第16話 約束と観覧車
窓から差し込む朝の光で、目が覚めた。
昨日の変な感覚が嘘みたいに、今日は体が軽かった。
今日は、みんなで遊園地に行く日だ。
伸びをしながらベッドから起き上がって、私はゆっくり準備を始めた。
昨日、さきちゃんとした服の話を思い出しながら、クローゼットを開けた。
今日はいっぱい動くし、これかな......
せっかくなんだから、楽しみたいし。
デニムパンツと、ピンクのカーディガンを引っ張り出した。
服に袖を通して、鏡の前で後ろ姿も確かめる。
......大丈夫、なはず。
子どもっぽくは、ないし......
たぶん。
その後、私はくしとドライヤーで、しばらく格闘した。
髪の毛跳ねてないし、いい感じのはず。
前髪も決まってる気がするし......
朝ごはんを食べた後も、鏡の前で何度も確認をしてから家を出た。
外は少しだけ温かかった。
今日は、ちゃんと楽しめる気がした。
待ち合わせ場所に行くと、さきちゃんたちが見えた。
しゅんくんたち、やっぱりすぐ見つかるな......
そんなことを思いながら、さきちゃんたちに声をかけた。
「おはよう。......お待たせ」
気がついたら、カーディガンの袖を握っていた。
「まいちゃん、おはよう!」
しゅんくんの声に一瞬目が合って、今日も眩しかった。
少しドキッとした。
慌てて目を逸らすと、さきちゃんが笑顔で言った。
「おはよ~。今日もかわいいね」
一瞬、さきちゃんがしゅんくんを見て、いたずらっぽい顔をしたけど、
いつもの表情に戻って続けた。
「みんな揃ったし入ろ~」
そう言うと、さきちゃんは受付に向かった。
それに続いて、私も少し遅れてついて行った。
受付に着くと、みんなでチケットを買って園内に入った。
案内板の近くに着くと、鈴木くんが口を開いた。
「どこから回る?」
「ジェットコースター!」
しゅんくんが即答した。
しゅんくん、好きなんだ......
私はあまり得意じゃないのに。
......どうしよう。
なんとなくつま先を見ていると、鈴木くんが答えた。
「最初からはアレだから、ゆっくりのにしようぜ?」
さきちゃんが、少しだけ考えてから、案内板の観覧車を指さした。
「あ、なら観覧車にしない?上から見れば、次行きたいの決まるかもだし」
観覧車なら......
思わず「ほっ」と息が漏れた。
「んじゃ、観覧車行くか」
鈴木くんが答えると、みんなで観覧車に向かった。
歩きながら、さきちゃんは考えながら口を開いた。
「......たぶん、みんなで乗れないよね?どう別れる?」
「人数的に2、3だもんな......」
腕を組みながら、鈴木くんは答えた。
少し、沈黙が流れた。
チラッと、さきちゃんが私を見た気がした。
「......なら、女子男子でいいんじゃない?」
「そうするか」
しゅんくんはいつもみたいに笑っていて、何を考えているかわからなかった。
いつも通りのはずなんだけど、理由はわからないのに、胸の奥がざわついた。
さきちゃんと観覧車に乗ると、景色を見ながらさきちゃんが口を開いた。
「どこ行きたい?」
私も、景色を見ながら答えた。
「......うーん。コーヒーカップ、とかかな」
「やっぱり、早い系は慣れない?」
さきちゃんは、少し確認するように聞いてきた。
「......うん。乗れなくはないけど」
なんとなく、しゅんくんたちが乗ったゴンドラが目に入った。
よくわからないけど、胸がもやっとした。
「そっか~。無理そうなら言ってね?」
さきちゃんの声が優しかった。
私が頷くのを見てから、さきちゃんは少し意地悪な顔になった。
「コーヒーカップ乗るなら、誰と乗りたい?」
一瞬、身体が固まって、言葉が出なかった。
ゴンドラの低い音が響いた。
無理やり息を吸って答えた。
「だ、誰でも......」
喉が渇いて、声がかすれていた。
近くのゴンドラが、視界に入ったけど、反射的に目を逸らした。
「ふーん。誰でもいいんだ~。そっか~」
なんとなく、聞くのが怖かった。
何も言えないでいると、さきちゃんは続けた。
「......なら、私が一緒に乗ってもいいんだ?」
さきちゃんは、ふと外を見ている気がした。
視線を逸らすように、風景を見ようとしたけど、うまく目に入ってこなかった。
観覧車が一周するまで、さきちゃんはずっとニコニコしていた。
それが、なぜか気になった。




