突撃隣の盗賊団
「なんだ?女?ここがどこか分からず迷い込んこんだのか?」
「いや、見たことない服を着ているぞ。街から討伐依頼を受けた冒険者かもしれん。警戒しろ」
断崖状の洞穴を中心にバリケードを築き、何人かの薄汚れた男たちがこちらに気付いた様子で武器を構えている。見張りだろう。
「忠実たる私の部下たちよ、手は出すなよ。取りこぼして逃し漏れたらその限りでないので対処は任せる。まあ、多少はハメを外しても構わんが」
俺はジークレオヴァルトから降りてエルドアザルとアルモディアにともに命ずる。
「承ッタ主」
「了解ですご主人様」
「心得た我が君」
「う〜」
グールは、まあオマケみたいな感じだしいいや。自我は無いし簡単な命令しか聞けないから。
俺は従魔たちを俺の影の中へ収納し、手を出さないよう命じ単身乗り込むことにしたのだ。
俺は優雅に見張りの山賊たちに近づいて挨拶を交わす。
「ごきげんよう。今日は穏やかな天気だな。この森はこの気候が普通か?」
山賊たちが互いに顔を見合わせて、それから俺を見る。
「このモルズの森は年中穏やかな気候だ。瘴気も少なく魔物も数が少ない。その分野生動物はデカくて気性が荒いヤツが多い。姉ちゃんここら辺知らないってことは冒険者か?」
「…ここはモルズという森か、知らない場所だ。時が経って地形も変わった可能性もあるのか。マッピングもやり直しか」
俺は小さい顎に手を当て片腕を胸の下に組んだ。たわわな果実が形を変え巫女服の隙間から見えそうで見えないもどかしさを与える。
ゴクリと男たちの生唾を飲む音が聞こえる。
まあ今の俺のカッコは痴女以外の何者でもない。でもこのゲームの衣装はどれも際どいヤツばっかだったからな。
「あ、あんたスゲー格好だな。と、ところでこんな所に何しに来たんだ?ここは盗賊団『双頭の牙』のアジトだぞ。まさか知らないで来た訳じゃないだろ?」
山賊じゃなく盗賊団だったのか。山賊も盗賊も対して変わらんだろ。コイツらのクラスもゲームと同じか。
あと何だ双頭の牙って。カッコいい名前だな。
盗賊
レベル21
性別:男
クラス:盗賊
うん。完全モブだ。個人名は無し。名前ぐらいあるんだろうけど。あったとしても面倒いから表示無しでいい。
ステータスも低いから映す価値無し。他の連中も似たようなものだ。
「私がここに来た訳は、お前たちを慰安しに来てやったのだ。ありがたく思え」
「い、慰安!?マジか?アンタみたいな綺麗な女が!?いやいやありえないだろう、俺たちをおちょくってるのか?アンタ頭がおかしいのか、それとも好きモノか?まあどっちにしろこんなチャンスは無いからな…」
盗賊は俺を複数で囲んでくる。
逃がすつもりはないらしい。あと息がめちゃくちゃ臭い。不快指数度が一気に跳ね上がる。
一人の盗賊が俺のたわわを鷲掴むつもりで手を大きく広げて伸ばす。
「ああ、慰安しに来たのは間違いない。お前たちの無価値でゴミでゲスい魂を有効的に活用してやるんだ。嬉しいだろう、これぞ魂の慰安だ」
盗賊の汚い手は俺に触れることなく宙を飛んだ。
俺はイベントリアイテムから魔装剣を取り出していた。
にやけた面から驚愕の表情に変わる盗賊たち。
何も無い空間から大太刀が出て来て己れの腕を斬り裂いたんだ驚くだろう。
ゲームには描写されないところがリアルで表現されているのは新鮮でいい。
魔装剣『暗澹たる七罪の痛み』
鋭い斬影の軌軸が閃き、描かれる。
シュルルと分割された七つの刃が蛇のようにしなり、再び一つの刀身にジャキンと連結する。
盗賊たちは何も発することなく驚愕の表情のまま微動だにせずに固まった後、木っ端微塵にバラバラになり需要の無い細切れ肉の汚物にクラスチェンジした。
複数の魂は『業魔』となって俺に流れてくる。
この業魔はゲームの見えない隠しステータスでストーリーに影響を与えていた。
複数のプレイヤーが同じストーリー状でも選択肢や一部展開が変わったと言っていた。
エンディングもそれによって大きく変わり、ロウルートのエンディング、カオスルートのエンディング、ノーマルルートのエンディングに分かれていた。
ちなみに自分はノーマルルートのエンディングだった。
複数のキャラを作ってクリアすれば全部のエンディングに辿りつけるけど俺はこのゼレスデウナのアバターしか作っていないから自分では確認していない。ネットの動画で流れていたのを見ただけだ。
「さて、サクサクっと盗賊退治するか」
俺は盗賊のアジトの洞穴に足を踏み入れた。




