第20話 約束とチョコタルト
登校中、少し足取りが軽かった。
バッグに入れたチョコタルトが、崩れないか気になっていた。
教室に着くと、しゅんくんたちが目に入った。
心臓がうるさくて、声が出なかった。
......どうしてだろう。
ゴールデンウィーク前は、普通に「おはよう」って言えたのに。
入り口で立ち止まっていると、しゅんくんが私の方を見た。
それだけなのに、心臓が跳ねた。
「おはよう!まいちゃん」
息が苦しいのに、胸の奥がじんわりと温かくなった。
「......おはよう」
自分の声が、どこか遠くに聞こえた。
変に思われてない......かな。
しゅんくんの顔を見ると、いつもの笑顔だった。
......鼓動が落ち着かないな。
喉が少しだけ渇いていた。
うまく話せる気がしなくて、少し怖かった。
私は席に着いて、ぼんやり過ごした。
気がつくと、しゅんくんたちの方に耳が傾いていた。
授業中、なんとなくしゅんくんの背中を見ていた。
そういえば、今までも見ちゃってたときあったな......
今思うと。
胸が少しだけ苦しくなった。
気づいてほしいような、気づかれたくないような......
ボールペンを撫でると、少しだけくすぐったかった。
気がつくと、お昼休みのチャイムが鳴っていた。
「お昼だ~!」
教科書をしまっていると、しゅんくんの声がすぐ近くで聞こえた。
顔を上げると、しゅんくんたちが私の席の方に来ていた。
しゅんくんたちと、今日も向かい合うように席を移動した。
そうしていると、さきちゃんも来た。
なんとなく、しゅんくんから離れた席に座った。
さきちゃんと目が合うと、ニヤニヤしていた。
お弁当を食べていると、しゅんくんが口を開いた。
「ゴールデンウィーク楽しかったな~。......そうだ!きょ......明日の放課後、また遊ばない?」
返事をする前に、小さく頷いていた。
......遊びたい。
胸の奥が、少しだけ熱くなった。
さきちゃんは、私をちらっと見てから、少しだけ笑って言った。
「私もいいよ~。ゲームセンター?」
「あー......うん。たぶん、そこ」
「谷......また考えてなかったのかよ......」
鈴木くんは、呆れた目をして続けた。
「俺も空いてるから行ける」
斎藤くんも大丈夫そうだった。
「それじゃ、明日行こう!」
しゅんくんが嬉しそうに笑っていた。
それを見ているだけで、胸の奥がじんわりと温かかった。
みんなが食べ終わったのを見て、バッグに手を入れた。
うまく、チョコタルトを掴めなかった。
さきちゃん、鈴木くん、斎藤くんに順番に渡した。
最後に残った一つを、しゅんくんに向けた。
しゅんくんと目が合いそうになって、思わず逸らした。
もう、何回もお菓子を食べてもらっているはずなのに、鼓動が、全然落ち着かなかった。
タルトに視線を落としたのに、気がつくとしゅんくんの顔を見ていた。
しゅんくんはタルトをじっと見てから、パクっと食べた。
思わず、息をのんでいた。
なんとなく、しゅんくんの口の動きをじっと見ていた。
すると、しゅんくんの顔がほころんだ。
飲み込むと、ぱっと顔を上げた。
目がバッチリ合って、とっさに目を逸らした。
「すっごいサクサクで、おいしい!」
しゅんくんの声が弾んでいた。
気がつくと、肩の力が抜けていた。
うれしいのに、少し落ち着かなかった。
胸の奥が、さっきよりも、ずっと騒がしかった。




