赤髪の女子学生②
人ごみの中心で言い合っていたのは男子学生と女子学生だった。
女子学生は腰まである長い赤髪を赤と黒二色入ったリボンでツインテールに結んでいる。気の強そうなつり目から緑色の瞳がのぞく。
白シャツに短い紺色のスカートを纏い、スカートから延びる長い脚には高そうな革製ヒール靴が履かれている。
服の上から羽織った黒いローブは彼女が大学に通う学生だということを示す。
女子学生は男子学生に食って掛かかる。
「あなた愚弄するのもいい加減にしなさい!私は自分で努力して今の成績を勝ち取っているの!何も知らないくせに勝手な事言わないでもらえる?!」
今にも飛び掛かりそうな女子学生を同じく黒いローブに身を包んだ、こちらは長いスカートを履いた女生徒と、街人風の女性が抑えている。
「お~怖い怖い。これだから女は。すぐヒステリックになる。落ち着きなよ、お・ひ・め・さ・ま」
ツンツンとした特徴的な髪形の金髪を揺らし、男子学生は悪い笑みを浮かべながら赤髪の女子学生を挑発する。
その言葉に女子学生は抑えていた二人を振り払い男子学生の胸倉に掴みかかる。
しかし青年は怯む様子もなく、逆に両腕で胸倉をつかみ返して、道の壁に女子学生を突き当てる。
「くっ...」
息が出来ないのか苦しそうな女子学生に構わず、男子学生は胸倉を掴んだまま更に上へと持ち上げる。
女子学生は足をバタバタさせて必死にもがく。
「お前が先に手を出してきたんだ、文句ないだろ?」
周りの学生たちその男子学生の行動に狼狽えるものの、恐ろしいのか止める様子はない。
これ以上は見ていられないと、かずさは人混みを分けて近づくと二人の間に立ち、男子生徒の腕に手を掛ける。
「ちょっと、やりすぎじゃないですか」
かずさは男子学生を鋭く睨みつける。
間髪おかずに反対側から、ハンスも男子生徒の腕に手を掛ける。
「女性に対してこれはないなんじゃないか」
ハンスも男子生徒に対して苦言を呈す。
「はっ。庶民風情が。オレ様にさわるな、汚らわしいっ」
その発言に、ハンスはこの男子学生が典型的な階級主義のお貴族様だと理解した。
かずさは、更に力を加え女子学生の胸倉から男子生徒の腕の力を緩めさせる。
「くっ...ってぇえ」
緩んだ手から女子学生は下にすべり落ちる。息ができるようになった彼女は、咽せてはいるが無事なようだ。
傍から見ればハンスの力で緩めたように見えるだろうが、実際はかずさの力によるものだ。
「くそがっ!覚えてろよっ」
捨て台詞を吐いた男子生徒はかずさに掴まれた腕をかばいながらその場を後にする。取り巻きらしき数名の学生たちも彼を追いかけて行った。
壁にもたれかかったまま倒れ込んでいる女子学生に、先ほどまで止めていた別の女子生徒と街人風の女性が駆け寄る。
「大丈夫ですか、ティナ様っ」
「クリスティーナ様、お怪我はございませんか」
咳き込みながらもクリスティーナと呼ばれた赤髪の女生徒は返事をする。
「平気よ。心配いらないわ。お二方のおかげね」
そういうと、女生徒は壁伝いに一人で立ち上がり服の埃を払うと、スカートを軽くつまんで丁寧なお辞儀を披露した。
「私はクリスティーナ・フォン・ゲヴァルトと申します。この度は見ず知らずの私を助けていただき、誠にありがとうございます。」
顔をあげて微笑んだ女子学生は、その意志の強そうな緑の瞳を二人に向けた。
新キャラちゃん達登場。これからよろしくお願いします。
次回は遅くても金曜日の夜に投稿予定です。
引き続きよろしくお願いします!




