鎧、魔石を知る
「ダンナ、その前に。この魔石は、どったの?」
「ん?あぁ珍しいだろう?このハイファーの街で売ってたんだ。」
「いや、これ、こんなもの普通じゃないよ。」
「凄いだろ。俺もこんな魔石は初めて見たよ。ていうか、キョウカ。これ、なんの魔物の魔石か解るのか?」
「ん、ちょっと待って。ダンナの記憶をトレースするから。さっきまで外部からの情報はシャットアウトしてたからさ。ほうほう、エルトちゃん、魔術使えるようになったんだ。ほー、これは、魔術師というより付与術師だね。これまた珍しいけど。」
「付与術師か。なるほど、確かにそっちの言い方がしっくりくるな。」
「ダンナ。エルトちゃんにアドバイス。彼女が、もう精霊魔力を感知できているのなら、調節も可能なはず。人間の付与術師は自分の魔力を使うけど、精霊魔力はいたる所に居る小精霊から少しづつ分けてもらって集めてから付与することができるの。次は、その小精霊を感知する訓練かな。」
「おぉ。わかった。アドバイスをありがとうな。明日でも伝えておく、、、っていうか、キョウカって精霊魔術も会得しているんか!?」
「そうよ!驚いた?」
「あぁ、まだキョウカに関して、驚かされるとはな。ちなみにその精霊魔力付与は、魔力の備わっていないものへも付与可能なのか?」
「答えは、イエス!キョウカ様が作った、、、さっき話した剣や盾もその方法だよ。精霊は自然界の素だから、精霊と対話ができればそんなに難しいことではないわ。」
「いや、精霊と対話って、、、俺も精霊魔力は一応感知できるんだが、精霊の存在なんてわからないぞ。」
「まぁまぁ、ダンナならそのうち習得できそうだけどね。えーと、この魔石を買った店?うーん、怪しさ大爆発ね。」
キョウカは、俺の記憶をトレースしながら、顔をしかめる。
(いや、記憶のトレースって、俺のプライベートはどうなんの?)
「この店員もなんだかなぁ〜」
「あぁ高かったんだぜ。」
(金貨50枚が高いのか安いのかわからんけど。)
「金額じゃぁないんだよねぇ。この魔石の出どころが気になるわね。」
「魔石の出どころが?なにか問題なのか?」
「聞いて驚いてね。これ、さっき話しに出てた2000年前に滅ぼされた魔神キョクロプスの核の欠片だよ。」
「なんと!驚けと言われて驚くのは癪なんだが、マジか!」
「マジよ、マジ。っていうか、なんで癪なんよ。素直に驚けばいいのに、、、」
「そんなヤバいもん入手しちゃったけど、呪われたりしないか?」
「持ってるだけなら大丈夫だと思うけど。」
「そうか。しかし、まさかとは思うが、その欠片が全部集まったら魔神って復活しちゃうとか?」
「その可能性はない、とは言い切れないわね。でもね、その欠片がいくつか揃って術師が十数人がかりで数日間の時間をかけてでも儀式をしない限り復活はしない、と思う。」
「やけに具体的に知っているんだな。まるで見てきたかのように、、、まぁそんだけ大規模な儀式が必要ってのはわかった。」
「えぇっと、そうねぇ。キキョウ様は実際、その光景を見たのかも知れないわね。」
「例のトリセツってやつか。で、この魔石、処分したほうが良くないか?その方法とかもトリセツにあるのか?」
「処分は、できないと思う。一般的には封印ね。なにかに入れて封印した上で、地中深くとか湖の底とか、他者が入手できないように。まぁ今すぐじゃなくても、そのうちで良いと思う。」
「そうか。しかし、変なもん掴まされたなぁ。」
「それじゃ、トリセツチェックに戻るね。」
「あぁ頼む。できれば、この魔石の封印方法なんてのを見つけておいてくれ。」
「はーい。」
ここで今夜のキョウカとの会合が終わった。
窓の外を見ると、朝日が出そうな空となっていた。
(昔のエルトッキュ村のハイエルフ達、勇者たちのパーティー、そして現在の各地の異変。この2000年は、何も変化がなかったようだが、これから何かが始まるのか?あるいは、もう始まっているのか、、、?)
それは、あまり良い変化とは思えない。
俺は、今更ながらこの先の旅に不安を感じてしまった。
そうして、俺が鎧に取り込まれて八日目の朝が来たのだった。
「おぅ〜りゃぁ!!」
ダン!スパ!スパ!、、、バラバラバラ、、、
「わぁ〜」
ハイドにパチパチパチとエルトが拍手を送る。
「へへん、どうだ、俺の斬撃のスピードは!」
冒険者ギルドの訓練用広場にて、小気味の良い音を鳴らしてハイドが納刀する。
チン!
『ハイド、すごいな。』
ハイドは、敵に見立てた五つの的を例の直剣でバラバラにしてみせた。
その速さは、たしかに結構強い戦士に位置づけられるのだろう。
「いやぁこそれにしても、この装備と鞘のおかげで、俺の速さが増したわ。」
『グリーブ部には、身軽に動ける俊敏の宝珠を埋め込んだし、その鞘には俺が重さ軽減の空間属性を付与しているしな。』
『あぁ、魔術によるバフ効果って馬鹿にできないな。』
『ま、それは、元々のハイドの身体能力の高さの成せる技なんだがな。腕のガントレットには、火属性の効果upもあるから俊敏さも合わさって、相手へのダメージは相当なもんだと思うぞ。』
『そ、そうか。それならかなりの大物でも怖いもんなしだな。』
ハイドなりに手応えを感じているんだろう。
鞘ごと直剣を前に構え、目をつむり、イメージトレーニングを続けている。
『さて、次はエルトちゃんの弓の精度と威力を確認しようか?』
『おっと、そうだな。エルト?』
『はい!では、お見せしますね。えと、まずは普通の矢でいいですよね?』
『ん?あぁ、、、普通ので。』
(普通って何だ?)
弓の訓練用の的をギルドの職員さんたちが用意してくれた。
その数、10個。
「それじゃぁ行きますよぉ〜」
エルトが広場の中央まで行き、矢を番える。
矢を番えている右手には、一本番えながらも指で数本を既に準備している。
シュッ!っと音がしたかと思うと、タン!タ、タタタン!と音が鳴り響く。
「「矢継ぎ早!」」
ハイドとハイリンが声を揃えて驚く。
しかも5ヶ所全てに的中。
「次、属性付与行きます!」
『え?なにぃ!ちょ、、、』
俺は静止しようとしたが、間に合うわけもなく。
シュバババ!ボン!ボン!
放たれた火属性付きと思われる矢は、先程とは別の的を大破させた。
「すげ〜!」
ハイドの感嘆の声はともかく、、、
『エルト!やり過ぎぃ〜』
『あ、駄目でした?』
『周りを見ろ。ギルドの人達がビビっちまってるじゃないか。』
「あ!すいません。驚かせてしまってごめんなさい、、、」
ペコリとエルトが職員さんたちにお辞儀する。
『命中したからいいけど、ここ、一応街中だから、火はやめとこうな。』
『ごめんなさい、師匠、、、』
「ビルよぉ。エルトちゃん、鍛冶師見習い?冗談じゃねぇ。冒険者として一人前の腕じゃねぇか。」
『ハイド、念話で頼む。しかし、俺もびっくりした。』
『威力も凄いし、命中率も100%なんて、、、』
ハイリンが感嘆の声をあげる。
(まぁエルフだしな、とは言えない。しかし、いつの間に火属性付与を扱えるようになったんだか、、、)
『皆さん、ありがとうございま〜す。』
広場の中央から俺達観客に手を振ってるエルト。
見た目は15歳くらいなのに、その存在感には恐れ入る。
「エルトちゃん、今回、一番活躍しそうだね。」
「ハイリンもそう思うか。」
二人は念話も忘れて、頷き合う。
(まぁ俺もその言葉に異論はないが、、、)
『これなら前衛の俺、後衛のエルトちゃんが攻撃担当だな。ビルが後衛守備担当ってことになるか。』
『そうだな。俺は、ハイドみたいに素早く動けないから、開幕魔術攻撃してからあとは支援と防御主体に立ち回ろう。』
『そうだな。って、いうか、ビルの持ってるその木製の盾ももしかして普通じゃないのか?』
『ハイド、わかってきたじゃないか。こいつは、木製だが土属性付与で金属並の硬さに仕上げている。』
『だろうとは、思ったよ。二人の見た目からして予想を裏切るんだな。で、その盾、まだなにかあるんだろ?』
『ほぅ、鋭いな。どうやって気がついたのか?そう、こいつには土塊という魔術を放てる仕様とした。俺自身が放つ魔術と合わせて、同時に2個も放てるわけだ。』
『なるほど。』
『相手が攻撃してきた時、盾で防御しつつ魔術で土塊を放って撃破!ってのが理想だな。』
『初見殺しってやつか。』
『そうだ。まぁそういう初見殺し的な盾をもういくつか用意するつもりだ。』




