魔王戦3―エンド―
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「大健闘だ。自分を褒め称えてよい。私を相手にここまで戦い続けたのだから」
そう言って拍手をしているのは魔王、ジールヴィス。
漆黒の鎧に所々傷が出来ている。
顔にも打撲の痕があり、これまでの戦いの激しさを物語るようだった。
しかし、これは軽い方である。
ジールヴィスの相手をしていた俺は、傷がある程度ではなかった。
元々、鎧などは着けてなどいなく、服は斬戟によってズタボロになっている。
さらに、切り傷や打撲などもジールヴィスよりも何倍も多く、圧倒的な差があった。
そして、最後の抵抗の効力も残り僅か。
絶体絶命もいいところだ。
しかし、諦めるという選択肢など最初からない。逃げ道は残されてはいない。
それなら、やれるだけ戦い続けることしかできない。
「ウォォォォォォーー!」
残り少ない時間のことを考えると、もはや攻撃をするしかない。
これ以上戦闘が長引けば、必ず自分は負けてしまうとわかっているから。
冷静が売りの俺も、今ばかりはそうでない。そんな余裕はどこにもない。
振り上げた剣は、ジールヴィスの剣と交錯する。
これを何度続けたか。
見えない壁に阻まれるかのように、俺の剣は通らない。
蹴りは通る。拳も通る。
しかし、決定打は未だにない。
「単調だな」
「うるっ……せぇ……」
どんなに打ち続けても、肉を裂き、骨を穿つ一撃をいれなければ、どうしようもない。
この一瞬でさえ、敗北を、絶望を植え付けられる。
……なんで! なんでだ!
自分の覚悟が足りなかったのか、はたまた実力が圧倒的になかったのか。
おそらく、どっちもだろう。
引きこもりのくせに、出しゃばりすぎた。その報いを今受けるのか。
大きな期待背負って今、ここにいるというのに。
……また俺は負けるのか。
父親がいなくなって、自分の弱さゆえに立ち直れず、言ってしまえば現実に負けたのだ。
ここは現実じゃない。父親も現実ではない、そう思い込んで、この世界になら勝てると思っていたのに。
――ここで、終わってしまうのか……
絶望の狭間で、消えかけた『生きる意志』。
誰もいない。縋る神も、約束をした彼女の笑顔も、ここにはない。ただ、漆黒と絶望がある。
静かに、たった一瞬だけ、世界が止まったかのような。
走馬灯
初めて経験した。
というか、実際に経験するとは思わなかった。
まず、普通に生きていれば、走馬灯などという経験はしないからだ。
そんなことさえも、この一瞬で考えてしまう。
振り下ろされる県が眼前に迫り、本当の意味で終わりを迎えたように思ったその時……
今まで、その力の本質が全くわかっていなかったそれが、その力を現化させるかのように。
まばゆい閃光をもたらし、この空間を包み、俺たちを包む。
その剣が、覚醒した瞬間であった。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
次回で完結になると思います。




