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商魂たくましき?

 梨亜の描いたアクセサリーの絵を見て、フェルディナント家の面々は感嘆の声を上げた。


「なるほど…。」


「リアナ、素晴らしいよ!」


「あら、素敵ね……。私もこういうデザインのもの、欲しくなってきたわ!早速職人に言って作らせてみましょうよ。」


 いつの間にか、会食の席は商会の会議の場と化していた。フェルディナント家の一家は、狭い円卓に移動し、デザインをああでもない、こうでもない、と協議する。やがて、デザインの方向性がまとまると、みんな満足の笑みを浮かべた。


「いやあ、子爵令嬢の箱入り娘と聞いていたが、なかなかどうして、リアナはたいしたものだな。私たちの思いつかなかったようなことを考えてくる。」



「いえ、それほどでも。」


 男爵の褒め言葉に梨亜は謙遜する。しかし、短時間でここまで梨亜が考えたのは、一にも二にも、いかに早く借金を返すか、と言うことが大きなモチベーションになったからである。セリオも発言する。


「いや、ほんとリアナはすごい。僕の秘書なんてもったいないことしないで、一緒に企画経営を考えていこうよ、……僕の執務室で。」


 セリオはあくまでも、梨亜を手元に置いておきたいらしい。梨亜はさすがに眉をひそめる。


「セリオ……私の言ったこと聞いていた?私は、あくまでも現場で、自分の力で商品を売ってみたいの。将来的に経営に携わるとしても、まずは現場を知らないと、お話にならないわ。それに、従業員の人たちも、いきなり見知らぬ若い娘が経営に口を出したら、良い気がしないでしょ?」


 梨亜はセリオと一緒に仕事をしない理由をこれでもかと並べ立てる。その様子を見て、セリオの母である男爵夫人は二人を見比べて、面白そうに微笑んだ。


「セリオ、リアナはとっても賢い、よくできた子よ。それに、この見た目、多くの南都の男はほっとかないでしょうね。簡単に囲い込めるなんて思っちゃダメ。リアナをそばに置きたいなら、それに見合うだけの男になりなさい。あんたはまだその器に無い。」


 ぐっと言葉につまったセリオは「はい……。」とだけ口にして、不満そうに黙り込んだ。男爵夫人は嬉々として自分の考えを述べる。


「私の考えはこうよ。リアナの言うような若者向けのデザインのアクセサリーを作り、そして、売り場で制服ではなく、ドレスを着たリアナにそのアクセサリーをつけさせるの。……きっと売り場にはリアナ見たさに人が殺到するでしょうね。息子の婚約者候補が、お仕着せの制服を着た一介の売り子になるのは私は賛成できないけど、商会の広告塔になるのは悪くないわ。そして、看板を作って、新しいデザインのアクセサリーを大々的に売り出すの。リアナが実際にアクセサリーをつけている看板を絵師に作らせるのよ!リアナには『ポロネーシュの真珠姫』という二つ名をつけましょう。」


 つまりは、私はモデル兼販売員ということね、と梨亜は理解した。それにしても、夫人の商魂たくましさはたいしたものである。フェルディナント男爵は副議長としてこの南都で大きな力を持っているが、これは夫人の力も大きく影響を及ぼしている、と見て良いに違いない。


 その夜、一仕事終えた気分で自分の部屋に帰った梨亜のもとへ、公爵家より一通の手紙が届けられた。


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