第26話 想いと約束
さっきから、シャーペンが動いてなかった。
黒板より、しゅんくんの背中ばかり見ていた。
......次こそ。
さっきの休み時間に、しゅんくんに話しかけようとした。
でも、うまくできなかった。
声を出そうとしたのに、どうしても、口が動かなかった。
言うって決めたのに......
気がつくと、シャーペンを強く握っていた。
――しゅんくん、二人でお話ししたい。
少しだけ、息が浅くなった。
頭の中では言えるのに......
しゅんくんに言おうとすると......
はぁ......
さっきから、何度目かわからないため息が出た。
それでも、目を逸らせなかった。
いつの間にか、昼休みになっていた。
身体が自然と教科書をしまっていた。
すると、しゅんくんの声が聞こえた。
「まいちゃん!ご飯食べよ!」
一瞬、教科書をしまう手が止まった。
小さく深呼吸をして、顔を上げた。
喉が少し詰まって、声が出しにくかった。
「......うん」
さっきまで背中を見ていたのに、目を合わせるのが難しかった。
四人で机を準備していると、さきちゃんも来た。
さきちゃんと目が合うと、「どう?」と目で言っていた。
私は小さく首を振ると、また、さっきと同じため息が出てしまった。
このままじゃ、また言えない気がした。
......それでも、昼休みが終わるまでに、声をかけよう。
そう思ったのに、胸の奥が、落ち着かなかった。
みんなの会話が途切れたときに、何度も声を出そうとした。
それなのに、出てくれなかった。
そうしていると、お昼休みが終わるチャイムが鳴ってしまった。
何もしてないのに、喉だけが渇いていた。
しゅんくんが、席を立った。
......言えなくなっちゃう。
何か、言わないと......
このままじゃ嫌で――
「......あ、あの」
みんなが、私に視線を向けた。
一気に、息が苦しくなった。
「......っ」
息が詰まって、声が出なかった。
すると、さきちゃんが手を握ってくれた。
それだけで、肩の力が少しだけ抜けた。
ゆっくりと深呼吸をして、口を開いた。
「......しゅんくんに、話したいことがあって――」
予鈴が鳴って、声がかき消された。
それでも――止められなかった。
「あとで......放課後、少しだけ時間ほしい......ダメかな?」
気がつくと、床を見ていた。
まだ、心臓がうるさかった。
「いいよ。ここで?」
しゅんくんが、教室を指す気配がした。
......場所、どうしよう。
頭の中が真っ白になった。
そのとき――
ぎゅっと、さきちゃんが手を握ってくれた。
少しだけ、息がしやすくなった。
「あ、空き教室で、どうかな......?」
「わかった!」
ふと見上げると、しゅんくんはいつもの笑顔だった。
胸の奥が、締め付けられた。
でも、少しだけ温かかった。




