもりだけどな。それだって、できるのは学生のうちだけだ。だから光太は遠慮せず、また後でな!ってくらいの感覚でさよならすればいい!」
「渉兄ちゃん……。ありがとう。すっごく心強くなったよ」
僕は湯船のお湯を顔にぶっかけて涙を隠しながら感謝した。
お風呂から上がって柚子にその話をしたら、
「渉兄、ありがとう。大好きだよ!」と飛びついていった。
ひとしきり、なでなでされた後、顔を上げて、みんなが見ているのに気付いた柚子は、照れ隠しでか、
「これで、かんちゃんの焼きそばは安泰ね。私のシャンプーや化粧水も!」と変な言い訳をしていた。
***柚子***
光太ちゃんが、自由にこの世界を行ったり来たりする能力があって本当によかった!かんちゃんが心細い思いをしているのが一番嫌だもの。
リーダーの『勝負師』とか、私の『予知:不定期』とかは、全く役にたってくれそうにないし、実感もないけれど、光太ちゃんの特性だけは非常にありがたい。
私とかんちゃんの両想いは……正直まだしっくりきてないけど、でも、絶対に私を一人にしないって言ってくれたかんちゃんが大好き!
あ~、心の中で思うだけで照れる!
リビングでは、兄ちゃんズが、次はどこに向かうのかと、リーダーに聞いている。
「ドラゴン飲み会の場所探しも予定に入れておいて欲しいです」
「わっち、ドーンもういっかい!」
「リオ、祠が優先だよ」
ほのぼのした会話の中にも、私たちらしい、規格外の話題が紛れ込む。普通の高校生をしていたら考えられない世界だ。
でももう、驚かない。ここは、私の日常だもの!
「ほこら!あと、だいじょぶ!ね?にいたま!」
「そうじゃのぉ。そこまでは急がぬのぉ」
「かみさま、だいじょぶ!いった!だからだいじょぶ!」
「「「????」」」
「カケル様が神様なの~~~~~~!!!!???」
「リオ、内緒じゃと言っておいたであろう。まったくもう。リーダー、教会には言うでないぞ」
「ないしょ?いっちゃダメ?」
どうやら、リオは内緒が分かっていなかったようだ。
神様ねぇ。かんちゃんに魔法の木の実をくれたことのお礼を言うべきか。いまさらなのか。
いずれにせよ、まだ驚くことが、残っていたようだわ!




