4.アントニオとの出会い
クレベンナの町でマリーが冒険者として活動を始めて半年が経った。その間マリーは最低限の依頼しか受けない。そしてお金があると宿の部屋で何もせずに過ごす。隠遁生活である。そしていつもローブを深くかぶって素顔を見せない。
最初はマリーに絡んできたカルロもそのうち構わなくなった。マリーの方がカルロより強いと思うようになったようである。
マリーは結局、日記に封印の魔法をかけた。そしてクレッセント族の転生者以外その封印を解けないようにした。もし無理やり開けようとすると、その日記が燃えてなくなるようした。それをマジックバッグに入れた。そしてそのマジックバッグもマリー以外が使えないように使用者制限を掛けた。
そして、このマジックバッグはマリーがこの町で子供を産んだら、その子に託すことにした。そうやって将来クレッセント族の転生者が現れた時に渡してもらうことにした。
すると、この町で結婚しいて子供を産まなければならない。誰でもいいなら、行きずりの恋でもいいのだが、さすがにそれは嫌である。マリーは花も恥じらう乙女である。
マリーがいつもの様に森の奥で薬草採取という名の魔獣討伐をしていると、
「ギャー」
と言う声が聞こえてきた。
マリーがその声のところに行くと、ビッグベアが若い男にかみつこうとしていた。マリーはとっさに風魔法でビッグベアを吹き飛ばした。
すると吹き飛ばされたビックベアはマリーを敵認定して向ってきた。ビッグベの手がマリーに向けて大きく振り下ろされそうとする時、マリーはその手を結界を張って防いだ。そして、さらに氷の矢をビックベアの急所に打ち込んだ。するとビックベアはもんどりうって倒れた。倒れたビックベアをマリーはマジックバッグに収納した。
そして先ほどの倒れている男のところに駆け寄った。男は気を失っている。肩にはビックベアにつけられと思われる傷から血が出ている。このまま放っておけば、間違いなく死ぬだろう。
本当はしたくないのだが、ここで見捨てるわけにはいかないので、マリーは懐からポーションを出した。そして男にかけた。
治癒魔法なら一瞬で治せるがそれをすると、傷が回復した男に何と言えばいいか分からない。ポーションなら言い訳が出来る。そう思った。かけたポーションも中級ポーションである。これなら傷は完全に治らないが死ぬようなことはない。
中級ポーションなので、1本では治らなかった。傷はかなり深いようである。2本、3本と使って行くと、やっと傷が治り始めた。
そして男が気が付いた。
「あなたが私を助けてくれたのですか」
「そうですが、傷がかなり深かったので、すぐには動かない方かいいと思います」
「私を襲ったビッグベアはどうなりました」
「あれは、私が倒しました」
もう1本ポーションを使うとやっと傷が治ったようで男が動けるようになった。それで、男に肩を貸して、一緒に森の浅いところまで来た。すると周りには新人の冒険者もいるようである。その人たちに手伝ってもらって、街の門のところまで戻った。
門のところまで行くと、門番が驚いている。
「アントニオ様、どうしたのですか」
そう言って駆け寄ってきた。
アントニオは門番が「様付けしている」ということは、たぶん貴族である。マリーは面倒ごとに巻き込まれるわけにはいかない。後は門番に任せてその場を立ち去った。
そうやって、またいつもの冒険者生活に戻ったのであるが、さすがに命の恩人をほおっておくはずもなく、マリーの前にあのアントニオが現れた。
「マリアさん、この前の恩を返したいのですが。何か望む物は有りませんか」
「私は下賤の者です。貴族の人が気にかける必要はありません。どうしてもというなら、傷を治すのに使ったポーション代を払ってもらえればそれでいいです。使ったのは中級ポーション4本です」
「でも、それだけでは私の気が済みません。何か他に望むものは有りませんか」
このアントニオという男はかなりまじめな人間の様である。中々解放してくれない。
「それでしたら、私に何かあった時は助けてくれる。それでどうですか」
「それなら、この短剣を渡しておきます。これには我がクレベンナ家の家紋が彫ってあります。これを見せれば大抵の人間が言うことを聞いてくれると思います」
「そんな大事なものをいいのですか」
「構いません。あなたは私の命の恩人ですから」
そう言われてクレベンナ家の家紋が彫られた短剣を受け取った。




