24.市内の状況と毒の処理
マリーはアーデシラ王国軍がクレベンナ市の包囲を解いて軍を北に引いたことから、遊撃隊と一緒に領都クレベンナ市に戻った。1週間ほどであったが、とても長く感じた。久しぶりの領都は至る所に戦闘の跡が見られた。
敵は遊牧民である。ろくな攻城兵器など持っていないだろうと思われたが、実は多くの攻城兵器を用意していた。城の周りには多くの放棄された兵器があった。どうもこれまでに征服した国の武器をそのまま持ってきたようだ。その中にはクレッセント王国製の兵器もあった。少し懐かしいような気もしたが、悲しい気になった。
それらの兵器を用いて領都の城壁に攻撃を行ったようである。ところどころに崩れた部分があった。しかし大きく崩れることはなく、アーデシラ王国軍の領都突入は阻止されたようである。
また、予想されたことであるが城内にはすでに敵の工作員も潜入していたようで夜半過ぎに門のところで警備兵と戦闘になったそうである。これは城門の警備兵を2倍にしていたこととすぐに周辺住民が応援に駆け付けたことから事なきを得たようである。
久しぶりに領主館に入り夫と再会した。家族は全員無事とのことである。わが子フィリベルトを抱きしめると涙があふれてきた。
「マリア戻ってきました。あまりお役に立てませんでしたが、領都が無事でよかった」
「マリアも無事でよかった。500人の別動隊で出来ることなど知れている。無事戻ってきてくれたことだけで私はうれしい」
家族には温かく迎えてもらった。
いつも高飛車な公爵夫人さえも
「マリアさんが無事でよかった」
そうやって喜んでくれた。嫌ってはいても孫の親が死ぬのは嫌なようだ。
「それにしても何故アーデシラ王国軍が包囲を解いて軍を引いたのか分からない。市内では「神の加護があったからだ」と言われているが、それほど我々の神が慈悲深いとも思われない」
どうも「今回アーデシラ王国軍が軍を引いたのは、神に諭されたためだ」と教会関係者が事あるごとに説いているようだが公爵様はそれを信じていないようである。
そんな事を信じていたら、教会関係者が軍を率いたら連戦連勝のはずである。しかし、こんなことにはならない。実際これまでアーデシラ王国軍が破壊した町では教会も完膚なきまでに破壊されている。そして教会関係者は無用の長物として真っ先に殺されたそうである。教会の神父は公開処刑、シスターは凌辱されたとのことである。
マリーはあえて自分のしたことは言わなかった。これを言えば毒の川や原にした所の関係者から不満が出る。それにもしマリーが元大聖女と知られたら暗殺の対象にされる。
「牛や馬の背に松明をつけて、夜アーデシラ王国軍に向けて放ったのですが、あまり効果は無かったようです」
それだけ報告した。
次の日から「市外の状況を見てくる」と言ってマリーは毒の川にしたザブェナ川の浄化に取り掛かった。しかし、これは難産だった。有毒植物を植えて盛大にその植物を繁茂させたことから撒き散らした毒が半端なかった。それらの毒を少しずつ浄化していった。
川の浄化が完了する頃に王都からの援軍が到着した。その後は今度は領都周辺のアーデシラ王国軍が馬の放牧地としていた畑の浄化を始めた。これも難産だった。まず累々と横たわる馬の死体の処理から開始した。馬の死体をマジックバッグに入れて、そのあと浄化魔法を掛ける。マリーの力なら倒れた麦をもとに戻すこともできるが、これはやめた。そんな事をしたらマリーが聖魔法の使い手として教会に認定される。教会は厄介である。関わらないに越したことはない。
マリーが畑の浄化をしている間にクレベンナ市へ到着したロイマーナ王国の援軍はアーデシラ王国軍を追討すべく北へ向かって進軍していった。クレベンナ公爵家の領軍も市内の守備兵を残してその追討軍に参加して進軍していった。マリーは居残りとなった。マリーの遊撃隊は今回の包囲戦ではほとんど成果をあげなかったというのが公爵家の見方である。




