結婚を悩む。
他人のどうでもいい結婚の悩みに、素直に聞く姿勢を見せる受屋君。
「うん、今気になる人にアプローチして…答えを貰ってからじゃないと前に進めないなって改めて考えたらね、更に気が重くて。」
「へぇ…、気になる人がいるんですね。」
隣にストンと座る受屋君。素っ気ない態度で遠くを見るのに、話は聞いてくれようとしているみたい。
弟達の妨げになってはいけない。一刻も早く結婚しないと。結婚するにはまず恋人を作らなくてはいけなくて……私にはそこが難しいんだけどなぁ。新しく、誰かにアプローチするにもタチネコにゃんの中の人にフラれるか受け入れられるかしないと先に進めない。
どうしてもタチネコにゃんの顔がチラつくから…。
…結構本気で好きなんだな…タチネコにゃん。
「気になる人にフラれたら……今度はお見合いしてみようかな。ときめきとか、愛や恋じゃなくて、協力して生きるパートナーになれる人を探せば…きっと。」
「相手を愛して無くても、結婚しなければならない状況なんですか?」
「……うん。弟の結婚がかかってるの。弟達の為なら、それくらい出来る気がする。それにお見合い結婚で幸せになった人も沢山いるし、結婚してから愛を育むのも有りかな。」
グッと握り拳を作りそれを眺める。うん。そうだよ、無駄にときめいてBLカップルを量産するより…その方が良いかも知れない。
前にウッカリ既婚者と知らず「ドキッ」としてしまった瞬間があったのだけど、その人にはイケメンイベントは訪れなかった。結婚してしまえば茶々が入る心配なくゆっくり愛が育めるだろう…。
「受屋君、ごめんね一方的に話して。でも頭の整理出来た。話を聞いてくれてありがとう。」
「俺は、なにもできていませんが…役にたてたなら良かったです」
ぽかんとしてから苦笑いする彼に、精一杯の笑顔を見せた。今後のプランは決まった。
帰ろう!と立ち上がると二人で最寄り駅まで話ながら歩く事になった。
私の他愛もない話を静かに聞いてくれ、相槌を打ってくれる。隣を歩くスピードは早すぎず遅すぎずで心地よかった。
本人には言えないけれど良い意味でタチネコにゃんの雰囲気に似てる。彼がもしタチネコにゃんの中の人だと言われたら納得するな。
…
いやいやいや、彼はマーケティング部でも主戦力の部類だから着ぐるみの仕事なんて任されないか。
違うよな~。と思うとタチネコにゃんに高い理想を押し付けている事に気がついて反省する。
「………」
「…受屋君?」
歩いていると、ふと受屋君が立ち止まる。
「もし、その好きな人に振られたら。お見合いも考えると言っていましたね」
「…え?うん。男性からすると切羽詰まりすぎて引くよね。結婚が目的みたいな…あははっ」
相手どうこうより、結婚に必死な姿を見せてしまったから…、見苦しかったかも?はははっと軽く笑っておこう。
「もし、好きな人に振られたら。俺と考えてみませんか?」
「…?…なにを?」
「俺と、結婚を」
「…………………なんて?」
思わず聞き返してしまった。聞き間違いかと思って。しかし、受屋君は「疲れましたね」とか言うような軽い雰囲気でそれを言う。プロポーズなんて雰囲気でもないし、その状況に頭はパニックだ。
「好きな人に振られたなら、俺と結婚を考えてみませんか?」
「…………本気で!?」
そう言うと、コクリと頷いた。
「前に面談で話した通り、男性に好かれやすいんです…俺。女性が恋愛対象なのに。それが、もう…鬱陶しいんです」
そう視線を落として言う彼の言葉はどこか切実で、エレベーターで同僚に誘われていた姿を思い出す。それは心底嫌そうで…きっと、昔から困っていたのだろう。
(ここまで追い詰められる程なのね可哀想に…)
自分の振られてきた苦労、そして彼の恋愛対象外から持て続けてきた苦労をつい重ねてしまう。同情というか、大変だったね…という労いの気持ちが湧く。
「苦労してきたのね。それで、私と結婚してでも面倒を回避したいってことね」
「……はい。富士吉さんも…お困りなんですよね?」
「そう!!そうなの!!困ってたの!!」
私は頭をフル回転させて今の状況を言葉に変える。
「つまり、互いの利害が一致した『契約結婚』の提案ね?」
「…そんな感じでしょうか」
私は嬉しくなって彼に駆け寄った。すると、受屋君は驚いてコチラを見る。
なんていい話!!タチネコにゃんに告白してダメなら受屋君と契約結婚すれば弟達の結婚イベントが見られる!!
私の頭の中は、弟達の結婚式でどんな余興をするかでいっぱいになった。
「ありがとう!!お陰で家族に良い報告が出来るわ」
「こちらも、その方が助かりますから」
軽く言葉を交わすと、受屋君とウキウキと足取り軽く家に帰った。
余興の準備は大仕事になるからね!!
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