5.アントニオとの会食1
アントニオを助けたお礼として、アントニオからポーションの代金として金貨4枚とクレベンナ家の家紋が彫られた短剣をもらった。クレベンナ家は公爵家でこの町の領主とのことである。アントニオはそのクレベンナ家の長男とのことである。
金額が多かったのと、こんな高価な短剣もらっていいのか分からなかったので、マリーはクレベンナ家の屋敷を訪れた。屋敷に行くとアントニオが父親である公爵に紹介してくれた。
顔は墨を塗って浅黒くしていたし、服もいつもの冒険者の服だったが、マリーは元聖女である。溢れる気品は隠せなかった。それに仕草も上品である。公爵に会うというのに物怖じしていない。公爵はマリーを見て身分を偽っているのではないかと思った。
「私はマリア、下賤の者です。このような高価な短剣をもらっていいのでしょうか」
「それは息子の命を救ってくれたお礼だ。受け取ってくれ。また困ったことがあったらいつでも訪ねてきてほしい」
「それでは有難く頂戴しておきます」
礼だけ述べて、マリーは帰ろうとしたが、アントニオが
「マリアさんは冒険者をしているのですね。私も剣の腕を磨くために冒険者活動をしているのですよ。よかったら一緒にパーティーを組みませんか」
「私はソロでやっているので、パーティーは組みません。それにしばらくは先日もらったポーション代があるので何もしなくてもいいので」
マリーとしては貴族とは関わり合いになりたくない。アントニオとパーティーを組むなどもってのほかである。しかし中々アントニオが離してくれない。
「それでは今度一緒に食事に行きませんか。美味しい店があるのですよ」
「私は食事のマナーなんて知りませんから、貴族が行くような店にはとてもいけません」
「大丈夫、そこは平民も行く店ですから、マナーは気にする必要がありません」
何とか諦めてもらえないかと思っているのだが、『マリアが貴族の生まれではないか』と疑っている公爵が
「どうだね、マリアさん。息子も命の恩人に少しでもこの町を知ってもらいと思っているのだよ。食事ぐらいつき合ってはもらえないだろうか」
公爵に言われるとマリーも断ることが出来ず、
「わかりました。よろしくお願いします」
こうしてアントニオと一緒に食事をすることになった。
それから3日後、アントニオから食事の予約が取れたと連絡があった。食事の日はその3日後であった。貴族と一緒に食事をするというのでさすがに冒険者の服でははまずいと思ってマリーは服を買いに行った。
クレベンナの町の大通りから少し入ったところの古着屋に行った。そして町娘風の服を買った。
そして当日は公爵邸に行った。公爵邸に行くと玄関でアントニオが待っていた。そこで挨拶をして馬車に乗り込んだ。馬車に乗り込むときはアントニオが嬉しそうにしている。アントニオが差し出した手をマリーは優雅に取って馬車に盛り込んだ。
その様子を公爵が見ていた。そして
「マリアはどこの生まれなのだ。多分あの娘は貴族だ。半年前に滅んだクレッセント王国の貴族ではないか」
とつぶやいた。
マリーとアントニオが食事に行ったところはド・バンという食事処だった。この地方の海の幸をふんだんに使った料理が食べられるようである。アントニオの話では「平民も来る」という話だったが、どう見てもお客さんは貴族ばかりのように思った。
入り口を入ると、店員はアントニオの顔を知っているようで、アントニオが名前を言わないのに、そのまま部屋に案内してくれた。どうも個室を予約してあったようだ。
部屋に入ると
「個室を取ったから、食事マナーは気にしなくていいよ」
「こんな高いところでよかったのですか。私は平民が行くような居酒屋でもよかったのですが」
「そんなわけには行きません。これは僕のお礼ですから。それとも僕の命はそんなに安いと思っているのですか」
「そんなことはございません」
そうやってアントニオとの会食が始まった。




