12.マリーの子供
それから、マリーはあまり外に出ることなく、部屋の中で過ごすことが多くなった。そのためマリーが妊娠していることは1階の商店のおばちゃんと、部屋の両隣の家族連れ以外は気づくことがなかった。冒険者ギルドの職員にも気がつかれなかった。
そして、マリーは元気な男の子を出産した。出産時はさすがにカーラだけでは不安なので、1階の商店のおばちゃんと、部屋の両隣の家族連れに手伝ってもらった。
名前はフィリベルトと名付けた。この国では貴族は国に届け出る必要があるが平民はその必要がないそうである。5歳のスキル授けの儀式に参加すればいいそうである。
マリーは平民として生きるつもりである。当然フィリベルトも平民になる。そう思っているのであるが、フィリベルトの父親はアントニオである。時々それを思うとフィリベルトに悪いような気がする。
フィリベルトはアントニオと同じで髪は金髪、目の色も紫である。すると、フィリベルトを見たおばちゃんが
「フィリベルトちゃんの目の色は紫色なのですね。紫は王族の色と聞いたことが有る」
何か恐ろしいことを言い出した。
「そんなことはないですよ、私は下賤の出だし、父親だって………」
そう言って口ごもってしまった。
アントニオは公爵家の嫡男、公爵家には当然王家の血が入っている。アントニオが王家とどんな関係があるかは知らない。そのうちクレベンナの町を出て何処かへ行くと思っていたから敢えて聞かなかった。
どうしていいか分からなくなった。このままフィリベルトを育てていくと、絶対に面倒なことになる。随分悩んだがクレベンナ公爵家に手紙を書くことにした。
「アントニオ様、そして公爵様、お久し振りです。マリアです。突然いなくなった不義理をお詫び申し上げます。今シァルナの町に居ます。そこで私はポーションを作ってそれを冒険者ギルドに売って暮らしています。
私は先日子供を産みました。生まれた子供はフィリベルトと名付けました。その子の髪の色は金髪です。そして目の色は紫色でした。そうしたら、出産を手伝ってくれた人が紫色の目は王家の色だと言い出したのです。
私としてはそんな事は初耳だったので驚いています。私としてはこのままひっそりと公爵家にはご迷惑を掛けずに暮らしていこうと思っているのですが、どうもそうはいかないようで困っています。ご助言をお願いします」
この手紙を冒険者ギルド経由で公爵家に送ってもらった。
するとしばらくして突然アントニオ様が訪ねてきた。公爵様も一緒です。
「マリア、会いたかった」
そう言って私に抱きついてきた。
そしてフィリベルトを見ると
「俺の子だ。まちがいない。髪の色も目の色も一緒だ」
そう言って、フィリベルトの頭をなぜた。そしてフィリベルトの頬を指でつついて、嬉しそうにしている。
公爵様が
「なぜ、アントニオのもとから去った。アントニオに抱かれたのなら子供が出来ると思わなかったのか」
「すいませんでした。まさか子供が出来るとは思わなかったので、あのままクレベンナの町にいるとアントニオ様にご迷惑をかけると思ったので」
「父さん過ぎたことはどうでもいいじゃないですか。この子は間違いなく俺の子です。だって、金髪に紫の目、これは間違いなく王家の色です」
「そうだな、これは王家の色だ」
「すいません。よくわからないのですが、アントニオ様は王家とどんな関係なのですか」
「儂は今の王の弟だ。アントニオは王の甥にあたる」
「すいません。そんな方とはつゆ知らず。これまでのご無礼をお許しください」
結局、子供の首が座るまでは長期の馬車の旅は難しいだろうということで、しばらくはアントニオ様と一緒に暮らすことになった。
アントニオ様の話では、マリーがクレベンナの町を去ってから、方々手を尽くしてマリーの居場所を探したそうだ。しかし、マリーの行方は知れなかったそうである。冒険者ギルドにも問い合わせたが、個人のことは教えられないと拒否されたそうだ。
そんな時マリーからの手紙が届いたので慌てて飛んで来たそうです。
王国歴323年1月20日、マリーは子供フィリベルトを産んだ。そして、その後アントニオが訪ねて来て親子の再会となった。




