63.グレー
***寛太***
柚子は気まずそうにしながらも、詳細鑑定が出来るようになったこと、よほどのことが無い限りそれは使うつもりがないので安心して欲しいということをキャビンの居間で発表した。
それによって明らかになった一例として光太の『交流のある異世界へ旅する能力』があることも伝えられた。
「え!?僕?そんな能力があるの?」
「そうじゃ。まあ、普通は異世界に繋がりなどないでのぉ。なんの役にも立たずに終わるはずじゃった能力が開花したのじゃのぉ」
「じゃあ、もしかして、僕はあっちへ帰ってもまたすぐにこっちに来れるってこと?魂に傷とかつかずに?」
「恐らくそうじゃろう」
「うわ~!!やめてくれ。俺を置いて勝手に行き来するなんて!」
渉が絶望的な顔で頭を抱えている。
「俺も剣鬼とかの才能よりそっちが良かった……」項垂れながらこぼした言葉には悲哀が感じられた。僕は励ます意味も込めて、肩をたたきながら言った。
「こればっかりは仕方がないよ。僕なんか生来の特殊能力なしだよ」
「寛太はサイズ可変の魔法があるからいいじゃないか」
「あれは、魔力の木の実のおかげだから……」
微妙な空気に拍車をかけてしまった。
「能力は個人のものだもの。人をうらやんでも仕方がないわ。渉兄、ここに来られているだけでも凄いってことを忘れないで。それに光太ちゃんも、光太ちゃんの生活を大事にして!かんちゃんは一人立ちしてここでやって行こうと頑張っているの。いつまでも光太ちゃんの可愛いかんちゃんではいられないわ」
「そうじゃぞ、光太。柚子と寛太が子でもなしたら、お主は伯父じゃ。父親の威厳をそぐような猫かわいがりはしてはならぬ」
「「「「……」」」」
怖いほどの沈黙の後、一番に口を開いたのはピートだった。
「カケル様。二人が付き合い始めて、結婚して、子どもが生まれるという長い道のりを省略しすぎてはいけません。ね、皆さんもそう思うでしょう?」
「そ、それは、そうだな。柚子が告白しても振られるかもしれないしな」
渉はワタワタしながらも、そう口にした。
「渉兄、振られるって失礼ね!かんちゃんは私が好きなのよ!振られるわけないでしょ!」
「「寛太、そうなのか!?」」渉と光太がこちらを見る。
「あ、あの、いや」
「いや??」
「あ、いや、そうです……」
「「どっちだ!?」」
「僕はユズが好きだよ」
「家族愛的な物じゃないんだな!?」
兄ちゃんズは僕が声を出すたびにかぶせるように問い詰めてくる。
もう若干やけっぱちになって、
「ちゃんと好きだよ。時に姉だったり妹だったり友達だったり、僕が傷ついたときはお母さんだったりもしてくれるけど、恋人にもなってくれるといいなって思ってる!」と大きな声でハッキリ言った。
柚子は真っ赤になって固まっている。
全員の視線が柚子に集まっているのに気づいて、ハッとしている。
「あ、……」何か言おうとしていたが、言葉にならなかった。
「すき、こいびと?」
唯一良く分かっていないリオが口を挟む。
「すきはこいびと?わっち、かんた、こいびと!!」
僕の所へ弾丸になって飛びついてきて頬ずりしてくれる。リオにも恋人ってニュアンスだけは理解できたようだ。
「柚子、強力な恋敵登場じゃのぉ」
カケル様は笑ってそう言った。皆も苦笑してその場はお開きだ。
光太の件も、僕らのことも、何一つ明確に決着はついていないが、このグレーな感じがちょうどいい気がする。ビバ日本人!




