終わりとは始まり
前回の話が途中で切れていたまま、投稿されていました。
その部分を加筆しましたことをご報告いたします。
閃光に包まれた俺は、どこかにいた。
あの剣の力なのか。
別次元に転移されている。あのジールヴィスの姿も見えない。
「ここ、どこだよ……」
もしかすると、死んでしまったのかもしれない。
敵を道連れにする力でもあったのだろうか。
ここがどこか、自分は死んでしまったのか。整理しなければならないことが多すぎる。
少しこの世界を探索してみようか、そう思った時。
「久しぶりだな。元気に……はしてないよな」
背後からの声。
あまり覚えのない声。しかし、どこか懐かしさを感じる、そんな声。
この声の主はすぐにわかった。
こんなの、こんな感覚を感じられるのは、たった一人しかいない。
こっちの世界にも、あっちの世界にも。
「久しぶり。親父……」
俺の親父、田中光國がそこにいた。
その姿をみただけで心は安らぎ、懐かしさを覚える。
死んでしまっているはずなのに、今は目の前にいる。ここはどこなのか、その答えが出たような気がした。
ここは死後の世界なのか……?
「言っとくが、お前はまだ死んでないぞ」
「じゃ、ここはどこだよ」
「剣がお前をここに呼んだんだ」
あの、なんの能力も見せなかった覇王の剣(笑)になっていた剣がついにそれらしい力を見せたのか?でも、その能力の正体って?
「どういうことだ?」
呟いた程度のその言葉を親父は素早く拾う。
「あの剣には過去の後悔を一定範囲内の人間に見せる。お前の後悔に俺が出てきているってことに思い当たることはないか?」
過去の後悔、か。
「どうだろうな……確かに、昔はあったかもしれない。でも、今となってはそれもわからないよ。俺はこの世界で大きくかわってしまったと思う。だから、もう過去の自分がわからない」
親父は深くため息をつき、また語りだす。
「なら、話を変えよう。今、お前が戦っていたジールヴィスも過去に囚われ、これで二度目だ。きっと次はもうないだろうな。だから、お前の役目は終わった。それで、今からどうする? 今なら、あっちの世界に戻れる。だが、ここで残ると言えば、もうこの世界から出られないと思うぞ。俺はそうやって元の世界に戻ったからな。……少し考えろ。この決断がこれからを左右するんだからな」
「俺は……」
俺はどうしたいだろうか。
約束を守るべきだろうか。カリーナは俺を待っているだろうか。
親父は、静かにそして温かく、俺を見ていた。
もはや、俺の答えを知っているかのように。
……確かに、俺の答えはもう決まっているような気もする。ここで迷う必要なんてあるのだろうか。俺の答えは一つだし、迷わないはずなのに。
なんでだろう。言葉が出ない。俺は迷っているのだろうか。自問自答がひたすらに続き、混沌が脳裏を支配するような。
嫌だ。迷いたくなんてない。俺は自分を信じたいんだ。頼む、言わせてくれよ。
ここで、図ったかのように、俺の現実での楽しかった記憶がよみがえる。
なんで、今……! そう思わざるえなかった。
俺は、俺の答えは……!
……必ず、帰ってきてね。
ふと、そんな声が聞こえた。
知っている。俺がこの世界に来てから、一番聞いていた声だ。
ああ、そうだ。
俺には、ここにも帰る場所がある。
そして、今の俺の居場所はここだ。
「迷う必要なんて、なかったな……」
自然と、声が漏れる。
俺が今言いたかった、真実の声。
「決まってる……俺はここに残るよ」
「そうか……お前の答えに迷いがなければ、この世界からもじきに抜け出せるだろう。……じゃあ、俺は行くぞ」
「……ありがとな」
ボソリとつぶやいたその言葉は、親父にはしっかり聞こえてたようで。
「親は子を導くものだからな!」
満面の笑みでそう言って、消えていった。
それからしばらくすると、最初に見た閃光が視界を埋める。
これで、終わりだ。
2
気づけば、空は白い。
何もない虚無の空間か、はたまた未だ夢の中か。
だがすぐに異変に気づく。
自分が横たわっているその場所は、妙にフカフカしていて、空には模様も描かれている。
……ここってもしかして。
「目が覚めたんですね!!」
すぐ右隣に、いつかの騎士様がいらっしゃる。
最後に見たときはあんなにもプライドの高い騎士だったのに、今は看護師のようでいて、俺を見る眼差しは少し柔らかい。一体、俺が目を開けるまでに何があったというのだろうか。
いつのまにか、俺は城にいて、ベッドの上で寝ていた。結局、最後はどうなったのだろうか。
ゆっくりと身体を起こそうとすると、なんなく起き上がることが出来た。あれ程までにキズを負っていたにも関わらず、いつもより調子が良い気すらある。
「今、呼んできますから待っていてください」
「ああ、ありがとう。なんか、丸くなったな。俺、かなり煽ってた気がするんだが」
「ええ、今でも心底イラついてますよ? ただ、貴方の立場が変わったので、それに合わせているだけです。今でもあのときの貴方の顔をぶん殴ってやりたいです。ええ、今でもぶん殴ってやりたいです」
「別に二回も言わんでええやろ。イキッたのは悪かったって思ってるから」
「まぁ、良いですよ今は。あとは二人で話してください」
そう言って席を立った騎士の……マニア? とかだったかな? 名前は覚えてない騎士団の副団長は去っていく。
代わりに入ってきたのは、俺が戦う唯一の理由であったカリーナである。
心配そうな顔しているが、その顔からは安堵と喜びが、少しだけ滲み出ている。
数秒程の沈黙の後、俺は口を開く。
「これで、願いは叶えられるな」
「……うん。今こうして帰って来てくれてるし、約束は全部果たしてる。本当に、惚れ直しちゃったよ…」
そんなことを真顔で言われると照れる。
でも、こうして喜んでくれているだけで、自分に誇りを持てる。
「これで、レント王様だね…!」
「あぁ、これからめっちゃ忙しいだろーな」
「大丈夫だよ、私もいるし」
「もちろん、俺は最初に約束したことも忘れてなんかいない。差別、なくさないとな」
「……うん、簡単じゃないだろうけど…」
「大丈夫、不可能なことなんてそうそうないよ。大体は諦めてるだけ。いろんな方法が、絶対にあるはずだから」
「……よし! じゃ、頑張ろ!」
新たな王と王妃は、静かに笑う。
まだまだ先は長い。そうわかっていても、希望はもうすぐそばにあって、目視さることさえできてしまう。
ここまでの幸せを圧倒的に凌駕するような幸せが、もうすぐ始まるのだ。
こんな奇跡の真ん中にいる自分はどれだけ運がいいのか。
チートのような能力をした、ふざけた名前の力を少しもらっただけ。
親が先にこの世界に行っていたから。
そんな数えればキリないほどの奇跡が、重なっていたのだ。
俺たちにとっては、これからが本番みたいなもんだけど、この話はもう終わりにしようかな。
この後は、もうハッピーエンドしかないのだから……
王室記録より
書 タナカレント
そのページには、一枚の写真が挟まっていた。
まだ書きかけのようだ。栞のように使っているが、妙に大事にしている気がする。
その写真には、夫婦と、その子供らしき小さな少年が写っていた。
ここまでありがとうございました。
かなりの間、エタってしまいましたが、無事完結の運びとなります。
現在更新中の作品は、少し内容を変えて、もう一度という形にます。




