第21話 約束と格闘ゲーム
「今日はどう周るの~?」
さきちゃんの声に顔を上げた。
教室は、お昼休みで少し騒がしかった。
周りの声が混ざっているのに、しゅんくんの声だけやけに耳に残った。
「あー......どうすっかな」
しゅんくんは、腕を組んで少し考えていた。
「なら、またプリ撮ろ」
一瞬、さきちゃんと目が合った。
昨日のさきちゃんの言葉を思い出して、頭を振った。
......たぶん、冗談のはず。
......隣で、か。
心臓の音が、うるさかった。
気づくと、話はもう決まっていた。
「それじゃ、ゲームやってからプリクラでいいか?」
鈴木くんが、みんなにそう聞いた。
「おう!」
しゅんくんの笑顔が、眩しかった。
ずっと見ていたかったのに、目を逸らした。
ふと、さきちゃんに見られている気がして、気まずかった。
放課後、昇降口でみんな揃うと、さきちゃんが口を開いた。
「それじゃ、行こっか」
歩き始めて少しすると、さきちゃんが鈴木くんと斎藤くんに声をかけた。
「......聞きたいことあるんだけど、いいかな?谷口くんは、まいちゃんと話してていいよ」
「わかった!」
そう言って、しゅんくんが隣に来た。
胸の奥が、少しだけ苦しくなった。
......離れたい。
でも、変に思われたくないし......
「まいちゃんは格ゲーやったことある?」
......そういえば、お昼休みに言ってたっけ。
「......ないよ」
ちょっと、怖いし......
「なら、俺が教えてあげる!楽しいから!」
しゅんくんの笑顔に、ドキッとした。
少しだけ、楽しみになっていた。
ゲームセンターに入ると、独特な機械音が少しうるさく感じた。
そのまままっすぐ、格闘ゲームがあるところに向かった。
店内の隅に着くと、しゅんくんが鈴木くんを見ながら口を開いた。
「よし、一戦やろう!」
「はいはい。嵌め技なしでな」
そう言って、二人が座った。
しゅんくんはキャラを決めると、腕まくりをした。
対戦が始まると、画面の中で、二人のキャラが技を次々と出していた。
しゅんくんの指は次々とボタンを押していた。
「......すごい」
思わず、口に出ていた。
なんとなく、しゅんくんの横顔を見た。
思わず、息をするのを忘れた。
いつもと違う、真剣な表情だった。
......こういう顔も、するんだ。
それが少し嬉しくて、画面よりしゅんくんの横顔に目が行っていた。
すると、しゅんくんが笑顔になった。
「よっしゃ!」
そう言って、ガッツポーズをした。
「お前強すぎ。もっと縛るべきだったか......」
鈴木くんの声が、どこか遠くで聞こえた気がした。
しゅんくんと鈴木くんが少し話すと、しゅんくんが振り返った。
バッチリしゅんくんと目が合って、すぐに目を逸らした。
......ずっと見てたの、気づかれてない、よね。
「まいちゃんもやってみる?」
少し考えていると、さきちゃんが口を開いた。
「せっかくだし、やってみたら?」
さきちゃんに背中を押されて、格闘ゲームの前に座った。
なんとなく、画面よりも隣の気配の方が気になった。
「初めてなら、練習のがいいかな。ちょっとごめんね!」
そう言って、しゅんくんが身を乗り出した。
思わず、息を止めた。
一瞬、しゅんくんの匂いがした。
胸の奥が苦しいのに、なんとなく、じんわりした。
「はい。これでできるよ」
しゅんくんの声が、いつもより近かった。
口をなんとか動かして、答えた。
「......ありがと」
画面を見ると、たくさんのキャラが映っていた。
なんとなく、しゅんくんが使っていたキャラに、カーソルを合わせた。
「あ、それ難しいから、こっちおすすめ!」
そう言って、しゅんくんは画面を指さした。
言われたとおりにカーソルを動かして、選択した。
少し、寂しい気がした。
......同じキャラ、使ってみたかったな。
画面が切り替わった。
......もう、動かせるのかな。
ボタンが多すぎて、手を彷徨わせた。
すると、しゅんくんが言った。
「敵に近づいてみて」
言われたとおりに、敵にゆっくり近づいた。
キャラの動きが、ぎこちなかった。
これで、いいのかな......
なんとなくしゅんくんを見ると、視線は画面に向いていた。
「次は攻撃してみよう。このボタン押してみて」
私の手元を見てから、しゅんくんは手を伸ばした。
しゅんくんがボタンを指さすときに、ちょっとだけ手が触れた気がした。
身体が、びくっと震えた。
小さく深呼吸をして、ボタンを押した。
指が、少し震えていた。
「そうそういい感じ。それじゃ、次は――」
しばらくすると、ぎこちないけど最初とは見違えるほど、キャラが動くようになっていた。
......しゅんくんみたいに、できたらいいのに。
そうしたら、しゅんくんと......
それを想像するだけで、胸が締め付けられた。
しゅんくんの顔を見上げると、いつもみたいに笑っていた。
それが、少しだけ苦しかった。




