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お菓子とあなた  作者: シロ
第二章 お菓子と募る想い
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第17話 コーヒーカップとジェットコースター

観覧車から降りるころには、さきちゃんはいつもの表情になっていた。


なぜか、それにほっとした。


少し待っていると、しゅんくんたちも観覧車から降りてきた。


それに気づいたさきちゃんが、口を開いた。


「次どこ行く?まいちゃん、どこ行きたい?」


「......え、えっと......コーヒーカップ、とかかな」


「うん。いいじゃん。みんなはどう?」


さきちゃんは、私に一瞬目を合わせると、しゅんくんたちに目を向けた。


すると、しゅんくんがすぐに答えた。


「いいね!久しぶりだな~」


「お前はいっつも、激しいのばっかだもんな」


鈴木くんがツッコミを入れていた。


「それじゃ、コーヒーカップ行こっか」


そう言って、さきちゃんが歩き始めた。


それに続いて、しゅんくんたちも歩き出した。


まだ乗っていないのに、少しだけ嬉しかった。


なんで、こんなに温かいんだろう......


なんとなく胸に手を当ててみたけど、よくわからなかった。




コーヒーカップに乗る列に並んでいると、鈴木くんが口を開いた。


「今回はどう別れる?さっきと同じでいいか?」


少しだけ、嫌だなって思った。


でも、さきちゃんと乗りたくないわけじゃないのに。


なんでこんなこと思っちゃうんだろう......


答えを探しているうちに、さきちゃんが口を開いた。


「うーん、どうしようかな~」


そう言って、さきちゃんは私の目を見た。


「まいちゃんは、どうしたい?」


観覧車のときと同じ目だった。


優しい目のはずなのに、少しだけ怖かった。


「......どっちでも」


なんとなくカーディガンの袖を握りしめながら答えた。


「そっか。それじゃ、さっきと同じにしよっか」


なんだか、見透かされてるみたいで、落ち着かなかった。




しばらく待っていると、順番が来た。


「それじゃ、乗ろっか」


さっきのさきちゃんの目が気になって、どう反応すればいいかわからなかった。


声が出せないでいると、さきちゃんは私の手を引いた。


そのまま、コーヒーカップに乗った。


コーヒーカップが動き出しても、さきちゃんは私をじっと見たまま、何も言わなかった。


少し離れたところから、しゅんくんたちの楽しそうな声が聞こえた。


目を向けると、勢いよく回っていた。


「谷口くんたち、楽しそうだね」


さきちゃんの言葉に、私は小さく頷いた。


「まいちゃんは楽しい?」


「......つまらなくは、ないけど」


どうしてそう思うのか、自分でもよくわからなかった。


「ふーん。どうしたらもっと楽しくなるんだろうね」


近くのコーヒーカップに目を向けると、視界の端でさきちゃんがニコニコしていた。




コーヒーカップから降りると、鈴木くんと斎藤くんは、ふらふらしていた。


「谷、お前なぁ......」


「楽しかったな!」


「こいつ...」


鈴木くんは少し怖い目でしゅんくんを睨んでいたけど、


しゅんくんはケロッとしていて、なんだか面白かった。


しゅんくんたちの言い合いが一段落すると、さきちゃんが口を開いた。


「次はジェットコースター行く?谷口くん、行きたがってたでしょ?」


「やった!行こう!」


しゅんくんがすぐに答えた。


尻尾があったらいっぱい振ってそうだった。


あんまり得意じゃないのに......


さきちゃんに視線を送ったけど、一瞬目が合ったけど、すぐに逸らされた気がした。


なんで、ジェットコースターなんだろう......


ジェットコースターの列に並ぶと、さきちゃんが鈴木くんと斎藤くんに声をかけた。


「ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いい?まいちゃんと谷口くんは2人で話してて」


そう言って、3人で小声で話し始めた。


こっそり聞こうとしたけど、しゅんくんが話しかけてきた。


「違ったらごめんだけど、まいちゃんジェットコースター嫌い?」


一瞬だけドキッとした。


「......ちょっとだけ。でも乗れなくはないよ?」


よくわからないけど、少しだけ嬉しかった気がした。


「無理そうなら言ってね?」


「あ、ありがとう......」


しゅんくんの目を見続けるのが、なんだか恥ずかしくて目を逸らした。


やっぱり、優しいな......


不安なのに、胸の奥が温かかった。


しばらく、しゅんくんと好きなアトラクションの話をしていると、順番が来た。


荷物を置いていると、ふと思い出したことを聞いた。


「順番、どうするの?」


さきちゃんたちの方を見ると、さきちゃんと鈴木くん、斎藤くんはもう乗っていた。


「まいちゃんは、谷口くんと乗りなよ」


さきちゃんが、軽い調子で言った。


しゅんくんはそのまま座ると、手招きをした。


「まいちゃん、おいで!」


さきちゃんに視線を送ったけど、ニコニコするだけだった。


少し迷ってから、しゅんくんの隣に座った。


安全バーが下りて、アナウンスが始まった。


心臓がうるさくて、やっぱりこの時間は苦手だな......


でも、今日はなんだか違う気がした。


アナウンスが終わると、ジェットコースターが揺れ始めた。


心臓がずっとうるさくて、近くにあった布をぎゅっと掴んだ。


触り心地が、なんだかほんの少し違う気がしたけど、すぐに揺れに意識が引っ張られた。


頂上に来ると、この先を考えて、思わず手に力が入った。


一瞬止まって、そのまま一気に落ちた。


景色が一気に変わって、風が顔に当たる感覚に、声が出そうになった。


でも、なんとなく声を出したくなくて、唇を噛んだ。


後ろから、さきちゃんたちの楽しそうな声が聞こえた気がした。


気づくと、ジェットコースターが終わっていて、そのまま降りた。


まだ身体が揺れてる気がして、感覚が上手く戻らなかった。


ぼーっとしていると、さきちゃんがニヤニヤしながら私の手の方をじっと見ていた。


視線を追うと、しゅんくんの服を掴んでいた。


「......あ、ご、ごめん」


すぐに手を放して、しゅんくんに頭を下げた。


心臓がうるさくて、どうしていいかわからなかった。


しゅんくんの服の裾に、さっきの跡が残っていた。

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