喰らうもの喰らわれるもの
俺は魔装剣の更なる形態を解放する。
「魔装剣形態展開『強欲』」
大鎌が黒い闇に覆われてその形を変えていく。
「…なんだと?武器が、変化している、だと?」
盗賊団のボスが俺の持ってた大鎌が変化しているのを驚いている。普通武器が変わるなんて事は無いからな。
闇が意志あるように収縮して大鎌は二振りの短剣に姿を変異させた。
『渇き癒えぬ無尽の咆哮』
属性: 雷
魔力吸収 麻痺付加(上昇大)
七罪魔剣『強欲』の形態変化の一つ。暗く澱んだ鈍色の輝きを放つ歪な双剣。渇望の咆哮が魂を引き裂き、全てを圧する。心弱き者は無尽の闇の中に息絶えるだろう。
「ん、いい感じだ。やっぱ二刀流も王道でカッコいいねぇ」
黄電をバリバリと発する二つの短剣を眺める。
「…テメエはなんだ?…見た目は高級娼婦も霞む傾国の美女然としてるが、まるでこれは、Sランクの猛者とやり合ってる感覚だ…」
盗賊団のボスの額に大量の汗が噴き出している。だが構えた二刀の長剣はブレることなく隙も無い。
「まあまあ、焦るなよ。私は能書き垂れ流すうんねんは嫌いじゃないけど、今は死合いに集中しようか。さあ、来なよ」
俺は双剣をダラリと適当に垂らしニヤニヤする。ここはあえて敵の攻撃を受けるお約束にしよう。
「チッ…まるっきり勝てる気がしねえが、逃がすつもりもねえんなら、やるしか、ねえなっ!!」
盗賊団のボスがガタイに似合わない瞬足で俺に斬り込んでくる。
高速で迫る二連の長剣が激しく交差し、俺をリンゴのように真っ二つに両断した。
なんてことはあるはずなく。
双剣『渇き癒えぬ無尽の咆哮』が長剣をしっかり受け止めていた。
「ちきしょうがっ…!」
盗賊団のボスは初手から全力だったと思しき一撃をあっさり受けられて怒りと絶望感が綯交ぜになってる顔付きになっている。
初撃でケリをつけるつもりだったんだろう。
いいねそういう顔。
めちゃゾクゾクするわ。
どうしようもない現実、抗えない状況、抵抗さえ無意味な虚無感。
そしてそれらそういう状況を創り出している俺。
やっばい、俺の女の子の下半身がジュワリと、しどどに濡れて来た。
圧倒的無双してる自分に興奮してしまっている。
俺は興奮と羞恥に若干顔を紅潮させつつ、口を開く。
「…それで?今のがあんたの全力ってことでいいのかな?」
「くそがっ…!俺は…!まだ!こんなところでっ、」
何か言っているが自分に酔ってる俺には至極どうでもいいことだ。このハイなテンションのまま華麗に決着をつけよう。
「失ね、三下」
双剣の片割れを下から上へと無造作に斬り上げる。
二刀の長剣と盗賊団のボスの身体は真っ二つになった。
「なっ…がっ…は…」
盗賊団のボスさんは何が起きたか理解出来ない表情で綺麗に分断された自分の体と獲物を交互に視線を交わして白目になり息絶えた。
「ふふっ、ははっ!愉しい!愉しすぎるよっ!もっともっと遊ばないとっ!!」
えもいわれぬ高揚感で全身が身震いする。
暴力的に支配する愉悦感。
心地いい。
今はこのままこの快感を味わおう。
次のイベントも楽しくなることに想いを馳せて。
…トクン…
仄暗い濁った闇の水底。
脈動する小さき影は胎児か。
眠れ、眠れや。
いとちいさき子や。
眠れ、眠れや。
いといとしき子や。




