マッサージ
…
まさか。
鬼の形相でエレベーターに乗った所が見られていた!?
猛ダッシュして、閉まりかけのエレベーターを連打して「ボタンが可哀想…」なんて近くにいた女性社員に言われるほど押したの見られてた?
「あははっ、もしかして見てました?私が走ってたの。緊急事態だったんです。」
見られたなら…辛い。
昔、友人に「お嫁に行けない顔してる!」と言われた「あの顔」で走っていた事だろう。推しの弟が可愛すぎて、弟を邪な目で見る男の目線に敏感になった結果、変な男から弟を守る事が体に染み付いてしまってる…。男の邪な視線や不審な動きを見るとつい対象を守らなくては!と防衛本能が働いてしまう。
友人に言わせるとあの顔だけで不審者は逃げて行くそう。弟を守れるならそれでいいんだけど、会社ではヤバい。鬼ダッシュとかあだ名付けられてしまう。
やおい君の着心地も確かめられた所で、脱ぎ始めるとタチネコにゃんも手伝ってくれた。
「足を見せてにゃぁ~。」
「え!?臭いと嫌ですから無理です。」
「ボクは鼻が利かないから気にしないにゃぁ~」
足元に座られて早く見せろ、とでも言いたげに動かないタチネコにゃん。渋々目の前で体育座りをしてから膝の後ろでスカートを抑えて足を出すと着ぐるみの可愛い手が足にやわやわ触れる。
ふにふにきゅっきゅっ。
見た目からそんな効果音が付きそうな可愛いマッサージで凄く気持ちいい。
「気持ちいい~。」
「それは良かったにゃぁ~。」
テクニシャンなタチネコにゃん。手の長さの問題で片手で揉みほぐされているのに気持ちよさが半端ない。
「両手だったらもっとやりやすいんだけどにゃぁ~、富士吉さんは目を瞑ってられるにゃぁ~?絶対ボクを見ないって約束出来るならもっと疲労回復出来るにゃぁ~。」
助けた覚えのない鶴が恩返しに来た!!そんな気分になった。鬼の形相見られただけなのにいいのかな?とてもやって欲しい。だけど疲れないかな…でもやってくれるって言うし。
「じゃあ…少しだけお言葉に甘えても良いですか?絶対目は開けないので。」
欲に負けてギュッと目を瞑り、両手で目元を抑える。すると暫くの沈黙の後、ジジジッとファスナーが下がる音が離れた場所から聞こえた。
無意識にゴクリと唾を飲む。
何故かな、ファスナー下ろす音ってエロい。私だけですか?
…
大丈夫かな、目を瞑ったまま放置されてない?と心配になった時、足に何かが触れてピクッと反応してしまう。
「っ……す、すみません…。急に何かが当たってビックリしただけですから…ホントすみません…。」
「…」
無言のタチネコにゃん。
多分だけど、タチネコにゃんの着ぐるみを脱いでいるから裏声で話すのが嫌なのだろう。遮る物も無くて声で誰なのか分かってしまうかも知れないし。
今度はしっかりと足を持たれもう片方の手で揉みほぐす。
ふにふにふに
私の足に触れる指先は確かに男の人の手という感じで大きいししっかりした指。女性みたいに細くはないけれど鍛えている男性よりは固くない手だと思う。
「~…、疲れた足が生き返ります。」
足を丁寧に誰かに触られているってくすぐったい。目を閉じているから何かのプレイみたいだし…そんな経験無いから分からないけれど。
手がパッと離れると人の気配が遠ざかるのが分かる。軽くなった足をゆらゆら動かすと重かったのが嘘の様に軽い。
ジジジ。
着ぐるみの中に戻ったのかファスナーを上げる音がする。一応オッケー出るまで目を瞑って羞恥心と戦いながら待機。
「もう目を開けて良いにゃぁ~。富士吉さん足がなかなかお疲れにゃぁ~。」
「ははっやっぱりですか?」
恥ずかしすぎて乾いた笑いが出た。
「ありがとうございました。」
「気にしなくて良いにゃぁ~。でもスカートの方は今後も気にして欲しいにゃぁ、嫁入り前の乙女は油断禁物にゃぁ。」
ハッ!!として座る自分の姿を見直せば、スカートで体育座りしていたのに手は後ろについていた。
「重ね重ね申し訳なく思います。とても気持ちよくてリラックスしてました。」
「今度からはボクの彼氏になるにゃぁ、動きやすい服装を心がけるにゃぁ~。そうしたらまたマッサージがやりやすいにゃぁ~。」
動きやすい服装でならまたマッサージしてもらえると!?タチネコにゃんの彼氏になった特典が豪華過ぎる。
「良いんですか!?次は中学のジャージ持ってきます。」
「中学のジャージ持ってるの物持ち良いにゃぁ?」
タチネコにゃんの彼氏「やおい君」の中の人となった私は仕事が増えたデメリットはあるものの、着ぐるみを着て心置きなく恋愛に挑める環境と素晴らしいテクニックのマッサージをしてもらえる権利を手にいれた。
「とりあえず、やおい君を呼ぶ場合は『やお君』と呼んで下さい。」
「確かにその方が仲良さそうで良いにゃぁ~。わかったにゃぁ~。」
◇ ◇ ◇
あと今日中に2話くらい投稿したい。




