62.詳細鑑定のその後
***寛太***
僕の頭はオーバーフローしたら寝てしまう便利な機能があるので、考え事をしていたら朝になっていたなんてことはアニメの世界の話だと思っている。
「まあ、それを光太ちゃんに話したら、僕は寛太のことを考えていたら朝になってることあるけどね!って笑顔でいわれたっけなぁ」
朝一番にそんなことを思い出してつぶやいた。昨日は夕飯も食べず引きこもったっきり寝てしまったので、まだ早朝だろう。お腹がすいた。
カケル様は僕のひとりごとを素早く聞きつけて、僕の顔の目の前で寝がえりをうって目線をあわせてくる。
「どうじゃ?決心はついたか?」
なんとも性急なことだ。
「そんなに告白させたいの?」
みんなを起こさないようにささやく声で問い返した。
「両片思いなんぞ周りが気を遣って迷惑するだけじゃろう」
そう言った瞬間に空気が凍った。オーラの見えない僕でもわかる。
物理的に気温が下がったからだ。恐怖の大魔王がすぐそばにいる。
確認する必要はないだろうが、一応言ってみる。
「ユズ、起きてた?」
むくっと起き上がってきて、無表情でこちらを見ている柚子。
「とりあえず、気温は戻そう。みんなが凍死しちゃうよ」
そう言われて初めて辺りの惨状に気づいたようだった。
これは相当怒っている。
カケル様の誘導で、ミニキャビンに移動して話し合いだ。
昨日アクセルさんに、下手な取り繕いはやめたほうがいいとアドバイスされたので、最初の最初、鑑定魔法が出来たときから今までを洗いざらいしゃべった。
「それじゃあ、カケル様が教えてくれた鑑定は一部だけしか見られない仕様なのね?本当はもっとたくさん見れていて、そこには人の気持ちとかまで載っていると?」
「そうじゃ。寛太が柚子を好きとか書いてあって、寛太がそれはまずい!見えないような鑑定だけに絞ってくれ!というで、そうしたのじゃ。じゃが、ワシだけ見る分には構わぬであろう?」
「それで、カケル様は見た。でも時々ポロっと漏らしていて、今回はガチでバレそうになったから、白状しようと。そういうことね?」
柚子の畳みかけてくる圧が半端ない。
「そういうことじゃのぉ。でも、両片思いをバラしたのは今さっきじゃ。それまではちゃんと黙っておけたのじゃ」
両片思いという単語でまたしても周辺が氷ついたが、今回は自分で気づいて元に戻してくれた。
気まずくて目があわせられない……。
その代わりに、元凶の子犬が『今までは黙っておけた』と胸をはって言い切った姿を睨みつけた。報復を覚悟しておけ!
「かんちゃんはキャビンに戻ってて」
柚子が少し間を置いてからそう言った。僕にはすごすごと出て行く以外に出来ることは無かった。
***柚子***
「まあ、ただの片思いよりは良かろうて」と、のほほんと言う子犬をぶん殴ってやろうかと思ったが、動物虐待の4文字が頭に浮かんでやめておいた。
「私はただの人間よ。だから他の人の過去や気持ちまで鑑定でのぞくことは望んでないわ。だけど、私にはカケル様が教えてくれれば出来ちゃう能力があるってことよね?だから秘密にしたんでしょう?」
「そうじゃのぉ」
「私は……、私自身がどう鑑定されているのかくらいは知っておきたいわ。他の人のは……、よほどの必要に迫られない限り今までの鑑定で十分だと思うから使わないわ。だから詳細な鑑定方法を教えてくれる?」
絶対に使わない!とは言わないあたり自分でもずるいなとは思うけど、必要にせまられたら何でもやるわ!
かんちゃんが誘拐された時だって、詳細鑑定が使えたら、人の過去の行動が丸わかりだったってことだもの。
「まあ、柚子は悪用せぬと分かっておるでのぉ。じゃが、寛太が恋心までのっている鑑定を柚子に教えられない!と大騒ぎでのぉ」
「それはかんちゃん、悪くないわ。私だって同じことをしたでしょうから。それより、こんな形でお互いにばらされて、ここから先はどうしろって言うのかって話よ。ホント」
「まあ、お互いだけの話じゃて。周りは温かく見守っておくとしようかのぉ」
「周りはって?誰かに言ったの?」
「ワシは言っておらぬが、リーダーは気づいておった。付き合いの長い兄たちも気づいておろうのぉ」
「……」
なんてこと。かんちゃんに対して超過保護だって散々いわれてきたから、私の気持ちはバレバレだとは思っていたけど、かんちゃんの気持ちって!?
私のこと好きって感じ出てた!?分からなかったのは私だけ?
あぁ。どうしたらいいのかしら?
詳細鑑定で『恋心をばらされてメンタル下がり気味』とか出てきたら笑うしかないわね。




