鎧、仲間が増える
『師匠〜、どうしましょう?』
『それは、ハイドに聞くべきだが、、、俺はこいつら、一緒でもいいと思っている。』
『何か、考えでも有るのか?』
『あぁ、少しな。獣人の能力ってのは、これから先の旅に役に立つと思うぞ。それにせっかく利益度外視でこう言っているんだ。仲間にしてやろうぜ。』
そう。
エルトに会うまで、あんなに利益重視だったタンタが、ここまで言っているんだ。
(っていうか、ここまで言わしめるエルトの能力がエグいけどな。)
『俺は、別に構わないが。』
と、チラッとハイリンの様子を伺うハイド。
『僕は、反対ですよ。こいつの魂胆は金でしょう?僕達のお金をくすねようって腹では?』
『ふーむ、なら、この今回の妖狐討伐で試してみようか。』
『あぁ、ビルに任せるわ。いいな、ハイリン。』
ハイリンがしぶしぶながらも頷く。
『エルト。タンタに伝えてくれ。』
『はい。』
エルトが俺の代弁をタンタに告げる。
「タンタさん。では、妖狐討伐の同行をお願いします。」
「にゃ〜!」
タンタと10匹の猫が感激の雄叫び?をあげる。
(よっぽど嬉しいのか?)
「ただし!」
エルトの迫力ある条件出しがタンタ達を瞬時にビビらせる。
「にゃぁ、、、」
「ただし、ハイドさん、ハイリン、そして私の師匠であるビルハインドさん。みんな、大事な仲間です。喧嘩はダメ。」
「わかったにゃぁ。」
(こいつ、たまに語尾に、”にゃ”がつくのか、、、緊張している?)
などと、俺の頭にどうでもいい感想がよぎる。
「まずは、この妖狐討伐での働きを見せてください。そして、少しでも私達を困らせるようなことがあれば、それまでです。」
「き、肝に銘じますです。」
「細かい事は、追々お聞きしますが、先ずは、自己紹介です。この仔たちのお名前は?」
ふぅっとタンタは気を抜いて、安心したようだ。
どんな無理難題の条件を出されるのか、相当ビビってたんだろう。
「えと、こっちの縞柄の五匹がア組と言って、アール、アイル、アウル、アエル、アオルです。で、こっちの黒っぽい五匹がメ゙組で、メラル、メリル、メルル、メレル、メロルです。そして、ワタクシ、タンタ。この10匹のリーダーで、且つテイマーとしてスライムを二匹、使役しております。」
(なに?ア組、メ゙組にスライムだと?こいつら、獣人族の間で有名な”11匹の猫集団”じゃないか!)
「では、タンタさん。いえ、たっちゃん、よろしくお願いします。」
「た、た、たっちゃ、ちゃ、ちゃ、、、」
(ほわ!エルト、やるなぁ。)
たっちゃんと呼ばれたタンタは、思考停止しているようだ。
「たっちゃん、、、うひょ〜!みんな聞いたか!エ、エルト様に”たっちゃん”って、呼ばれたぞ!」
それがよっぽど嬉しかったのか、もうそのあとは、にゃぁにゃぁと大混乱の猫たち。
そして、この猫たちは踊るのも好きなのか、その場でラインダンスを始める始末。
(なぜ、ラインダンス、、、)
11匹の猫集団。五年ほど前になるが、魔族領を荒らしに荒らし、ふっと姿を消したお尋ね者集団。
(人間の領域の、しかもこんな北の地方まで流れて来たのか?こいつら、魔族にとっちゃぁ犯罪グループだが、人間社会に上手く溶け込んでいるみたいだな。)
俺は、俺と同じく魔族から追われているという似た境遇から、俄然この集団に親近感が湧いた。
「あ、そうそう。昨日の妖狐の素材をこちらにご用意しておりますよ。」
そういって、タンタに皆ついて行く。
背の低い茂みの中の開けた場所に馬車が一台。
「馬車を持ってきていたのか?」
「ふ、色々説明したいが、まずは荷台いっぱいの妖狐の毛皮を見てくれ。あと、食用に加工した妖狐の肉な。」
馬車の荷台には、その二種類が山積みになっていた。
『ハイド、こいつら凄くないか?』
『あぁ、始末屋とも言うだけあって、仕事はきっちりするんだけどな。まさか、一晩で200匹を処理しちゃうとはな。』
「っていうか。このまま妖狐討伐に行くのか?これ邪魔だろう?」
と、ハイドがタンタに言うが、、、
「まぁそこはなんとかしろ。どうせ何か方法をもっているんだろ?依頼を俺様にした時、運搬不要って言ってたじゃん?」
『中々、鋭いやつじゃないか?俺の次元収納のことをハイドから説明してやってくれ。』
『そうか?わかった。』
「タンタ、昨日もこの200匹を出しただろ?あれが次元収納ってやつで、この白騎士風のビルハインドの能力なんだ。」
と、説明してもらっている間に馬車の荷台に積んでいた素材の収納は完了した。
「すげー!一瞬か!」
「俺も最初に見た時は、度肝を抜かれたぜ。」
『ハイドに質問。この食用加工された妖狐の肉は、本当に人間が食べても大丈夫なのか?』
『あぁ問題はないが、そんなには美味しくないんだ。』
傍から見て、俺とハイドの無言での会話は、目配せで行っている。
それを不審に思ったかどうかは解らないが、タンタが衝撃の事実を告げる。
「おっと、言いたいことが有る。理由はわからんが、こいつら食用部分が妙に少なくってな。足のモモ部分だけを加工した。」
(なんで解ったんだ?肉の話をしていたこと、、、)
「え?そうなのか?いつもならもう少し食べられる部位が有ったはずだが?」
「まず、胴は肉が少なかった。つまり、かなり痩せ細っていた。そして、足のモモ以外の肉には変な匂いがしたから処分した。」
「変な匂い?」
「あぁ、薬品なのか毒なのかわからないが、あんなもん食べたらどんな異常をきたすかわからんからな。」
『ほう、さすが獣人だな。その匂いによる判別は信用してもいいな。しかし、その薬品のような匂いってのが気になる。異常繁殖の要因だろうし。』
『その考えはわかる。』
ハイドは少し考えて、タンタに告げる。
「よし、タンタ。その話は信用するとして、つぎ、同じような匂いを感じたら教えてくれ。ギルドからの依頼の一つで、この妖狐の異常繁殖の原因を調べるってのも目的としてあるんだ。」
「お?おぅ。わかった。で、それはともかく、こいつらが俺様が使役しているスライムだ。」
そういうと、タンタは片手の指でパチンと鳴らした。
(手は、猫のものではなく人間の手なんだな。少し毛深いが。)
などと、どうでもいいことを考える俺。
しかし、次の瞬間、驚きに変わる。
馬車の下から、二匹の青いスライムがスポーンっと這い出してきた。
「ライムとライミだ。あと、こっちの馬がカユマだ。これが俺様のキャラバンだ。」
ライムとライミ。スライムしてはどでかい。
「タンタよ。えらくどでかいスライムだな。普通のスライムってこんくらいだろう?」
ハイドが手で抱えるジェスチャーをする。
そう。一抱えのそれくらいが普通のスライムの大きさだろう。
タンタの使役するスライムは、人間よりも大きい。
「そりゃ、成長しているからな。こいつらとは10年以上の付き合いだからよ。」
(スライムって成長するんだ。そんなの聞いたことがないが、、、)
「なぁタンタ。このスライムはどういった役目なんだ?テイマーならもっと強い魔物をテイムするもんじゃないのか?」
「俺様は、冒険者じゃないぞ。戦闘はしないっつてんだろが。」
「あ、それもそうか。でも、スライムって、、、」
「わかったわかった。こいつらの役割はあとでゆっくり教えてやるよ。」
タンタがスライムになにか指示をしたのか、二匹はまた馬車の下に潜っていった。
「妖狐の縄張りは、まだ先だろ?馬車に乗っていこうぜ。」
なぜかご機嫌なタンタが、馬車での移動を勧めてくる。
(何かあるのか?)
俺は、一応の警戒をする。
「ささ、エルト様からどうぞどうぞ〜」
エルトにだけ態度を豹変させるタンタ。
馬車には特に変な細工もないし、他に生体感知もない。
俺は、エルトにうなずき、馬車へ乗ってもいいと合図を出す。
「はい、では、お邪魔しま、、す?あれ?この馬車、、、なんだか?」
エルトのその言葉に反応してか、タンタがニヤリと笑っている。
ただ、笑っているだけなので余計に気色悪い。
(なんなんだ、こいつは、、、)
「どうしたんだ?エルトちゃん?馬車がなんだって?」
「いえ、この馬車、乗り心地がなんだかふわっとしているような、、、」
エルトのそのふわっとしたコメントにも、タンタはニヤリとして何も言わない。
「あん?どういう意味、、、」
エルトに続いて、ハイドが馬車に乗り込む。
「ん?なんだ?ほんとだ。ふわっと感?」
ハイドが声をもらす。
続いて、ハイリン、俺と乗り込んでみる。
「確かに、乗り心地がいいような?」
『ハイリンに同意。同意なんだが、、、なんなの?』
最後に猫10匹が乗ってくる。
御者台にタンタが乗って、馬車を出発させた。
「ほれ、カユマ、行くぞ!」
こんなにも荷台に乗っているにもかかわらず、馬車はスーっと動き出す。
「!!」
そして、猫以外の全員が驚く。
「どうだ?揺れない、ガタガタいわない、座り心地重視の俺様自慢の猫馬車だぞ。」
「たっちゃん、この馬車、どうなっているの?」
「さすがのエルト様も驚きですか?これがライムとライミの役割の一つですよ。」
『なるほど、多分だがスライムが浮遊魔術を使って、馬車を僅かに浮かせている?』
『へぇ〜』
全員が俺の推理に納得したようだ。
「おい、タンタ。スライムが浮遊魔術を使っているのか?」
「なんだよ。もう解っちゃったのか。つまらん。そうだ、ハイドの言う通りだ。ただ、スライムは浮かすだけだから、馬のカユマで引っ張る必要があるんだ。だけど、カユマにしても浮いてる荷台を引っ張るだけだから、普通の馬車よりも楽なはずだ。」
(猫馬車?というよりスライム馬車なんじゃぁ?)




