21.クレベンナ市の防衛態勢の強化
王宮での協議でアーデシラ王国のロイマーナ王国への侵攻が確実視さているという情報を得たことから、クレベンナ公爵家一行は王宮での会談を終えると、すぐに領都クレベンナに戻ってきた。もうトンボ帰りである。そしてすぐにクレベンナ市の防衛態勢の強化に取り組んだ。
まず領軍の組織化である。これはいままでもそれなりには整備されていたが、指揮官である公爵はいわばお飾り、実際には古参の従士が指揮を執っていたが、今回は公爵自ら前線で指揮を執ることにした。そしてその補佐を古参の従士が取ることになった。これで公爵軍の士気が高まることになった。
また、独立した軽騎兵の部隊を作りその部隊の指揮官をマリーが取ることになった。マリーは異例の抜擢である。これは王都へ行く途中で敵を殲滅した時の雄姿が関係していた。
次の騎兵の強化、これには鐙の標準装備化が図られた。また、前線の兵士に物資を届ける補給部隊の強化が図られた。これはこれまであまり注目されなかった分野であるが、マリーが補給の重要性を力説した。
それと敵のアーデシラ王国の部隊は偽装撤退を得意とすることから、この戦術にはまらないように再度徹底された。これは、クレッセント王国の軍が全滅した時の状況をマリーが語ったことによる。もうなりふり構っていられない。ここでクレベンナ公爵家が亡ぶと、もうマリーとしては自分の日記を託す人がいなくなってしまう。この日記は今回の転生で得た教訓が詰まった宝箱である。これを後世に残すことがマリーの今の最大目標である。
また、領都の城壁の強化とカタパルトなどの攻撃用兵器の製造、さらに籠城用の食料の備蓄が行われた。王宮での話では2週間で援軍が運が来るとされたが、途中アーデシラ王国の妨害が予想されることから最大3か月とした。また、避難民が領都に押し寄せることも考慮し、領都の人口を今の3倍とした。そして備蓄する食糧はなるべく単価の安いものとした。もう家畜の飼料でも良しとした。
そして、その準備と並行して寄子の貴族家にもアーデシラ王国の侵攻が近いことを伝達した。そして、アーデシラ王国が侵攻してきたらすぐに南へ避難するように指示した。援軍は出せないと伝えた。
また、領都に工作員が潜入することも考えられるので、城門の警備兵は今の2倍とした。また、領都の住民の組織化が行われた。領都の住民は全て名前と所属が登録され、もし知らない人がいれば、それはスパイとして拘束することになった。そして彼らを準軍属として戦時には軍の活動に協力させることとした。
マリーは独立した軽騎兵の部隊の指揮を任された。規模は500人で、内容は敵の背後のかく乱とされた。しかし、予想される敵の規模は約3万人である。500人では「蠅が止まったようなもので役に立たないのではないか」と言う話になった。しかし、今の領軍の状況を見ると、これ以上の兵士を遊撃部隊に回せないのも事実であった。
これだけの兵で出来る最大限の成果を上げるということで落ち着いた。兵の規模が決まったので、マリーは領軍の兵士の中から、小回りの利く兵士を希望により選抜した。マリーが女であることを考えると女の下に就くことを嫌う兵士がいると考え、あくまで希望優先とした。その結果、この遊撃部隊には女性や平民が多く集まった。
この500人を100人ずつ5つに仕分けした。そして1番隊から5番隊として、それぞれの部隊に指揮官を指名した。その後、この部隊の訓練を行ったが、あまり乗馬は得意ではなかった。急ごしらえの部隊である。このまま敵に向って行ったら全滅必定である。何か手立てを考えないといけない。
そこで、マリーはこの部隊を囮専門にすることにした。適当に現れてすぐに逃げていく部隊とした。少なくとも女性が多いことから敵の目を引くには十分である。たぶん敵は追ってくると思う。
そして、敵を例えば落とし穴を掘った所や沼地に誘導する。さらにその沼地の水に毒を含ませておけば馬が死ぬかもしれない。
そこで、マリーはクレベンナ周辺でこの部隊を運用する場所を選定することにした。




