鎧、新たな人物?と出会う
『まぁ、俺の思い過ごしかも知れんしな。ただ、この地域の南の妖狐の異変に関して言えば、放置は危険だな。』
『師匠。その大精霊の話ですが、私は初めて聞きました。どこで知ったんですか?』
『それはな。2000年前のとある人物が残したと思われる手記だ。』
(ということにしておこう。キョウカのことやエルフが人間を利用した話など、ここで言えないしな。)
『は!まさか、キキョウか!』
『ハイド、正解。な?キキョウについて調べたくなって来ただろう?』
『確かに、、、』
『兄さん、これ、物証が出た時点でギルドに報告すべきですよ!』
『物証って、言うが、んな簡単に入手できないって。』
『そ、それもそうですね。』
(ん?ちょっと待て。もしかして、この街で例の魔石を入手したのも偶然ではない?俺、誰かの策謀に嵌っている?魔石は関係がないと思いたいが、、、)
どうも、嫌な予感がしてならない。
(なんだか、まだ魔族に追われている?いや、流石にそれはないか?)
『そもそもその話をどう説明するんだ?』
『えっと、、、ビルさん、その手記は、お持ちでは無いですよね?』
俺は、首を横に振る。
(無いものは出せない。)
『やっぱり、、、その手記があれば、とは思ったんですが。他には、どんなことが書かれていたんですか?』
なおも聞いてくるハイリン。
『すまないが、、、』
『いえ、無いものねだりしてすいません。』
(謎の薬品といい魔石といい。そして、このタイミングでキョウカがキキョウの記録を俺に告げてくる。あれ?まさか。いや、やはりありえるか。キキョウがまだ生きているのなら、魔族ではなくキキョウが企てている可能性が?目的はわからないが、キキョウはエルフ、しかもハイエルフという存在なら、あるいは。)
憶測が憶測を呼ぶ。
俺がそんなループに嵌っている時、ハイドが席を立ち、俺達に言い放った。
「はい、討論は終わり。今、これ以上、考えたって何も急にわからないし、変わらないさ。俺達がすべき事を先ずはやっていこうぜ。」
『そ、そうだな。ハイドのそのあっさりさも大事かもな。』
『お?何だ?喧嘩売ってんのか?』
『はっはっは。感心したつもりだったんだが、喧嘩するなら俺が勝つぞ。』
『言うじゃねぇか。あとで決着つけるか?』
『もう、二人ともやめてください。子供ですか!』
ハイリンの仲裁で俺とハイドの押し問答は終了。
(と、言っても、ハイドはニヤけてるし、俺も楽しいからの煽りだし、本気じゃないことぐらいは、ハイリンもわかっているだろう。)
ただただ、話を進めるための仲裁なのだろう。
「んじゃ、補給は頼むな。ハイリン、エルトちゃん。」
「はいはい、兄さんは街の外で派手にやっちゃ駄目だよ。」
「わかったって、じゃぁ、ビルさんや。参ろうかぁ。」
『どこのお偉いさんだよ。ハイリン、エルトを頼む。エルト、街を楽しんでくれ。これは、君のお金だ。自由に使って良いから。』
俺は、金貨が入った袋をエルトに渡した。
『はい、師匠。ありがとうございます。』
昨日、チェストを売った代金は、エルトに渡した分を除くと、1日2日過ごす分のみとなった。
(魔石のせいだが、まぁ盗賊から奪った金貨が多少あるから、なんとかなるだろう。)
俺とハイドは、ハイリン達と別れて街の外へ出るために門の方へ向かっている。
『ビル、少し前に俺達がハイファーに向かう理由の一つとして、仲間を集めるって話をしただろ。』
『あぁ、覚えている。なんだ?冒険者ギルドで集めるんじゃないのか?』
『ん、いや、戦力的には、俺とエルトちゃん、それにビルの魔術もあるし、問題ないと思う。ただ、サポート役として、一人知り合いを引き込もうと思ってな。』
『ほぅ。で?』
『そいつは、現金主義なやつでな。仕事はできるが、依頼した事の他は一切しない。しかし、今回のような多数の魔物討伐の場合はメリットも大きいんだ。』
『どんなメリットがあるんだ?』
『まずは、討伐した魔物の始末だな。血抜きから皮剥ぎまで全部任せられる。あと、運搬や罠解除に長けているが、今回の依頼に罠は無いだろうし、運搬はビルに頼ろうかと思ってな。』
『あぁ、次元収納な。いいぜ。討伐した状態で街に持って返って、そういう業者に依頼するもんだと思っていたが、現地で解体までする、ということだな。』
『ああ。ギルドの情報じゃぁ、かなりの数の討伐が見込めるからな。血抜きだけでも一苦労なのさ。運搬に至っては、、、』
『了解した。それで?そいつを仲間に入れるデメリットか何かあるのか?』
『鋭いな。そう、二つほど問題がある。一つは、ハイリンと相性が悪い。』
『え?なんで?』
『さぁなぁ、俺にもよくわからないんだ。』
『そうなんだ。』
『で、もう一つは、依頼料をふっかけてくる。そいつを入れて五人となるわけだが、ギルドからの報酬を五等分ってわけには、いかんだろうな。そいつは半分を要求してくるだろう。』
『そうか。まぁ俺とエルトで四割はもらい過ぎだから、二割でいいぞ。俺達の二割をそいつに上乗せしてやれば?』
『お?いいのか?、、、いや、どちらかと言うと、俺とハイリンで四割の方がもらい過ぎなかも。ん〜、最初の交渉で、そいつに四割。俺とハイリンで三割、ビルとエルトで三割としようか。』
『ま、それで納得しないんだったら、俺が何か出すぞ。宝石を少しばかり持っているから。』
(盗賊からいただいた、この役に立ちそうにない宝石や装飾品は、使えるときに使うのが良いだろう。)
『じゃぁ、街の外へ出る前に、そいつんトコに寄っていこうか。付いてきてくれ。』
『同行は良いが、こんなナリで行っていいのか?警戒されないか?』
『いや、いいんだ。返ってビルみたいな戦士風のメンバーが居るっていう方が自然だと思うぞ。ま、それだけ危険ってことを伝えることにもなる。今回の妖狐については、やつも危険度を知っているだろうからな。ビルの姿を見れば、少しは安心して依頼を受けてくれるんじゃないかな?』
『そいつは、あとで詐欺って言われないか?』
『はは、大丈夫だろう。依頼を受ける受けないは自分で決めたことだし、それを他人に押し付けるようなことはしないやつだから。そもそも、ビルは違った意味で詐欺だけど、この依頼達成には必要だからよ。』
(けなすのか、頼りにするのか、どっちかにしてほしいなぁ。)
『ほれ、こっちだ。』
街の外への門がかなり近くなってきたところで、メインストリートから外れて、更に奥ばった住宅街まで入り込んできた。
人影もなく簡素な住宅が主で、視界はあるハズなんだが、すぐ近くの城壁とでも言うような高さのある壁のせいで、圧迫感が半端ない。
『なぁ、ハイド。そいつは、ここに住んでいるのか?』
『ん〜、住んでるっつーか、棲み着いているっつーか。』
そして、さらに、もう家屋というには程遠いスラムのようなところまでやってきた。
『此処らへんに居てるやつらは、街の一般人からはみ出し者と言われているやつらばかりだ。』
『ま、どこの種族でもそういうのがあるか、、、』
『種族?』
『あ、いや。どこの街でもっていう意味で、、、』
『ビルは、勘がいいな。そう、ここは、まっとうな人間でない奴の溜まり場なんだ。』
(俺は、別になんとも思っていなかったんだが、、、)
『今から会うやつ、半分は人間じゃない。』
ハイドは、そう言うと大声で叫んだ。
「タンタ〜!居るかぁ?」
しばらくすると、どこからともなく返事が返ってきた。
「よう。久しぶりじゃん。しかし、お前の後ろに居るやつはなんだ?俺様を捕まえにでも来たのか?」
声だけで姿を現さないタンタなる人物、、、
『すまん、ビル。俺の予想よりも用心深いやつだったみたいだ。いつもなら、パッと出てくるんだが。』
『そうか、なら、やはりこいつの出番だな。』
俺は、碧い宝石を一つ、次元収納から取り出してハイドに渡した。
『すまんな。この埋め合わせはいつか必ず。』
「ほら、姿を現せ。そしたら、これをやるぞ。」
どこかに居るタンタに見えるように、ハイドが宝石を頭上に掲げる。
「な!!」
っと、言う声がしたかと思うと、どこからともなくそいつが降ってきた。
そいつの姿を確認する間もなく、ハイドの手から宝石を奪い取り、そして、少し離れたところにある建物の影に隠れた。
「これは、タンザナイトじゃないか!しかも大粒、、、なんで万年金欠のお前なんかが持っているんだよ!」
「失礼なやつだなぁ。持ってちゃ悪いかよ、、、」
と、ハイドが文句を言っているが、俺の方を向いた顔が少しひきつっていた。
『って、ビル。あれ、むっちゃレアな宝石?』
『金貨でもないから、使い道が限定される品物だ。あまり気にするな。』
『そ、そうか?ともかく、交渉してみる。』




