宿屋「微睡みの日向草」
俺と王子たちは街に戻ると一旦宿泊している宿で従者を休まる。
ベッドに聖騎士の兄ちゃんを横にすれば、憔悴しているせいか直ぐにスヤスヤ寝入ってしまう。
「……ゼレス嬢、今回の件は本当に感謝しかない。なんと礼をすればいいのか。そうだ、これから冒険者として活動するならば金銭的な支援をとも考えたがどうだろうか?」
カールス王子が改まって俺に向き直る。
「ありがたい申し出だが遠慮しとくよ。王子さんらにもいろいろ事情があるように俺もやることがあるんでな、お暇させてもらうわ」
俺は首を振り申し出を断る。本当は王子が持ってる転移結晶体が欲しいが、恐らくあれは王家伝来の宝具っぽいから無理そうだな。でも欲しいって言えば多分くれそうだけどね。
さすがにそこまで業突く張りじゃないからいらんけども。似たようなもんは探せば見つかると思うし。
「……そうか。何かあれば遠慮なく言ってくれ。俺たちはこの宿を活動拠点にしている。宿の者に偽名を伝えれば城に連絡してくれるから頻繁には難しいが、いざという時は利用してほしい」
カールス王子と握手して部屋を出る。
さて、なんやかんやあったがゴブリン討伐は完了したっぽい。
冒険者カードに描かれた文字盤がほんのりと発光して光を放っている。討伐依頼が自動的に完了したことを示しているようだ。何気にハイテクな構造して便利だな。
これを冒険者組合に持っていけば任務を遂行したことになる。あとはシーラちゃんたちが泊まってる宿に合流すればいいんだよな。確か宿名は……。
俺は二階から降りて広間に続く食堂の脇を抜けようとすると、
「あっ!ゼレスデウナさん!」
元気いっぱいな女の子の声が横合いから投げ掛けられた。
「ん?」
食堂の一角にあるテーブルに二人の年若い少女たちがこちらに手を振っている。
「あれ?シーラちゃんとジャミスィちゃん?あ、もしかしてこの宿か?」
そういえば宿屋の看板に書いてあったな。ここだったかのか、彼女たちがいる「微睡みの日向草」っていう宿屋。
俺はシーラちゃんたちのいるテーブルに歩み寄り、彼女たちに話しかける。
「はい、そうですよ。宿屋、微睡みの日向草。料理も美味しくて宿泊料もお手頃なのでよく拠点にしてます」
ニコニコと満面の笑みでよく日に焼けた顔を綻ばせるショートカットの美少女シーラちゃん。
相変わらず可愛いな、シーラちゃん。俺がいた元の現代世界でいえば中学生ぐらいだが、この世界の倫理観ならば問題無しなので野郎どもにモテそうだ。
「はぐはぐ、ようほほ、へれすでふなさん、もぐもぐ」
反対側の席でボブカットの美少女ジャスミィちゃんが口いっぱいにミートソースパスタを頬張りながら挨拶してくる。
おお、ジャミスィちゃんは食いしん坊キャラだったのか。くぅ、可愛いぜ。二人とも超美少女だから悪い虫に狙われる可能性大だ。
守りたい、この笑顔。この可憐な子たちにむさ苦しい男どもが近づくことは、絶対にお父さんが許しません。汚物は消毒します。
「私も座っていいかい?」
二人の美少女に脳内麻薬がヒャッハーっしそうな健全的思考に耽りそうになりそうな俺は相席の断りを入れる。
「はい!どうぞ!やった!ゼレスデウナさんと一緒なんて嬉しいなあ!」
「まだ食べ始めたばかり。ゼレスデウナさんも食べるといい」
ニコニコと微笑むシーラちゃんともぐもぐハムスター並に頰をパンパンにして食べ続けるジャミスィちゃんにほっこりしながら俺も何か食べようかと思いウェイトレスに注文する。




