表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/82

マネキンは重労働です。

 結果、「フェルディナント商会の真珠姫」は予想以上の大当たりを見せた。

梨亜は朝から晩まで店頭に立って、マネキンのように微笑み続け、足だけでなく顔まで筋肉痛になる日々が続いたが、「自力で借金返済」が念頭にある以上、弱音を吐くわけにいかない。  

 来る日も来る日も会釈をし続け、日替わりで豪華なドレスを身にまとい、新しいアクセサリーをつけて、にっこりと微笑む日々が続く。

 たとえばこんな具合に。


「おばあちゃん!あれよ!あれ!噂の真珠姫さまよ!」


「いらっしゃいませ。」(にっこり&会釈)


「まあまあ、これは本当にうるわしい。お姫様、ごきげんよう。あら、ミランダ、あんたの欲しがってた『真珠姫のネックレス』はこれかい?お姫様、これはいくらするんだい?」


「ああ、お客様、これは………ほどでして。」(しゃしゃり出る横の売り子)


「そうかい……若い子のアクセサリーにしちゃ、結構なお値段だねえ。」


「ねえ!いいでしょ?おばあちゃん。……だって、ナタリアもペネロペも買ってもらったって言うのよ!」


「みんながみんな、おんなじアクセサリーっていうのはどうだろうねえ、ねえ、真珠姫さん、もっと他にはないのかい?」


「お客様、良いものがございます!デザインは同じなのですが、周りの石の半分をサファイアに変えたものでして、お嬢さまの爽やかな印象にぴったりでございます。」(再びしゃしゃり出る店員)


「あら、これもいいわねえ…。」


「ええ、さらにこれには揃いのブレスレットもございまして、これはいま、真珠姫さまがつけていらっしゃるものです。」(梨亜はにっこりと微笑んで、左腕に付けたブレスレットを客に見せる)


「すごくきれい!ねえおばあちゃん!これにしよう!ナタリアもペネロペもブレスレットまでは持ってなかったもの!」


「……あんたはつくづく、物入りな娘だねえ。しょうがない、店員さん、両方包んでちょうだい。」


「ありがとうございます!」(店員深々とお辞儀)


「それじゃあね、お姫様、ごきげんよう。」


「またいらしてくださいね。お待ちしていますわ。」(ここでやっと梨亜は声を発する。)


 ……正直、普通にしゃべって、働いているほうがずっとマシなんじゃないか、と思う。梨亜のやっていることはまさに生けるマネキンで、人形と変わりがない。

「いい、リアナ、どんなに疲れていても、あなたはお姫様、とにかく、優雅に、たおやかに。余裕をもって微笑んで。そして、できるだけ口を開かない。」

 鬼監督、もといフェルディナント男爵夫人によくよく言い含められている。姫は姫でも、地上に上がって声を失った人魚姫だな、と思いながら、梨亜が店頭に立つこと、一か月。


「すごい……こんな売り上げは、商会始まって以来だ。特にアクセサリー売り場の売り上げが突出しているけれど、来店客数が増えることで、全体の売り場の売り上げも上がっている!」


「真珠姫効果ね!さすがだわ!リアナ。」


 男爵夫妻は手放しで喜び、梨亜を褒めちぎってくれた。そして、給料の出た次の休みの日、双子へのお土産を手にして、うきうきと梨亜は医師の家に向かった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ