鎧、作戦を練る
「で、その2500匹を率いるボスを君たちが倒した、、、ということなのかな?」
「ええ、まぁ、、、え?ビル、なに?マジか!あ、いや、バーニーさん、失礼。確かにボスらしき個体を二匹倒しましたが、ビルの考察によるとこの二匹は、それぞれの500匹のみを率いるリーダーであって、妖狐全体のボスでは無さそう、だそうです。」
「おいおい。そうなの?というか、あなた達、どうやって意思を伝え合っている?」
「あぁパーティー内だけの念話という連絡手段ですよ。そこはあまり突っ込まないでほしいんですが、、、」
「そ、そう。あなた達は不思議なパーティーだよね。」
「それで、考察の続きですが、500匹の群れを率いるリーダーに指示を出す”王”がいるというのがビルの推測です。」
「それは、、、もう、人間の軍の体制ですな。」
カミィラさんが珍しく、そう声に出した。
「そうですね。俺達が対応した2500匹の群れが一つの軍だとすると、後方にはもっと沢山、万単位の妖狐がいるという可能性が、、、」
「そう考えるのが妥当よね。しかし、そんな大群の食料はどうしているんだろう?」
「おそらく、エルトラン湖に異常繁殖した魚やここより北に広がっている森の小動物が奴らの腹を満たしていたんだと思います。しかしそれも限界なのかと思いますよ。」
「なるほど。この湿地帯の西や北西側はキョクロプス砂漠で、木々も小動物も少ない。そうなると、ここより北へか東に広がっていくしかない、と?」
「ええ。王都付近にも魔物が出没していると噂で聞きました。何らかの影響が出ているものとおもいます。ですが、それはともかく、このままだとハイファーの街も巻き込まれるのは時間の問題でしょう。」
「ふぅむ、ハイファー付近には畑もあるしハイファーから先にも森が広がっている。そうか、食べ物ね、、、」
「多分、すぐにでも全群で向かってきてもおかしくない状況ですね。」
「人間同士の戦争と違って、奴らは帰る場所もなく腹をすかせて押し寄せてくるのか。やばいじゃないの、、、街の住人に避難してもらう時間もない?」
「奴ら個々の攻撃力は大したことはないので、街の壁で充分防御できます。ですが、守りきった後、街に食料難の問題が発生するでしょう。」
「このまま、ここから逃げて街に籠もっても悪手ということなのね。」
「はい、おそらくは。で、このビルからの提案が一つあります。」
「、、、聞かせてくれますか?」
バーニーさんは、俺に向かってにっこりと微笑むが、内心穏やかじゃないだろうな。
俺は、ハイドを介して策を提案する。
「そこに大きな土壁が有るでしょう?あれは、ビルが魔術で作り上げたものですが、これをこの場所にあと三つ、ここを囲むように四方に用意します。砦を作ると思ってください。そして、この砦内に餌といくつもの罠を用意して砦全体を罠とします。もちろん、無人とします。我々は、もう少し東に移動して、同じ様に砦を作って迎撃体制を整えます。」
「大規模な罠もあったもんだね。しかし、そんなことができるの?いや、できるからこその提案ね?」
「できますよ。全部ビルの仕事になりますけど。この罠で5000〜10000匹を討伐できれば御の字だそうです。先程までのやつらは、我々を過小評価していましたが、やつらに王がいるなら今後そうはいかないでしょう。ならば、腹を空かせてる奴らの本能を刺激して、罠に嵌めます。ただ、通常個体はこの罠で数を減らせますが、リーダークラスには効かないでしょうね。しかもそのリーダークラスの妖狐は、魔術を無効化する眼力を持っているようです。なので、リーダークラスとの戦い方は、それを踏まえた冒険者なりの戦い方で良いと思います。」
一気に俺の考えを説明したハイドが、深呼吸をする。
「つまり、砦罠で妖狐の大半を始末したあとは、リーダークラスとの戦いになる?」
「そうですね。こちらの冒険者の数も限られていますし、万を超える妖狐の大群なんかを相手にはできないですよ。なので、雑魚で体力を消耗しないためにも、ビルがそういった罠をいくつも作っておくそうです。」
「いやはや、頼もしいというか末恐ろしいというか、、、」
バーニーさんはチラッと俺を見た。
(まぁちょっとやり過ぎ感はあるよな。)
「バーニーさんにお願いしたいのは、もう一つ作る砦の死守ですね。で、我々は、森の方に向かって敵本陣を迂回し、奴らの後方から隙をついて王を倒します。いや、倒せなくても指揮系統を混乱させれば、数が多いただの魔獣になります。そして罠による雑魚の殲滅後、我々の反撃開始となります。」
「ふうむ、そんなに思い通りにいく?」
「ご心配はごもっともです。ですが、他に対応のしようがないと、、、あ、あと、奴らどういう仕組みかわかりませんが、こちらの感知範囲を逆感知できるようで、今もビルの感知範囲のギリギリに居て、こちらの様子を伺っているらしいです。」
「戦況としては、ここは奴らの縄張り。つまり地の利は奴らにあり、なのね。」
『縄張り、、、そうか、なんとなく解った気がする。ハイド、バーニーさんに伝えてくれ。』
俺は、なおもハイドに念話を送り、俺の考察を話してもらう。
「ビルによると、この湿地帯の地面にある水。この水を利用してこちらの動きを読んでいるかも知れないと言うのですが、、、」
「なるほど。奴らの王かリーダーかは判らないけど、そういう能力があっても不思議ではないかな。これまた水属性の魔物の特性か能力かは判らないけど、、、」
「で、あれば尚更、北側の森を通って、奴らの王の近くまで近づくことは可能だと思いますね。」
「いや、けど、その王ってのが高い知能を兼ね備えているのなら、貴方達の森からの奇襲を想定しているかもよ?」
「なんとかする、らしいです。仮に我々が王の討伐失敗となっても、砦罠でだいぶ数を減らせるでしょうから、奴らが群れを再構築している間に冒険者の方々による王討伐を編成するとか対応が可能かと思いますよ。」
「そこまで考えているのね。全く、私の仕事が無くなっちゃうじゃないの。あっはっは〜!」
陽気なバーニーさんがそう言い放つ。
「お嬢様、笑い事ではありませんぞ。」
「じぃは、硬すぎるよね。こんな話し、笑ってでもいなけりゃ平常心でいられないって。しかしまぁ、貴方達の策、大体了解したよ。奴らの王は、貴方達に任せた。でも無茶はしないで無事に帰還してほしい。」
「わかってますよ。リーダークラスの妖狐討伐は任せましたよ。さて、ビルよ。いっちょ始めるか!」
俺は、OKサインで答える。
「っていうか、俺は何すればいい?」
(ガク、、、おいおい、、、)
「ハイド君は、このカミィラと一緒に他の冒険者達に説明を頼んで良いかな?今、交代で周辺の警戒をしているから、彼らが休憩で戻って来た時にでも。」
「はい。そういうことなら。」
そうして、俺は砦罠作りに大忙しとなる。
エルトは矢の補充で、ハイドとハイリンは、冒険者さん達に俺の作戦を説明する手筈となった。
タンタは、約1500匹の妖狐の死体処理で徹夜するようだ。
タンタ曰く、
「この大きな二匹の素材は、惚れ惚れするなぁ。一匹の毛皮は火で多少傷んでいるけど、そういう所は除いてでも大きな毛皮になるし、もう一匹のハイドが首を落とした方は、また見事な状態だし。」
と、意外にもテンションが高かった。




