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お菓子とあなた  作者: シロ
第三章 チョコタルトと本当の約束
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第27話 あなたと想い

時計の針が、やけに遅く進んでいる気がした。


早く、放課後になってほしかった。


それなのに、少しだけ怖かった。


気づけば、しゅんくんの背中を見ていた。


息が浅くなった。


「しゅんくんが好き」


「一緒にいてほしい」


頭の中で、何度も繰り返した。


......ちゃんと、言えるかな。




いつの間にか、みんな帰る支度をしていた。


バッグの中を見ると、今朝入れてきたパウンドケーキの袋があった。


......崩れて、ないよね。


袋を出そうとしたけど、指にうまく力が入らなかった。


目をつぶって、息を吐いた。


もう一度、息を吸った。


ゆっくりと、袋を取り出した。


パウンドケーキは崩れていなかった。


肩の力が、少し抜けた。


袋を持って、しゅんくんの席に向かった。


席に着くと、しゅんくんは帰る準備をしていた。


うまく、息ができなかった。


何度か深呼吸をした。


それから、口を開いた。


「......あの、しゅんくん。......いいかな?」


指先が、少し冷たかった。


しゅんくんが、私に振り返った。


目が合っただけで、肩に力が入った。


「いいよ!」


そう言って、しゅんくんはカバンを肩にかけた。


ほっと、小さく息が漏れた。


「......行こ」


しゅんくんから、目を逸らした。


気づけば、袋をぎゅっと握っていた。


教室を出てから、無言だった。


何か話そうとして、言葉が出なかった。


放課後の音に、心臓の音が混ざっていた。




空き教室の前に着いた。


扉に手を伸ばそうとして、手が止まった。


後ろで、しゅんくんが立ち止まる気配がした。


指先が、震えていた。


左手で右手首を握った。


ほんの少し、震えが収まった。


扉を開けた。


教室の中は、少し薄暗かった。


私の鼓動だけが、妙に大きく聞こえていた。


教室の中に、一歩だけ進んだ。


すぐ後ろに、しゅんくんの気配があった。


足が止まった。


小さく、深呼吸をした。


恐る恐る、しゅんくんに振り返った。


しゅんくんと、目を合わせようとした。


でも、うまくできなかった。


袋を握る音がした。


その音で、しゅんくんが、私の手元に目を向けた。


胸の奥が、ぎゅっと締まった。


ゆっくり息を吐いて、口を開いた。


「......その、これ。よかったら、食べてほしい」


「お菓子?」


そう言って、しゅんくんが袋を受け取ってくれた。


胸のざわつきが、ほんの少しだけ和らいだ。


しゅんくんが、袋からパウンドケーキを取り出した。


「これ、前の?」


私は首を振って、答えた。


「......少しだけ、違うよ」


「そうなの?食べていい?」


小さく、頷くことしかできなかった。


しゅんくんが、パウンドケーキをじっと見て、口に運んだ。


私は、息をのんだ。


しゅんくんの口元から、目が離せなかった。


すると、しゅんくんの口が、だんだんと緩んだ。


胸の奥が、じんわりと温かくなった。


一口飲み込んでから、しゅんくんが口を開いた。


「オレンジ入ってるんだ。この前のもおいしかったけど、これもおいしいね!」


「......ありがと」


声が、思ったより小さかった。


でも、言えそうな気がした。


胸に手を当てて、深く息を吸った。


ゆっくり吐いてから、しゅんくんを見た。


「......それでね。もう一つ、あって」


足元の感覚が、遠くなった。


心臓の音だけが、残った。


「......しゅんくんが、好き。......一緒にいたい」


一瞬、しゅんくんが目を見開いた。


それから、頬をかいた。


ほんの少し、頬が赤く見えた。


教室の静けさが、やけに大きく感じた。


しばらく、しゅんくんは目を彷徨わせていた。


「......その、ありがとう。好きって、言ってくれて」


一瞬、肩に力が入った。


しゅんくんの声が、いつもより静かだった。


しゅんくんの次の言葉まで、やけに長く感じた。


「......すっごくうれしい。まいちゃんといると楽しくて」


うまく、息ができなかった。


それでも、しゅんくんから目を逸らせなかった。


「俺も、まいちゃんのことが、好き、だと思う」


その瞬間、鼓動が早くなった。


その言葉を、何度も心の中で繰り返した。


胸の奥が温かいのに、きゅっと締め付けられた。


怖いけど、言いたくなった。


「......しゅんくんと......付き合いたい」


声が、やけに小さかった。


少しして、しゅんくんが口を開いた。


「......俺も」


しゅんくんの言葉が、胸の奥に落ちてきた。


胸の奥が、じんわりと温かかった。

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