鎧、策を説明する
「あのぅ、なんで俺様までここに居なきゃならないんだ?」
『タンタ、すまんな。少しばかり協力してくれ。なに、直接戦闘をしろってわけじゃないんだ。それと、この念話にも慣れてくれ。』
先程、タンタに渡した念話アイテムの調子を確かめながら念話してみた。
そして俺は、砦内の地上に降りてみんなの居る砦の中央に向かう。
『はぁ、直接戦うわけじゃないんなら良いんですが。』
『エルトを守る、と思えば、やる気は出るか?』
『は!はは!で、ありますか!不肖このタンタ、命を掛けてお守りいたします!』
『ふふ!心強いですね。お願いしますね。』
(エルトも合わせてくれたな。これで完璧。)
『はは〜!エルト様の頼みとあらば、尚一層尽力する所存!私くしめの働きをしかとご覧に入れましょう!』
(しかし、こいつの言葉使いはなんなのか?獣人族特有のものかな?)
『兄さんとビルさんの話の邪魔しないように発言しなかったけど、もう良いよね?』
『お?おぅハイリン。何か意見があるのか?』
『いえ、意見というか質問ですね。僕は、攻撃手段がないので役割は何かなぁっと。』
『うむ。実はこの作戦で生き残るためには、タンタとハイリンのコンビネーションにかかっている。といっても良いだろう。二人の息が合わないと全滅する。』
『つまり、先ずは、二人の仲を良くすることなんですね?師匠。』
『そうだ。タンタの方は大丈夫なんだが、問題はハイリンだな。ハイリンがなぜ猫を嫌うのか。それを今夜中に解決するぞ。』
「ええ〜〜!」
『二人とも文句を言うな。ビルの言う通りにしろや!』
『いや、俺様は何も言ってな、、、』
『ぼ、僕も文句は、言っていないけど、、、』
『やかましい。命がかかってんだ。猫の一匹や二匹、、、いや11匹もいるが、ともかく慣れろや。』
『兄さん、無茶言いますね!はぁ、兄さんとは違う覚悟が必要ってことですか、、、』
ハイドは、珍しくハイリンが責められている状況を楽しんでいるようだ。
『やかましいのは、ハイドだけどな。さて、ハイリンに問う。猫のどこがダメなのか教えてくれるか?』
『うっ、、、えと、口に出すのは恥ずかしいんですが、、、』
ハイリンがキョドる。
さもありなん。
(いかな人物でも、自分の弱点に成りうるものや嫌いなものは言いにくいものだからな。)
『ハイリン。何も恥ずかしがることはないぞ。誰しも苦手なものは存在するし、嫌なことからは逃げようと思う気持ちはあるものだ。』
『ううっ、、、』
『別に好きになれとは言っていない。普通に接するくらいまで改善できればいいんだ。』
俺は、諭すように優しく念話する。
すると、小さな声ながら、少しづつハイリンが話し始めてくれた。
「僕、怖いんですよ。猫のあの目が。」
『ふむ。ハイリンが幼かったころに猫に何かされた記憶は?』
『いえ、わかりません。でも、特に夜の猫の目が特に怖いです。』
(ふ〜む、夜の猫の目って、大きな黒目になっててつぶらで可愛いと俺は思うんだが、人それぞれなのかな。)
『エルト、どうだ?何か打開策はないだろうか?』
『そうですねぇ。心理的なキズであるなら、それを直さないと嫌悪感は消えませんから、慣れの問題ではないと思います。ただ、追体験をしてみるというやり方で、幼い頃は怖かったけど成長した今なら同じ体験でも怖くない、と考えることができたなら改善の可能性はなくは無いと思います。』
『よし、それだな。ハイリン、あの10匹の猫たちをちゃんと面と向かって見るんだ。今まで、目をそらして猫を見なかっただろう?そして、そこの猫たち!愛らしいポーズだ。エルト、伝えてくれ。』
「はい。さぁさぁ、猫ちゃん達、得意なポーズでいいので、かっこかわいいポーズをしてみてくださいねぇ。」
『ハイリン、今からそこの猫たちとの距離を少しづつ詰めていくんだ。そして、頭を撫でてみようか。』
「うう〜、、、」
ハイリンは、いやいやながらも猫に近づいていく。
彼の中で覚悟が決まったのだろう。
(そうでなければ、困るんだけどな。)
『ハイリン。猫は、相手の気持ちに敏感に反応する動物だ。こちらの態度次第で警戒もするし、甘えもする。相手は猫だが自分の心を写す鏡だと思うんだ。目は心の鏡だ。』
エルトは、また何かメモをしている。
『エルト?』
『あ、はい。すいません。さぁさ、ハイリン。この仔はこの中で一番小さい仔だよ。どう?撫でてみて。』
エルトは、メ゙組のメロルだったか?一番小さい猫を抱っこして、ハイリンの前で手本を見せている。
「う〜、うう〜。」
「にゃぁおん〜。」
(さて、ここはエルトに任せるか。)
『タンタ。』
『な、なんにゃ!』
『そんなに緊張しなくても、、、さっき言ったこの作戦の要を説明する。』
『あ、うん。俺様は、何をすればいいのだ?』
『タンタの使役するスライムの能力を利用した作戦だ。お前さんは、この二匹に指示を出す役目だ。タイミングは俺が指示するが、ハイリンの魔術と俺の魔術を同時に発動させた時となる。』
『ほうほう、あんた、、、いや、ビル殿は、スライムの能力を知っているのか?』
『ん〜、成長するだとか浮遊魔術を使うとかは知らないが、スライムの基本能力は知っているつもりだ。しかもこの2匹のこの大きさが、今回の俺の作戦を考えるきっかけになったんだ。』
『ま、それなら任せるけど。何を指示すればいい?どんな策?』
俺が考えた作戦を少し細かくタンタにも伝えた途端、タンタの尻尾が少し膨らんだ。
「にゃんだとぅ!んな無茶な!」
(ハイドと同じ反応か。まぁそうだよな。)
『大丈夫だ。俺の魔術でダメージは軽減できるし、スライムの各種耐性を考えるとそれほど危険というものでもない。』
『そ、そうかにゃぁ?というか、ビル殿はそんなことができるのか?』
『あぁできるからここに居る。身も蓋もないが、できなければさっさと逃げているか別の策を考えているさ。』
『わかったにゃ。覚悟を決めた。元よりエルト様を守ると誓った身。逃げる気なんてなかったけどな。』
『よし、頼むぞ。』
(あとは、ハイリンか。)
「うぅ〜」
(なんかハイリンとハイリンに抱っこされている猫、双方が緊張しすぎて変な雰囲気になっているな。)
『やっぱ、一晩で猫嫌いを治すのは無理があるか?』
『そうですねぇ。でも進歩はありますよ。抱っこまではできていますし。』
『よし。今夜は、ハイリンと猫10匹は、一緒に寝ろ。』
『えぇ!マジですかぁ〜。』
「にゃぁ〜、、、」
(猫も文句言っているのか?)
『エルトも側で休め。それならいいだろ?』
『エ?それは、、、ちょっと恥ずかしいというか余計に寝れないというか、、、』
『恥ずかしがることはないぞ。二人と猫10匹の寝床は、例によってあの天幕な。』
俺は、砦のど真ん中にいつもの天幕を出した。
(まぁハイリンは男子だが、猫10匹いるから変なことにはならんだろ。)
『エルト、任せても構わないか?』
『はい、大体、師匠の考えは、わかりました。』
(わかるんだ、、、)
『ハイドは、何をニヤけているんだ?』
『いや、俺も何となくビルの考えが読めたからよ。ハイリン、漢をあげろや。』
『ハイド、変な励ましは逆効果に、、、まぁいいか。何かあったら叩き起こすから。』
『はい。』
『はいはい。』
「にゃぁ」
『んで、タンタとハイドは、馬車の方で休んでくれ。幌はないが、ちゃんと干し草のベッドと毛布は用意してある。』
俺は、天幕の隣にある馬車を指さした。
『見張りは、俺がやるから。』
『んじゃ、お言葉に甘えて先に少し休むわ。交代の番になったら起してくれよ。タンタ行くぞ。』
『あぁ、わかった。』
そうして、ハイドとタンタも馬車に乗り込み、すぐに寝息を立て始めた。




