60.22階層
***寛太***
結論から言うと、ダンジョンの22階層は、
「手ごたえがあったわ!」という柚子の感想でお察しいただこう。ピートが、
「なぜ急に22階層だけ鬼畜仕様に!?私がソロで挑戦していたら死んでいた!」と、22階の中ほどで叫んでいたので、相当なのだろう。
初めての挑戦者なのでダンジョンが張り切ったのか、ずっとこの鬼畜仕様なのかは次の挑戦者が現れたら分かるだろう。
とりあえずギルドに報告して感謝された。
暫くは22階層に挑むパーティーには万全の準備をするように通達すると言っていた。
受付の女性のニッコニコの笑顔の中では瞳がお金のマークになっている。ちょっと怖い。
「ププカのダンジョンはこれからグッと人気がでるでしょうねぇ」ピートはそう言って理由を説明してくれた。
「ププカは上層階は御貴族様御用達ダンジョンというくらいのレベルですから、皆、割と挑戦しやすいです。中層階は危険になりますがそれなりのドロップ品も出て、それなりに稼げます。王都から近い事を考えれば旅費も浮かせますしね。下層階はソロの限界と言われていて、私のように一人でダンジョンに潜るものにとってはププカの最深部がAランク昇格の一応の目安とも言われています。それだけでも冒険者にとっては身近なダンジョンですが、今、それに加えて、一流のパーティーが来ても手応えのある階層が出現したとなれば、実力者たちが我先にと潜るでしょう。22階層を踏破した我々がドロップ品を売らなかったので、なおさらヒートアップするはずです。ですから、ギルドや周辺の施設なんかはウハウハで、儲け話をどこに一番に持っていこうかとギルド職員は喜びで殺気立っている感じです」
「あぁ。それで、ちょっと怖く感じたんだ!」
僕はピートの説明を聞いて改めて受付を見た。
「王都のギルマスに報告よ。今すぐ行って!」
「商人ギルドは後回しよ。まず宿屋の旦那衆を集めて!連絡が遅いと後でクレームがくるのよ!」
「ギルマスのドガルさんは今トリナテの変異体ワームの視察に行っているはずです」
「教会で土下座して遠距離通信を遣わせてもらってでも連絡を取って!」
かなりの大騒ぎになっていた。そしてドガルさんの名前が聞こえてきている。忙しい人なんだなぁ。御貴族様の連絡役に名前を出したことを申し訳なく思う。
「「ドガルさんにお土産奮発しようね(しましょうね)」」柚子と全く同時にそう言った。
「「双子!」」
あまりのシンクロに二人して笑った。
付き合ってもいないのに長年連れ添った老夫婦の勢いで双子化している。
これは良い事か?……。恋愛的な話の前に家族のポジションになってしまっていいのか?
そんなことを考えていたら、気が付けばププカの町を出てキャビンに乗り込んでいた。
カケル様が、声をかけてくる。
「寛太、ちょっとよいかのぉ」
「どうしたの?」
「この間、渉が剣鬼だと鑑定したであろう?」
「うん。あの『内緒の』詳細に見える鑑定だね?」
「そうじゃ。それでのぅ。ついつい光太も見てしもうてのぉ」
「しもうてのぅじゃないよ。プライバシーの侵害だよ!あんまり見ちゃダメだよ~」
「異世界人は興味深くてのぉ。ついついじゃ」
どうやらカケル様の『ついつい』は確信犯のようだ。
「それで?なにが分かったの?」
ついつい、聞いてしまう僕も、一味のようだ。




