66.ドガルと合流
***寛太***
どたどたと慌ただしくピートが帰ってきた。
「ドガルさんから良いアイデアいただきましたよ!」
そう言って話し始めた。
ふむふむなるほど、ドガルさんの部屋に集合して作戦会議でもしているように見せかけて、実のところは部屋の中に設置したキャビンで全員で快適に過ごすと。
渉が、でもさ、と口を挟む。
「ドガルさんの宿坊の部屋が小さかったら?こんなにぞろぞろ押しかけたらかえって目立たないか?」
「それもそうか。部屋を見てから決めよう」と僕が口に出すより早く。キャビンがサイズ可変魔法で縮んでいく。一瞬遅れて僕らも縮む。
「ユズ!僕らを縮めてからキャビンでしょ!怖いよ!!」
今後の為にも盛大にクレームを入れておいた。
「ごめんってば。それより、部屋をのぞきに行ってみましょう!ちょうど良ければ、その場で展開すればいいわ」
そういって、極小になったキャビンを浮かせてドガルさんを探す。
世界が大きく感じるのでちょっとした大冒険だ。
「よく考えたら、このサイズにしたら、鳥の邪魔にもならなかったかもね」
「寛太、冷静に考えてみろよ。不動の小さな、でも極悪の結界が張られた硬い塊に鳥がぶつかってきたら?俺らキャビンごと鳥の眉間にめり込むかもよ」
「……。」ドガルさんの部屋にご厄介になりに行こう。
そんなこんなでドガルさんの部屋を探し当てて押しかけると、そこは、天井が高く広々した部屋だった。良く言えばだが。
悪く言えば、だだっ広くて、寒々しい。小さな体育館のような部屋だった。
「おう、お前ら……。お前ららしい登場だな」
「ははは」笑ってごまかす。
「ドガルさんは、なんでまたこんなところに泊まることに?」
思わず挨拶もすっとばして聞いてしまった。
「なんでも昔は集会所に使っていた場所らしいぞ。今では巡礼の大所帯が来た時に雑魚寝する用だとよ。討伐隊の指揮をとるなら広さも必要だろうとここをあてがわれてなぁ。王族が部隊を率いて遠征する訳じゃねえんだぞって言いかけたがよぉ。親切なニコニコ顔でご老体にいわれちゃなぁ」
「あぁ、トリナテ司教様ですか」
「そういうこった」
ピートとドガルさんは分かりあったようだ。
部屋を見回すと、隅におかれた折り畳みの簡易ベッドが寒々しさを加速させている。
「これよりは、快適ですよ。僕らのキャビンの方が。だだっ広いって点では一緒ですけどね」
そうして、中を案内すると、いつものように唖然呆然のリアクションをしてくれた。お約束だけど、楽しい。
「つくづく聖獣様、聖女様ってのは別の生き物ってことなんだなぁ」
ドガルさんはそう呟いて僕の腕に納まっているカケル様を見た。
「あ、抱っこします?」
ついつい反射で差し出すと。驚かれた。
「えっ???」「え?」えっと驚いたドガルさんと、驚かれたことに驚いた僕と、二人して見つめ合った。
市場なんかでは可愛い子犬ねって言われた後に差し出すと、みんな抱っこしてくれるんだけどな。ドガルさんは聖獣って正体を知っているからダメだったかな。
「いや、なに、教会の奴らは、気高き聖獣様は聖女様とお連れ様にしか触れさせないと言ってたからよぉ」
「あ~、本性に戻ったらそうかもねぇ。大きくて顔が怖いからだれも側に寄らないかもしれないし」
「ワシの顔は怖くはない!凛々しいのじゃ!」
バタバタ暴れだして抗議する聖獣様を、凝視するドガル。
威厳がなくてすみません。と心のなかで詫びておいた。
「これは、教会の関係者にもリーダーにあらかじめ、聖獣はこんなんですよって言ってもらっておいたほうがいいわね」
「あ、はい、一応、簡単にはカケル様と柚子様はくだけた方だと説明はしたんですけど……」
「プッ。」
渉が思わず噴き出した。
「あ、ごめん。くだけた方って、物は言いようだと思って。リーダーに迷惑かけんなよ、柚子」
とんだとばっちりの柚子は怒った顔をしたが、面白そうに、ピートを見て、
「それで?リーダー。実際にはどんな風にいったの?」と質問を始めた。
頑張れピート。負けるなピート。でも真実は早めにゲロしたほうが、後が楽だぞ。
心臓が悪くないか確認しておきました、のくだりまで話して、渉と光太が笑い転げるまであと少し。




