閑話 帰り道
昨日は、楽しかったな......
遊園地のことを思い出すと、なんだかほわほわした。
また遊びたいな。
明日はさきちゃんと遊ぶ約束してるし、そのあとチョコタルト作ろうかな......
また、おいしいって言ってもらいたいな。
なんとなく、しゅんくんが喜んでいる顔を思い出して、くすぐったかった。
冷蔵庫を開けると、タルト生地の材料がなかった。
今日のうちに、買ってきちゃおうかな......
私は軽く支度を整えて、スーパーに向かった。
ほんの少しだけ、足取りが軽かった。
スーパーのドアをくぐると、夕食の買い出しに来た人たちの喧騒に包まれた。
アーモンドパウダーと、生クリームと......
必要な材料を頭の中で唱えながら、製菓コーナーに向かった。
材料を見ていると、今まで作ったお菓子のことを思い出した。
必要じゃないのに、買いたくなっちゃうな......
今買えば後で作れるし......
それに、いっぱい種類あった方が......
そんな葛藤をしながら、必要な分だけ買ってスーパーを出た。
しばらく歩いていると、しゅんくんたちと行ったゲームセンターが見えた。
あの時も楽しかったな......
枕元に置いてる、ぬいぐるみを思い出していると、しゅんくんが見えた。
今日も遊んでるのかな......
少しだけ、胸の奥が温かくなった。
見ていると、しゅんくんたちの他に、クラスの女の子グループがいた。
一緒に遊んでるのかな。
楽しそうだな......
そう思っていると、しゅんくんがぬいぐるみを女の子に渡していた。
なんでかわからないけど、目が離せなかった。
気がついたら、マイバッグを強く握りしめていた。
何もしていないのに、胸の奥が、すごく苦しかった。
しゅんくん、あの笑顔なんだろうな......
ここからじゃよく見えないけど、そう思うだけで、余計苦しくなった。
その場から離れようと思ってるのに、足が上手く動かなかった。
そう、だよね......しゅんくんは優しいし......
それに、友達なんだし。
どうして、こんなに苦しいんだろう。
立っているだけなのに、少しだけふらふらした。
ふと、ゲームセンターのとき、ぬいぐるみを取ってくれたのを思い出しちゃって、余計苦しくなった。
「私だけじゃなかったんだ......」
気がついたら、口に出ていた。
こんなこと、思ってなかったはずなのに......
なんで言っちゃったんだろう......
嫌だな......
自分のことなのに、そう思ってしまった。
すると、しゅんくんが、その子とハイタッチをしているのが見えた。
胸がズキっとした。
気がついたら、歯を噛みしめていた。
見たくないのに、目が離せなかった。
友達だったら、それくらい、するよね......
何に言い訳をしているのか、自分でもわからなかった。
私は、ああいうの......したこと、ないのに......
見たことない顔、してるのかな......
そんなことを想像しちゃって、息が詰まりそうになった。
こんなの、嫌なのに......
気がつくと、しゅんくんたちがいなくなっていた。
帰ろう......
さっきまでの喧騒が、どこか遠くに聞こえた。
気がついたら、私の部屋にいた。
どうやって帰ったのかも、帰ってからのことも、よく思い出せなかった。
いつも見てる部屋のはずなのに、なんだか、少し寒く感じた。
なんとなく、枕元のぬいぐるみを触った。
少しだけ温かくなったのに、思い出して、また寒くなった。




