鎧、報告する(2)
「全部、ビルのお陰ですけどね。」
(いやいや、ボスを倒せたのは、ハイドがいたからだけどな〜。)
「ちょっと冒険者ギルド証を見せてもらっていいかな?」
「あ、はい。」
全員がバーニーさんにギルド証を渡す。
「へぇ。凄いな。確かにボス二匹の討伐の記録があるね。あぁ、説明すると雑魚とは違ってボス討伐の記録は、別項目になっているから全員のギルド証に記録されるのね。しっかし、ビルハインド殿の討伐数が半端ないね。討伐数が65536でカウンターストップしているのには驚いた。初めて見たよ。」
(なんで、そんな中途半端な数字?)
「でしょうね。一万や二万程度があの落とし穴で始末できた訳じゃないですからねぇ。」
「まぁ、ギルドにある別の鑑識魔術で見れば正確な数値が出るだろうけど、貴方達の言う妖狐の討伐数が20万匹以上と言うのが本当だとしたら、ギルドから報奨金、払い切れないかもね。」
「そうですね、単純計算で金貨5万枚以上になりますからねぇ。」
「ご!ごま、、、」
ハイリンの計算した結果に、バーニーさんは頭を抱える。
「すげぇ、、、」
というか、ハイドも驚いていた。
「まぁ報酬の件は、あとで考えるとして、妖狐増殖の原因は?今後も起きる可能性は?」
『ハイド。俺の言う通りに頼む。』
『おう。』
(今は、まだ伏せておきたいことが多いからな。)
「まず、ここ数カ月間の大量発生の原因は、、、タンタ、説明頼めるか?」
「あいよ。」
俺は、一匹の妖狐の死骸を次元収納から出す。
「この妖狐の内臓に変な薬品の匂いがしている。で、胃袋なんかに残っていた魚から同じ強烈な匂いがしていた。」
「補足すると、この薬品の匂いは、人間には分かりづらいそうです。鼻の効く獣人族ならでは、らしいです。」
「そうなのね。じゃぁこの一匹は、解体せずにギルドに提供してくれるかな?ギルドの方でも調べてみよう。」
「わかりました。」
「んと、つまり、薬品による影響で魚も増殖したため。っと。」
バーニーさんが何やらメモを取っている。
『そういや、ハイファーの人たちは、この湖の魚を獲って食べないのか?もし食べてたら人間にも影響が出てそうなんだけど?』
『あぁ、ここの湖の魚は全部危険な毒持ちなんで、食べたら即死だぜ。みんな知ってることだ。薬品の影響が出る前におっ死ぬだろうな。で、この妖狐はその毒を自分の体内に上手く取り込んで牙や爪に保持しているって話だ。』
『魚も毒持ちって、、、この湖に何があるんだ、、、』
『あ〜、言ってなかったか?この湖に流れ込む川の源は、王都近くのハイエルン湖なんだぜ。2000年前に勇者達に倒された魔神との戦いの際に出来たという。』
『あぁ、そうか。今だに魔神の影響があるのか、、、』
『そうさ。川の水自体は、人が飲んでも問題がないけどな。』
そんな俺達の念話を他所にメモを取っているバーニーさんは、更にいくつか質問をしてくる。
「で、その薬品の匂いってのに、心当たりはある?」
「街の噂の一つに、川に薬品をばら撒いた奴が居てるっていうのが関係してそうですね。自然な増え方では無いですし、人為的かと。ただ、誰が?ってのは皆目検討もつきません。」
「だろうね。ここからは国の調査機関に任せた方がいいね。変に他国を刺激することになりかねないからね。証拠も難しいだろうし。」
「あぁ、あと、ここ最近の異常な増殖の原因は、妖狐のボス二匹の能力によるもので魔力で仲間を増やしていやようです。」
「ん?なぜ、解るの?証拠でもあるの?」
「証拠というか、証人というか、証狐ですかね?」
バーニーさんが「何いってんの、こいつ?」みたいな顔をしている。
そして、ハイドがエルトの横に座っている妖狐二匹を指さす。
「まさか、、、その二匹が妖狐のボス?」
「正解です。ただ、群れを作っていた時は見上げるほどに大きい身体で、かつ暴走していたらしく、仲間を増やし続けていたみたいです。」
「いや、まさか、、、こんな小さくて可愛い妖狐がボスだなんて、、、」
バーニーさんが真剣な面持ちで妖狐を警戒しているが、当の妖狐達は敵意もなく短い尻尾をちょいちょい動かして、愛くるしい瞳で俺達を見ているだけだ。
「今は意識も正常に戻って害はないですよ。証拠にはなるかと。」
「うーん、それは無理かな?私では意思疎通ができないだろうし、できたとしても信用できないだろうから。」
「そ、そうですか。そうですよね。」
「ただ、報告としては上げておこうかな。推定要因と書いとけばいいか、、、それで、今後、この辺りの環境は、どうなるのかな?」
「ボスが居ないので、これ以上異常な増殖は無いですし、この二匹も責任を持って俺達が預かりますよ。」
「そう。残った湿地帯にいる妖狐は、心配ないっと。だけど、その二匹については別ね。どこかで同じことをしないとは限らないと思うんだけど?」
(バーニーさんの心配はもっともだな。仕方がない。少しだけ秘密を話すか。)
俺は、ハイドに俺の考えを伝えてもらう。
「実は、この二匹。大昔にはエルフに従属していたそうです。」
「ええ!エ、エルフ?」
「ま、まじ?」
ちょっと素が出た?コシールさんもびっくりした表情で二匹を見つめる。
「はい。これは秘密ですが俺達はエルフの村に伝手があるので、そこに連れて行ってキッチリ管理してもらうつもりです。」
「へぇそう。ちょっと信じがたいけど、、、まぁいいか。この件は、貴方たちに任せるね。そうね、ギルドから正式に依頼を出しておこうかな。」
「お気遣い、ありがとうございます。」
「うーん、達成条件は、エルフの長か代表者から証文、いや手紙でもいいかな、をもらう。って感じだけど、大丈夫?」
「大丈夫だと思います。ただ、かなり時間はかかると思いますよ。」
「ん〜でしょうねぇ。エルフがどこに住んでいるかなんて知らないけど、貴方達が旅のついでに立ち寄るって感じかな?」
「はい。信用問題になるのでこれ以上は話せませんが、エルフの村は存在しますよ。」
(というか、ここにエルフが居るけどな。)
俺の横でエルトがニコニコと笑顔を見せている。
「じゃぁ、この依頼は無期限にしておこう。」
バーニーさんへの報告は、これで終了した。
「さて、私は残った妖狐を始末するために、他の冒険者たちに指示を出してから街に戻るね。コシールはどうする?」
「姉さんにお供しますよ。」
(普通、逆じゃね?)
そんな俺のつっこみは、どうでもいいとして。
「そう?あ、狩った妖狐は食べないことって注意しとかなきゃ。街に戻るのは明日以降かな。貴方達に報奨金を出せるのは明後日になりそうね。」
「あ〜。ビル、どうする?あぁそうか、なら、、、バーニーさんに提案があります。」
「提案?」
「バーニーさんが他の冒険者に指示を出し終わったタイミングで、俺達と一緒に馬車で街に戻りませんか?そうすれば、今日中に街に着きますよ。」
バーニーさん達は徒歩だったから、ここから街に戻るにも半日以上はかかりそうだ。
しかし、タンタの馬車、、、猫馬車だったか?なら、それほどかからないし、なんて言ったって楽だ。
今から街に向かえば、夕方になる前に着くだろう。
なので、ハイドと相談して、そう提案した。
「え?いや、だけど。時間が惜しいのは事実だけども。」
(バーニーさんは、街に戻ったら戻ったで、妖狐討伐のこととか、妖狐の薬品の調査依頼とか事務処理が大変そうだよな。)
「遠慮は要りませんよ。な?みんな?」
俺達には特に反対はない。
「そう?じゃぁお言葉に甘えちゃおっかな。」
年頃の娘さんらしく、少しだけ茶目っ気を出して、ウィンクしてきた。
「じゃぁ、頼むね。少し待ってて。大まかな指示と食べるな絶対ってのを伝えてくるから。」
「あぁ、私も手伝いますよ。」
バーニーさん、コシールさんの二人が天幕を出ていった。
『師匠。この仔達をエルトッキュに連れて行くんですか?』
『ん?何か問題があるのか?』
『いえ、村が受け入れてくれるかどうか?』
『大丈夫だろう。エルフの昔話しに守護獣としての記憶があるのなら。しかし、ま、今すぐではないさ。しばらくは俺達の用事に付き合ってもらう。それでいいか?』
『あぁ、なら、大丈夫です。』
(エルトは、何を心配しているのか?)
俺にはわからない、エルフ独特の悩みなのかもな。




