5話 旦那様はデリカシーがない
あれから数日、私はマリウス様を避け続けてしまっていた。
「奥様、本日も旦那様とお食事をとられないんですか?」
「…うん、断っておいて」
「わかりました。最近体調を崩される事が多い様ですが、本当にお医者様を呼ばなくてよろしいんですか?」
「そんな大袈裟にしなくても大丈夫よ!ちょっと気分が悪いかなー?みたいな?だけだから。アハハ心配しないで…」
ごめんなさい、仮病なんです。だってあんな、き、キス…なんてされてどう顔を合わせていいか分からないんだもの。しょうがないじゃない!初めてだったんだから。まさか恥ずかしいから逃げ回っていますなんて言えないし。メイサには悪いがあれそれと理由をつけてはマリウス様のお誘いを回避している。でもいい加減普段通りに戻さないと契約不履行になっちゃう…
ガチャッ
「体調が悪いと聞いたが大丈夫か?」
「ひょえっ」
「旦那様!いくら奥様の部屋といえどノックはして下さい!マナーですよ!」
マリウス様に付いているメイド長のマリーが怒る。
「あぁ。…で、体調はどうなんだ?」
相変わらず顰めっ面のマリウス様がやってきた。ま、まずい仮病だとバレるわけにはいかない。
「大丈夫でふ!…っ大丈夫です!///少し寝れば治りますのでマリウス様はお気に入りなさらないでくださいませ!(か、噛んじゃった…泣)」
「ふーん」
「少し二人にしてくれ」
終わった。( ´ ཫ ` )
「で、仮病まで使って私を避け続けている理由を聞こうか」
「え?え〜と?なんの事でしょう?」
「ほぉ?まだとぼける気か?この間の続きでもするか?ん?」
「すすす、すいません!無理です!ごめんなさい!謝るのでそれだけはやめてください〜(泣」
「こいつ…ピキッ」
「で?この私がわざわざ忙しいのに休みをとってまで妻と過ごす時間をつくったというのにその努力を現在進行形で無駄にしているわけを教えてくれないか?ニッコリ」
笑ってるのに笑ってない。
もう隠し通せないとわかったロベルタは観念するしかない。
「((ボソッ…しぃ…から」
「なんだ?」
「恥ずかしくて顔を見れなかったんです!元はと言えばマリウス様のせいですよ!口で言えばわかるのに私にあんな事して!どうしてくれるんですか!」
「…?なぜ恥ずかしいんだ?忘れればいいだろうに。それとも私のことが好きにでもなったか?」
マリウスには乙女心がわからなければデリカシーもなかった。
心底不思議なものを見るような目をしているマリウスに、ああ、この人は本当に人の心がわからないんだろうなと思い、ロベルタは1人恥ずかしがっていることが馬鹿らしくなった。
「好きになんてなるわけないでしょ。初めてだから混乱していただけです!契約もあるし、そもそも私マリウス様は好みじゃないんです。自惚れないでください」
「…(ポカーン)」
はっ!しまった言いすぎた!サアッと青ざめる
「あ!今のは違うんです!決してマリウス様を悪くいったわけではなくてですね!」
今まで意外にも気安く接してくれていたから忘れていたがマリウスはあの魔王公爵と言われている身だ。こんな失言をして無事でいられるとは思えない。
「君、目が悪いんじゃないのか?」
「え?」
「私の顔を否定する人間を初めてみた。」
「いえ!否定はしていません!私の好みじゃないだけで美しいとは思います!私は騎士団長様(筋肉ダルマ)みたいな人が好みなので!」
「やっぱり頭が悪いのか?医者に見てもらうか?」
「いえ正常です」
…怒ってはいなさそうだが非常に失礼な事を言われた気がする。
「…そうか。君はやっぱり変わっているな。」
「いえ正常です」
「そうか、やはり念の為みてもらうか?」
「正・常です!!」
その後もマリウス様のデリカシーのない発言は続き、恥ずかしさはすっかり消えたものの今度は怒りで顔を合わせづらくなり再び数日間は無視が続いたのだった。
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