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鎧、買い物をする

俺は、店の前にドンっとチェストを出した。

「うわぉ!いつもながら、どっから出してくんだよ。っと、これは、チェストか。」

『そうだ。』

『随分と変わった形だな。』

(だろうな。何せエルフの村での頂き物だ。エルフのセンスに期待したいが。)


『こいつの特徴は、いくつかある。まず素材がすごい。何と神樹と呼ばれる樹を材料としている。防虫対策としては完璧だな。』

『おいおい、ほんとかよ。そんなしろもの見たこと無いぞ。』

『ふっ、もう一つ特徴がある。それは、火属性が備わっている。家の火災ぐらいでは、中身もこいつ自身も燃え尽きることはない。』

『まじかよ。それがホントなら、ものすごい価値があるんじゃぁ?』

(火属性は、俺が付与したものだ。さて、いくらになるだろうか?)


『さぁハイド。腕の見せ所だ。高く売りつけてみてくれ。』

『いや、なんの腕だよ。俺、商人じゃないぞ、、、まったく、、、』

ハイドは、店に入る。

俺は、チェストとともに外で待機する。

「邪魔するでぇ。店主は居るか!」

(ぶつぶつ言う割には、サマになってんじゃねぇか、、、)


結果、ものすごく高く売れた。(と思う。)

金貨100枚!(これが妥当な金額なのかは、よくわかっていないが。)

店主いわく、デザインもよく質もいい。

多少使い古されているが、そこもまたいい。

火属性であるということも確認できたし、貴族にでも売れる。

とのことだった。

喜んで、良い値をつけてくれたのだろう。

『ふふ、これで当分、金に困らないな。感謝するぜ、ハイド。』

『いやいや、感謝するのはこっちの方だぜ。ハイリンの杖、良いものが有って良かったが、本当に良いのか?俺が買ったことにするって。実際、支払いは、ビルが売ったチェストの代金の一部、、、』

『交渉代理の報酬だ。気にするな。』

俺達は、ほくほく顔でアンティークの店から次の店へ向かっている。

(俺は、顔がないけどな。)


『それにしても、この杖。いい感じじゃないか?』

そう、ハイリンに贈り物としては、うってつけだ。

杖の先に小さいが黄色の宝珠がついている。

『あぁ、きっと喜ぶぜ。』

『あとな、この杖には魔力増幅の効果があるって、店主が言ってたろ?』

『具体的には、どういうことなんだ?』

『そうだなぁ。攻撃魔術なら威力が倍になるんじゃないか?』

『ほぉ!いや、でも、ハイリンはヒーラーだけど?』

『そうだな。だから、今回の受注した依頼にはちょうどいいんじゃないか?解毒魔術や回復魔術使用時の消費魔力が半分で済む、と考えれば。』

『そういうことか!なるほど。パーティー全体に恩恵があるわけだな。』

『そうだ。まぁ明日にでも試してもらおうか。さて、次は、普通の武具屋へ行こう。』

『おう、こっちだ。』


ハイドに案内された武具屋”ワーフェ”。

『ここで何を買うんだ?あ、ビルの武器か。』

『あのな、ハイド。お前さん、あの剣一本で討伐に向かうつもりなのか?』

『あ〜いや、俺は軽装の方がいいんだ。俊敏さ重視の軽戦士だからな。』

『そうか?いやしかし、とは言えだ。魔物が魔術を使わないとは限らない。ゴブリンなんかでも魔術を使えないまでも、それなりに石を投げてきたり、弓を扱うやつも居る。何も無しでは、危険すぎる。』

『まぁ、そのとおりなんだけどな。』

『そういうことで、ここで安い防具を購入し、俺の魔術付与で多少は良いものにしてやる。』

『いやぁ、なんか、あんたに頼ってばかりなんだが、、、』

『遠慮はいらない。昼間も言ったが、これは俺の投資だ。趣味と言ってもいい。それにだ、魔術付与で良いものにしてやるとは言ったが、要は魔術付与の練習だからな。実験台になってもらうという意味で、気にしなくてもいいぞ。』

『そ、そうなのか?うーん?』


『まぁ、そんなに考えなくてもいいだろう?戦闘になったらハイドに頼らざるをえないからな。そのハイドを事前に守る意味はある。つまり、これは、自分たちのためだ。』

『わ、わかったよ。冒険者たるもの、自身が資本だから、、、いや、まぁ、あれだ、ビルが慎重派ってのは、よく理解した。』

『どれだけ、慎重になっても、完全に安全は保証されないけどな。たった一つの命だ。大事に行こうぜ。』

『はいはい。』


俺達は、武具屋に入り、隅から隅まで見分した。

(ハイドは、軽戦士。なら、動きにくくなる金属製より革製の防具だな。これとこれ、あとこれもか。)

俺は、必要と思われる防具類をチョイスしてみた。


『ハイド、身体に合うものを選んでくれ。』

『ああ、わかった。』「店主、ちょっと試着するぜ。」

「はい、どうぞどうぞ。ご遠慮なく。お客様も冒険者で?」

「このナリで冒険者じゃなかったら、なんなんだよ。はい、これギルド証。少しまけてくれよな。」

「おっと、これは失礼しました。お気の済むまでお選びください。もちろん多少、サービスさせていただきますよ。」

『とはいっても、全部革製だから、そんなに値は張らないけどな。』

『いいんだよ。これは、ギルドの面目のためでもあるんだよ。それぞれの店がギルド証を見て割引をする。俺達冒険者は、ギルドと店に感謝する。店にしてもギルドからの客が増える。ギルドもその存在意義を保てる。そこに多少の利害関係は存在するが、みんなハッピーだろ?』

『そうか、なるほど。互助の仕組みか、、、』

『店もギルドも冒険者が居てこその存在だからな。良識のある冒険者であれば問題ないさ。』

『ん〜?では、その良識のない奴とは?』

『そういう輩は、ギルドから除名される。このギルド証は、ギルドが保証してくれている、という側面もあるからな。』

(なるほど、人間同士の争いを少なくするための工夫なんだな。)

『勉強になった。』

『あんたの国じゃぁ、ギルドがないのか?てか、どこの国の出身なんだ?』

『ずっと南の遠い国だ。それに、生まれは小さな村だしな。』(嘘ではない。)

『まぁ言いたくないなら良いけどよ。この仕組みは、この位の大きな街ならではだな。小さな村だと住人全員が顔見知りだから必要ないんだろうな。』


と、念話しながらもハイドは、自分の身体に合う防具を選んでいった。

肩から胸、腹まで覆うアーマー、腕の防具ガントレット、足の防具レッグアーマー。

全てレザースケイルと言われるアーマーだ。

戦士の動きを阻害することのないように、一枚ものの硬い革ではなく小さな革製の欠片を繋ぎ合わせたものだ。

魚の鱗と言われるスケイルは、金属製のものが強固で安全になるが、デメリットが多い。

重い、高価、うるさい。

(まぁ魔族には、鎧なんて不要な種族や、鎧の重さをものともしない種族もいるが、人間はどうなんだろうか?ちなみに俺も不思議と重さは感じない。)


さて、革製防具は、防御力は大したことはないが、小型の魔物の爪や牙なら充分なはずだ。

『三点セット割引とギルド証の割引で、意外と安かったな。』

『お得だろ?なんとか、俺の所持金でも買えたしな。』

『あぁ、そうだな。さて、宿に戻るか。』

(あとは、俺が属性付与をしてやれば良いわけだ。)


『ところで、ハイド?』

『何だ?』

『お前さん、宿の1階で用事があるんじゃないのか?』

『え?あ〜いやぁ、ハイリンがうるさいからなぁ。』

『日没まで、俺は、この街をブラつく。その間、二人で一緒に居た、ってことにしてやるが?』

『え?いいのかよ。』

『日が沈んだら宿に戻るから、それまで発散してくればいいさ。』

『やっほー、恩にきるぜ!じゃ、早速行ってくるわ。』

そう言って、ハイドは、人混みの中に消えた。


一人になった理由は、皆と一緒に食事なんかできないから、先に外で食べたことにするためだが、、、

日没前の街は、買い物客でごった返している。

(よし、少し街の声を集めてみるか。)

そうして、俺は、街を練り歩き、人々の話す内容を吟味していった。

多くは単なる噂でしか無いが、全く虚偽である内容と断定できないものもある。

それはともかく、魔族と人族の思考の差もあるが、人間というのは、なんと多様性をもった生き物か。

そう思わざるを得ない人間の街だった。

そして、日没。

しかし、街中はより一層賑やかになった気がした。

通常の店や市場は閉まったようだが、食堂や酒場などが騒ぐ客を飲み込んでいく。

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