自覚
すんごい誤字、語表現ありますね、ハンスとロビンごっちゃになったり、、修正しましたすみません!
大衆食堂「レッカーハウス」はかずさが働き始めて初めて、かずさ無しの営業時間を迎える。
「かずさちゃん目当てで来てるお客さんも多いから、今日は居ませんってちゃんとお断りいれないとだねぇ」
エレナは開店時間直前の店内で呟いた。
「まあなぁ」
レッカーもその呟きに答える。
二人はかずさの事を案じて休みにしたものの、客からすれば急に会いに来た店員が居ないとなると残念に思うだろう。
「ま、うちの客達は皆気のいい人ばかりだし、大丈夫でしょ」
エレナは気持ちを切り替えて客の来店に備える。
すると程なくして扉を開けて三人の学生客が入店してきた。この三人組は、祭り前にかずさを誘った茶髪の青年一行だ。
それをエレナが出迎える。
「いらっしゃいませ~」
茶髪の青年は席に着くと、きょろきょろと店内を見回すとエレナに尋ねた。
「あの、今日はかずささんは...」
かずさの名前に反応して、ハンスは作業中の手を止めて入ってきた青年を見た。
エレナは青年に答える。
「ああ、ちょっと休養のために午後は休みを取らせたのさ。ごめんね」
「あ、いえ...」
青年は内心残念がってそうだが、その態度を表に出すことはしなかった。
「すまねいね、兄ちゃん」
レッカーも謝罪する。それを聞いた青年は即座に返した。
「いいえ、謝ることは何もありません。かずささんがいるとそれは嬉しいですが、僕たちはあなたの料理を食べに来ているんですから」
それを聞いたレッカーは目を丸くした。
他の学生が青年の言葉に続く。
「おう、おっちゃんの飯、すっげーうめぇっス!」
「きっかけはあのウェイトレスの子でしたが、今や僕たちはあなたの料理を楽しみにしています」
初めて聞く予想外の率直な感想に、レッカーは感極まる。
「あ、アンタら、そんな事思ってくれてたのかぁ~」
大柄な男の男泣きはなかなかの迫力であったが、そんな大男を周りは温かく見守った。
かずさの不在を残念がる客もいたが、皆帰ることも無くレッカーの料理を堪能していった。
そんな賑わった店に、また一人の若者が入ってきた。
「こんばんわー!」
元気な声とともに入ってきたのはハンスの幼馴染のロビンだ。
「いらっしゃい、ロビン!珍しいね、あんたが来るなんて」
エレナは客に品を置いてから、ロビンに声をかけた。
「へへ~、三回分ハンスのおごりで飯食えるからなっ。それにかずさちゃんに会えるし」
楽しそうにハンスの前のカウンター席に着いたロビンはウキウキで壁に掲げてあるメニューを見る。
先日ハンスとかずさが一緒に暮らしている事を知って怒っていたが、数日経ち機嫌もすっかり直ったようだ。
この男の良い所はこういう切り替えが早い事だ。
「ど~れにしようかな~。せや、肝心のかずさちゃんは?」
ハンスが答える。
「今日は休養で休みだ」
え、という表情をした後、ロビンはそのまますぐに立ち上がろうとした。
それを、ハンスがカウンター越しに両手で肩を抑えこむ。
「まあ、待て。アイツがいなくても他のお客様は皆帰らなかったぞ。お前は帰るのか?」
笑顔のハンスに心底嫌そうに必死に立ち上がろうとするロビン。
「だって、意味ないやん!貴重な一回分をかずさちゃん無しで過ごすなんて、何のためにきたかわからんへんやん!」
その発言にハンスは引き続き笑顔で返す。
「そんな薄情な奴、アイツは好きになるかな?」
その言葉を聞いたロビンはチッと舌打ちを打つと大人しく座った。
「あぁもう!わかったわ!レッカーのおっちゃん、一番高いモンを頼む!支払いはこいつの給料から引いといてやっ」
ロビンは腹いせ代わりに一番高いメニューを注文した。
注文を受けたレッカーは快く注文を受ける。
「はいよっ、毎度あり!」
「ちょ、まっ。親方まで!」
少し目を腫らし目をしたレッカーだがハンスいじりには余念がない。にやりとして早速料理の準備を始めたのだった。
営業時間もピークが過ぎ、客もまばらになった中、ハンスはキッチンの片付けに取り掛かっていた。
目の前にはタダ酒を飲み、ほろ酔い気分の幼馴染が永遠と話をしていた。
「でな、その犬が加えたモンがなんやったと思う?紙やすり用の木材やったんよっ」
ケラケラと笑うロビンの話の長さに疲れ、ハンスはため息をついた。
「どないしたんや。ハンス、悩みか」
只今絶賛悩みの種になっている目の前の男を半目で見るハンスだったが、改めて最近の事を思い返すと、悩みがないわけでもなかった。
「...悩みってわけでもないが...その、ここ数日なんか、あいつの...かずさの目をちゃんと見れなくて...」
それを聞いたロビンは酔っているからか、単純に怒る。
「そんなの、えらい失礼やないかっ。ヒック...なんか原因あるんか」
「原因...はよくわからないが...その、目が合っていないときはそれこそ、アイツ抜けてるし、ずっと見てないとってなるんだけど、その、目が合うと、急に胸が苦しくなって...逸らさずにはいられないというか...」
「は?そんな事オレに聞くんか」
ハンスの話を聞いたロビンは絶句した。
隣で聞き耳を立てていたレッカーも深刻そうにハンスを見る。
「お前......本当にわからないのか。自分はあんなに分かりやすいのに」
その言葉に、ハンスは真剣に悩んでいる自分が馬鹿らしく思えてきて、レッカーに文句を言う。
「レッカーさんはわかってるんですか?教えてくださいよ」
その様子を見てロビンは大きなため息を吐いた。
「はぁ〜。ハンス、お前が母ちゃんやルナちゃんの事でそういう事にかまける余裕がなかったのもようわかる。せやけどあんまりにも鈍感すぎるわ」
レッカーもロビンに同意した。
「まあなあ。ハンス、それは人に聞いて気づくようなもんじゃない。お前自身で気づかねえと」
なんだかえらく哲学的なことを言う雇い主に、ハンスの頭にさらに疑問符が浮かぶ。
「アタシから一つ助言を言うと、それは古今東西、病として表現されるわ」
どこから話を聞いていたのかわからないエレナがカウンター席のロビンの横に現れ、急に話に加わってきた。
「病...え、オレ医者に診てもらった方がいいんですか」
その反応に、ロビンは更に眉間にしわを寄せ、首を振る。
「あっほらし。やってられへんわ。じゃあ、オレ帰りますぅ。ごちそうさまでした〜」
ロビンは席から立ち上がると、足早に帰って行った。
ハンスはなぜロビンが自分の質問にあんなに不機嫌になったのかわからなかった。
ーーかずさと目を合わすことができないのが、病のせい?
ハンスの悩みはますます悩みは膨らんでいく。
閉店作業も終えたハンスは久しぶりに一人で帰っていた。
寒くなってきたため、ズボンのポケットに手を入れて身体を縮めて歩く。
そろそろマフラーとコートを出さないとな、など思っていると、向かいから腕を絡めた一組のカップルが近づいてきた。
「ダーリン~はぁ~ん、あなたって本当に素敵...ずっと見てられるわぁ」
「僕もだよ、ハニー。君の傍にいるといつも胸がドキドキして痛いよぉ。全く罪な子だね、ハニー」
「ああん、もうダーリンったらぁ」
見るからにバカップルの会話が耳に入ってくる。
『本当に素敵...ずっと見てられるわぁ』
『傍にいるといつも胸がドキドキして痛いよぉ』
ハンスはふと二人の会話に妙に既視感を覚えた。
そう、二人の言葉は今の自分がかずさに対して感じている事、そのものだ。
ハンスは思わず立ち止まる。
かずさの事を『ずっと、見てられる』。
ずっと見ていたいと思った。
かずさと目が合うと『いつも胸がドキドキして痛い』。
だから、目を逸らさずにはいられない。
そして、エレナの言葉。
『それは古今東西、病として表現されるわ』
ハンスは自分の謎のこの現象が何に起因するものなのか、ようやく気づいた。
その感情を自覚した途端、ハンスは自身の顔が一気に熱を持つのを感じた。
信じられないハンスはそっと口に手を当てる。
その病の名前はーー、
「恋だ...」
ハンスは自分の感情の答えに胸が震えた。
書いてて、ランナーズハイというか、小説ハイ?になる。
おかげで夜もよく眠れないっ。
鈍感な彼が自覚しましたよっ!
あとこの国では16歳から飲酒可設定です!
次回は明日に投稿します!よろしくお願いします!




