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鎧、考察する(1)


 俺は、部屋のソファーに座らず、仁王立ちで妖狐討伐戦を振り返り説明する。

『まず、最初に500匹を早期発見し、土魔術で壁を作り罠とした。とはいえ、ほとんどがエルトの射撃のお陰で撃破に成功。次の1000匹が襲ってきた時、森から妖狐の別働隊、湖からの奇襲までは、対処できた。しかし、後方まで回り込んだ遊撃の群れに対しては、バーニーさん達冒険者の増援のお陰で、なんとか撃破したよな。』

『あ、段々と追い詰められていた?』

『そう。ハイリンの言うように、こちらの策の上をいく行動を見せてきた。その時点まで俺達が妖狐を侮っていた結果だと思う。そして、森から来た群れのリーダーとの戦いに関しては、、、何人か負傷者が出ていたが、これには俺がじっくり観察させてもらう機会とさせてもらった。』


『で、ビルがそいつを倒したあと、バーニーさんに今まで報告と提案をしたよな。』

『そう、ただその時まで、妖狐を過小評価していた俺が居た。その考えを振り払い、そして、俺は20万匹以上が来ると予想した。ここでもまだ俺の予想が未熟だったことがいくつかあった。我ながら認識の甘さを痛感したよ。さっきの42万匹の話もそうだし、まさか番(つがい)の妖狐、ボスが二匹も居るなんてな。』

『あんなもん、誰が予想できるかよ。』

『いや、もう少し妖狐の全貌を確認してから妖狐の群れ本体に仕掛けても良かったんじゃないか?あと一回、前哨戦をやっておければ、、、』

『それは、、、戦にタラレバは無意味。じゃないでしょうか?』

『むぅ。それはそう、ハイリンの言うとおりかもしれないな。いや、次の戦いの時は、もう少し戦況というものを考えるつもりだ。これは、俺の反省でもある。』


『おまえさん、ストイック過ぎやしないか?』

『ま、あんな大群を俺の罠にはめて生還できたのは、スライムのお陰だし、ハイリンやタンタが居たからだし、妖狐のボスを倒せたのもハイドの功績だしな。』

『はん、それこそビルの作戦勝ちだったじゃないか。』

『いや、妖狐のボスのあの早さと力は、やばかったぞ。エルトの思念のやり取りで活路を見いだせた訳だしな。そして、あの雨だな。危機的状況を逆手に取ったというのもあるが、運が良いと一言で片付けられるか?』


『ビルさんの言おうとしていることがなんとなくわかります。つまり、仕組まれた戦いだったんじゃないか、と?』

『そう、そのとおり。ギリギリの戦いだったが、最後はあまりにも俺達に都合の良すぎる展開だったろう?そして、もう一つ。』

 俺は、この街の怪しい店で入手したキョクロプスの核(仮)を次元収納から取り出し、テーブルに置いてみんなに見せた。


『これは?魔石?』

『え?魔石?でかすぎやせん?』

『大きくて、綺麗ですねぇ。』

 ハイリン、タンタ、エルトの三者三様の感想だった。


『これは、この街で買い物中にとある店で入手したものだ。こいつの詳細を伝える前に、こっちも見てくれ。』

 更に俺は、妖狐についていた”石””なるものを取り出した。

 切断された妖狐のボスの尾を次元収納に入れた途端、石は尾からポロリと取れた。

 そして、黒く変質した。

 そう、黒く。

 街で買った魔石そっくりに。


『この二つは、妖狐の尾についていた”石”だ。』

『ええ!同じ物?なんなんですか?これはいったい。』

『ビルよ。なんなのかは分からんが、妖狐を狂わせていた石なんだろ?持っていても大丈夫なのか?』

『持ってるだけなら影響はない。俺自身に何も変化は無いしな。』

『そうか。なら良いんだけど。』

『と思っていたんだが。いや、それは、あとで考察するとして、、、』

『な、大丈夫じゃないんかい!』

『なんだか、意味深ですね。ほんとに大丈夫なんですか?』


『まぁまぁ。少なくとも狂うとか命が危ないとかは、ない。で、この魔石がどういったものかなんだが、少し前に話した二千年前、勇者達が倒した魔神が居たろう?その魔神キョクロプスが倒された戦場跡に残された魔神の核らしい。』


『え?』

『ええー!』

『な、魔神の?』

(そりゃ、みんな驚くわな。)


「ビルさん。これ本物ですか?いえ、えと、その話が本当ならこの前話してた誰かの策謀の物的証拠なんじゃぁ?」

『ハイリン!声を出すなって。』

 俺は、慌てて三つの魔石を次元収納に隠す。

『すいません。でも、それは貴重な証拠、、、』

『そうだな。証拠になりうるが、これが魔神の核だなんて誰も証明できないだろうな。俺もキキョウの記録からの推測でしかないし、何せ二千年前のシロ物だし。』

『あぁ。今度は証明かぁ。難しいですね。文献にも無いものですし。鑑定魔術の上級であれば、分かりそうですけどね。』

(本当はキョウカからの知識なんだが、説明が面倒だし、その知識も鵜呑みにしていいかどうか判らんけどな。)


『師匠は、これをどうされるんですか?』

『ん?さてなぁどうしたものか。本来なら悪用される前にどこか手の届かないところに封印すべきなんだろうが。』

『悪用?ああ、魔物を異常状態にさせたりか?』

『それもあるが、この魔石を集めて、召喚の儀式をすると魔神が復活する可能性がな。』

『た、大変じゃないか!んなもんが現れたら!』

『昔話では、100人の勇者達でやっと倒せたって。そのキョクロプス?』


『そこまで心配しなくてもいいと思うぞ。俺の次元収納に仕舞ってある限りはな。それに召喚しようとなると、十数人以上の魔術師が必要だし、数カ月間も準備に時間がかかるらしい。しかも核が全部揃ってそれだから、、、あと幾つあるのかは分からないが、この三つだけってことはなさそうだぞ。えーと、覚えているかな?この街で流れている噂の一つ。エルトラン山脈で、北のルドラ・カーバンクルの額の石が黒く変わったって。』


『黒く、、、北のルカもこの妖狐達と同じように黒い石、魔石が関係している?』

『と考えるのが普通だな。そして、西のカーディナル・ナーガが姿を消した、っていうのも無関係ではないかもな。』

『確かに。キレイにハイエルン湖を中心に南、北、西に異常がでてる?』

『そういうことだ。これは早い内にハイエルン湖から見て東の森のエルフの村に行って、確かめた方がいいと思っている。が、その前に俺の恩人に対する連絡も兼ねた礼をハイラックで済ませてからだけどな。』


『そうか、東の森のエルフね。あ、俺に異論はない。というより、不謹慎かも知れんが、何かワクワクしてきた。冒険って感じで。』

『兄さんの気持ちは分かりますけど、それは口に出さない方が、、、』

『口に出してねぇぞ。全部念話だぜ。』

『あ〜、念話だからいいのか?って、なんか違う気がするんだけど?あ、僕も異論は無いです。』

『私は、師匠について行って学び続けるだけです。』

『エルト様に異論がないのに、このタンタに有るわけない、、、です。』


『ちょっと泣けてきそうだわ。目が無いから涙は出ないけど。みんな有難う。俺は、全力でみんなを守ると誓おう。そして、誰が何のためなのか追求していきたいと思う。』

『誰がって、キキョウだろ?』

『ですね。』

『いや、まだ未確定だし、仮にキキョウだとしても動機や目的は何だ?』

『そう言われると、答えに窮するな。』


『エルフの村に行けば、多少なりとも情報があると思う。なにせ、二千年前にキキョウが立ち寄った記録が残る村だからな。』

『ほう?なんか、すげーな。これ叙事詩になるんじゃないか?』

『兄さんは、なんでそんなに嬉しそうなんですか?』

『いやだってよ。俺達を中心に物事が動くって凄いことだぞ。普通じゃねぇ。下手すりゃ魔王軍の戦いよりも重要かも知れねぇ。ハイリンは、そうは、思わないか?』

『それは言い過ぎでは?魔王軍は、この大陸南方の国全体の問題。こちらは、北の小国一国内の問題。規模が違いません?』

『でもよ、魔神が絡んでいるなら、どでかい話になるじゃねぇか。』

『はい!二人とも、そこまで。』

 ここでエルトが手を打ち、二人を落ち着かせる。


『期待なのか不安なのかは分かりませんが、師匠と一緒に行動すると決めたんですから、慎重に慌てずに、、、ほら、師匠が呆れていますよ。』

(え?わかるの?)

『いや、変な意味で呆れているわけでない。こんな突拍子もない話をちゃんと信じてくれるんだな、と思ってな。殆どがキキョウの記録からの推測でしか無いし。』

『ん〜、そうだなぁ。その話がキキョウの企てだったら命がけの旅になる気がするし、間違った話だったらそれはそれで、笑い話にはなるぜ。』


『、、、お前は、それでいいのかよ。』

『人生、楽しくやっていこうってことさ。死ぬ時に笑えれば、それは最高に幸せなんじゃないかな。それが戦場での自嘲であっても、子孫に囲まれて笑顔で老いて死ぬ時でもさ。』

『むぅ。今日のハイドは一味違うな。』

 確かに幸福だったなんて感情は、死ぬ間際でしか感じれないのかも知れない。


『ビルさん?あまり真に受けないでください。兄さんの幸せ論は、あくまでも個人的なものですから。』

『私は、みんなと旅ができるなんて、今、すごく幸せですよ。』

(エルトは、また臆面もなくそういうことを言う、、、ほら、ハイドもハイリンもちょっと思考停止しているじゃないか。)

『いや、悪い。なるほど、日々の小さな幸せって大事だもんな。エルトちゃんに一本取られたなぁ。あはは。』

『兄さんの場合、その小さな幸せって、女性の方だったりお酒だったりしますもんね。』

『くっ、言うじゃないか、ハイリン。』


『話が逸れていってるから、幸せ論はそこまでな。もう一つ話しておこうと思ったことが有るんだ。』

 俺は、この黒い魔石についての推察をみなに話した。


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