37.マリーの海賊退治
王国の西部の半砂漠地帯へ移住した部族は相変わらず貧しい生活を送っていた。当然である。元々半乾燥地域でろくな生産量が上がらなかった地域である。そこへ農業知識の乏しい部族が移住したのである。貧しいのは当たりまえである。しかし、これをそのまま放置すると、この部族が反乱を起こすかもしれない。そこで、新しい農法を広めてクレベンナ周辺の農業生産性を劇的に改善したマリーに王宮より依頼が舞い込んだ。
王宮よりの依頼ということで断るわけにもいかず、マリーを派遣することになった。最初マリー1人を行かせる話もあったがアントニオが強行に反対して夫婦で行くことになった。
夫婦そろってクレベンナを出た。そして馬車で王都周辺の港まで行き、そこから船で部族の移住したロイマーナ王国西部の地域まで行くのである。王宮の依頼ということで船は王宮で手配してくれた。公爵家から護衛は5人連れて行ったが、さらに王宮でも護衛を5人付けてくれた。
手配された船は商船で中の海の沿岸を回って商品を売買していくそうである。そのため行く先々の港で停泊して1泊するのである。時間がかかる。しかし夫婦水入らず、夫アントニオはご機嫌である。港へ着くと、観光して、珍しい物があれば買い物をする。
そうしていたら、「見慣れない船が接近してくので部屋から出ないように」と言われた。海賊船が接近してくるようだ。この船は商船である。略奪の対象になったようだ。しかし、今回は護衛が10人もいる。たぶん白兵戦になれば海賊は負けるだろう。
しかし海賊船とはどんな船だろう。好奇心が勝った。「海賊船を見てくる」と言って部屋を出ようとすると慌ててアントニオが「危ない」と言い出したが、無視である。そのまま出て行った。甲板に出ると、おんぼろの船が3艘こちらに向かってくる。
この海ではガレー船が主役である。漕ぎ手が一生懸命舟を漕いでいる。あちらの船の方が小さい。だから船はあちらの船の方が早い。そのうち追いつかれそうである。船が追い付いたら多分あの船の甲板いる人たちや舵を握っているこぎ手もこちらの船に飛び乗ってきて白兵戦になるのだろう。
追いついてきたアントニオに
「わくわくするね。白兵戦になったら私も戦うわ」
「何を言っている。お前は部屋に戻っていろ」
「つまんない。だったら私が弓であの船の甲板に居る人を射殺してあげるわ」
そう言って、マジックバッグから出した弓を弾き絞った。先ず先頭の船を狙った、10本の弓矢を放った。すると1本目の矢は甲板の兵士の顔に当たった。2本目の矢は隣の人間の肩に当たった。そして3本目はこぎ手の腹にあたった。そして他の10本もその船の誰かに当たった。とにかく船には人が密集して乗っているのである。矢を放てば誰かに当たる。当然矢には毒が塗ってある。矢の当たった人はすぐに倒れた。すると、すぐに船のスピードが落ちた。もうこの船を追ってこられないようである。
そこで、また10本の矢を持って構えたら、残りの2艘が逃げ出した。この船を襲うのをやめたようである。でも甘い。この私の乗る船を襲おうとしたのである。未遂でも許さない。マリーは逃げる船に向けて矢を10本放った。そして間髪入れずに、さらに10本の矢を放った。
20本の矢は逃げる船の人間に突き刺さった。するとアントニオが
「マリーは何故あんな遠くまで矢を飛ばせるのだ。それに放った30本すべてを命中させるなんて。なんて腕をしているのだ」
「内緒、女の秘密です」
風魔法を使ったとは言わないことにした。
すると公爵家の護衛達も
「マリア様の弓矢の腕はいつ見てもすごいですね」
感心された。
王家の護衛は驚いて声も出ないようだ。少し天狗になってしまう。
「これが私の実力よ。すごいでしょ」
王国歴324年8月、王国の西部へ移住した部族へ農業指導に向かう途中、海賊退治をするマリーであった。




