9.アントニオ様の異変
マリーはその後、この町を出る決心をした。3日後に町を出ることにした。今度は馬で町を離れることにした。そのため馬を売っている店に行って馬を購入した。馬は3日後に町を出るときに引き取りに来るのでそれまで預かってくれるようにお願いした。
それから市場へ行って、食料や毛布さらに予備の武器やポーションなど必要な物を購入していった。購入したものはすべてマジックバッグに収納していった。
そして、宿にも明後日宿を出ると告げた。アントニオ様にはどうしようか迷ったが『街を出る』と言えば引き留められるに決まっている。それで何も告げずに街を出て行くことにした。そうしたら宿を出る前の日の夕方にアントニオが訪ねてきた。
そして、宿の食堂でマリーの向かいに座った。
「明日街を出ると聞いたのだけど、どうしてアデーレ嬢から何かされた」
「いえ、そのようなことはございません。この町も長くなったので、私の抱えている事情もありますので、街の人に迷惑がかかってもいけませんので」
「そうなの、何かあったら力になるって言ったのに僕では力不足なの」
「そのよう訳ではありません」
「なら、どうして、僕を頼ってくれないの。力になるから」
そう言って、さらに酒を注文して飲みだした。
「今日はこの町、最後なのだろう一緒に飲もう」
「私は明日この町を出て行くので、今日は飲めません」
「そんな事言わずに、一緒に飲もう。この町の思い出に」
今日はやけに絡む。夕食の時に酒を飲みだしたのも悪かったようである。周りの人に聞こえないようにマリーは密かに防音の結界を張った。
そのうちアントニオ様は酔いつぶれて寝てしまった。アントニオ様をこのままにしておけない。宿の主人を見ると、顔がニタニタしている。アントニオ様に何かしたのかもしれない。しかし、今は酔いつぶれたアントニオ様をどうにかするのが先決である。この状態では放っておけない。一旦どこかで休ませて、公爵家に連絡して迎えに来てもらう必要がある。
そこで、宿の主人に部屋を取ってもらった。そしてそこへアントニオ様を連れて行って寝かせた。
そして部屋を出ようとしたときアントニオ様から手を掴まれた。そしてそのまま押し倒された。そしてマリーはアントニオ様に抱かれた。拒否しようと思えば出来たが、マリーもアントニオ様のことは気に入っていたので拒否しなかった。それにマリーはこの国で子供を産んでその子に懐の爆弾である日記を託するつもりである。だからその親がアントニオでもいいかなとも思った。
その夜は公爵家へ連絡するのは無理と判断して、マリーは寝ているアントニオ様をベッドに寝かせると、自分の部屋に戻った。
そして、朝になったので、宿の主人にアントニオ様のことを頼んで宿を出ることにした。宿の主人はアントニオ様のことは知っているようで、「公爵家へは連絡しておく」と言ってくれた。
「おかしい」と思って宿の主人を問い詰めると、マリーが出て行くのをアントニオ様に連絡したのは宿の主人だったようである。
さらに問い詰めると、アデーレ嬢のことも知っていたようで、「アデーレ嬢から頼まれたこともある」と言っていたが、その内容は固く口を噤んで言ってくれなかった。
ここで宿の主人をさらに問い詰めてもよかったが、そんな事をしても意味がない。マリーは宿を出ると、馬を購入した店に行って馬を受け取ると、馬にまたがった。
何気なく見ていた町だが、さすがに半年以上も住むと愛着がわくようである。町の通り、買い物をした商店、道行く人々、なんとなく涙がにじんでくる。
城門のところに行くといつもの門番が
「あれ、マリアさん、今日は馬なのですね」
「はい、よその町に行くことにしたので」
「どこへ行くのですか」
「決めていない。気の向くまま、心の赴くまま、行くところまで行くつもりです」
「そうですか、冒険者は気楽でいいですね。マリアさんはてっきり貴族だと思っていたのですが、違うのですか」
「違いますよ。平民です」
「そうですか、お気をつけて」
こうして、王国歴322年3月10日、半年以上住み慣れたクレベンナの町を後にした。




