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鎧、冒険者になる

(さすが、拠点たる街にある冒険者ギルドだな。立派だなぁ。)

『ビル、エルトちゃん、俺について来てくれ。ハイリンは、ルドルフを頼む。』

「はーい、ルドルフ、こっちだよ〜。」

馬車をギルドの裏手に回しに行くハイリンを除いて、俺達はギルドの建物の中に入っていく。


中は、これまた、冒険者の数の多いこと。

夕刻だからか、報告やら精算やらで、人がごった返していた。

『2人とも、こっちだ。ここに並んでいてくれ。俺は、別の窓口に用事があるんで少し離れるが、すぐに戻って来るから。』

ハイドは、そういって人混みの中に消えていった。


『し、師匠、すごい人間の多さですね。目が回りそうです。空気も悪いし。』

『大丈夫か。エルトは、こういうの初めてだもんな。』

そういや、門に入るとこから、エルトは周りをキョロキョロしていたな。

(こんな所どころか、人間の街中も初めてだろうしな。)


『はい、どこもかしこも初めて目にするものばかりで、、、』

『そもそも、このギルドって何かも知らないんじゃないのか?』

『はい、でも何となくわかりますよ。ハイリンに少し聞いていましたから。』

『そ、そうなのか?』

(馬車の中で、2人で会話していたのは、そういったことなのかな?)

俺達の列は、少しづつ進んでいるが、まだ、だいぶかかりそうだ。


しばらくして、ハイドが戻ってきた。

そして、ハイリンとも合流した。

「兄さん、お金は、引き出せました?」

「あぁ、大丈夫だ。当座を凌ぐぐらいはある。」

俺とエルトは、「?」顔だ。


『いやな、冒険者ギルドの預かり制度っていうのがあってな。受注した依頼に関係のない物品、お金、諸々を預かってくれるんだ。その情報をこのギルド証に記録しておけば、別の街のギルドでもお金だけは返してくれる仕組みなんだ。』

『あぁ、そうか。盗賊に全てを奪われても平気な顔をしていたのは、そういうワケか。』

『いや、平気な顔なんてしてないし、しかも、傷口広げようとしてるし、、、』


『ところで、この街の宿の相場ってどれくらいなんだ?』

『んと、宿は1人銀貨1枚、4人だから金貨1枚が必要だね。食事は、1食がその半分くらいかな。お酒を飲まなければ、、、』

チラッとハイドを見るハイリン。

(なんだ?ハイドに何かあるのか?)

『とりあえず、俺とエルトの数日分の費用だ。』

俺は、ハイドに金貨を数枚渡しておいた。

『おぅ、じゃ、預かっておく。宿の手配とか、任せてくれ。』


とか、言ってる間に、いや念話している間に、順番が来たようだ。

「今日は、どういったご用件でしょうか?」

多少、疲れの見える受付嬢?ギルド職員だが、そこはプロ。笑顔は絶やさない。

「この二人の冒険者登録と俺のパーティーへの登録。んで、こいつの受注。ついでに宿の紹介。」

ハイドが依頼票だろうか、洋皮紙を一枚を受付嬢に渡した。

「では、そちらのお二人は、こちらの登録用紙に名前と性別、年齢、あと保証人の情報を記載してください。そして、最後にココにチェックをお願いします。」

「ビル、エルトちゃん、ココのチェックは、免責事項だ。ギルドの依頼中に何があっても、、、例え死んでしまっても自己責任ってことな。」

(なるほどな。)


「えーと、ハイドさん。この依頼ですけど。」

受付嬢がハイドの持ってきた依頼票の内容を指差して、心配そうな顔をしている。

「この依頼、ただいま他のパーティーの方々も受注されていまして、、、」

「あぁ、知っている。帰ってきていないんだろ?」

「ええ、ですので、かなりの危険が伴うと予想されますが、大丈夫でしょうか?えと、その、新人二人を引き連れてでは、、、」

「あぁ、この二人は冒険者としては新人となるが、こっちは見た目通り結構強い。この娘は、こう見えて弓術と魔術が使えるんだ。」


俺達が受付の横で必要事項を記入している間にハイドが俺達を順に紹介する。

俺に関しては、見た目通りとしておいた方が話がスムーズなんだろう。

(さてと、あとは保証人の名前を書けば終わり。)

『ハイド、ここにハイドの名前を書けば良いのか?』

『あぁ、そうだ。まぁ身元保証って意味だが、俺が保証するしかないから。』

「では、お二人の登録とパーティー登録をしますね。しばらくお待ち下さい。」

そう言い残し、受付嬢は奥の部屋に入っていった。


『冒険者登録って案外簡単なのか?』

『いやいやビルよぉ、そうではないんだぜ。今回は、俺のギルド員としての功績と、臨時登録という手続きですんなりいっているが、最初に俺達が登録する時は、大変だったんだぜ。なんせ、保証人無しでの手続きだったからな。身辺調査に7日程かかったんだ。』

『保証人の有無で全然信用が違いますからね。』

と、ハイリン。

『そ、そうなのか。冒険者になるのも大変なんだな。』


そこへ、ギルドの受付嬢が戻ってきて、俺達にカードを渡してくる。

「お待たせいたしました。こちらがお二人のギルド員証です。大事に持っていてくださいね。ランク説明やギルドのルールに関して、、、」

「おっと、それは、俺から説明しておくから省略で。」

「そうですか。では、お願いいたしますね。そして、パーティー証をハイドさんにお渡しいたします。これに今回の依頼の受注情報も登録しております。お気をつけて現地へ向かってくださいね。あ、あと宿屋でしたね。これがギルドからの紹介状と宿屋のリストです。なにぶん混雑していますので、空室などの状況の確認は直接聞いていただけますか?」

「あぁ、わかった。ありがとな。さて、行くぞ。」

ハイドが受付嬢にウインクを飛ばしつつ、ギルドの外へ向かう。


(ほんと、登録もろもろは、あっさりしていたな。)

俺達は、混み合っていた場所から外へ出て、解放感を味わっていた。

『ふぅ』

『おつかれちゃん。』

エルトなんて、顔が青白くなってしまっている。

(あ、いや、この娘、もともと色白だった。)

『エルト、大丈夫か?』

『思った以上に疲れました。建物内に入っただけなのに、、、』

『ハイド、早めに宿屋を、、、』

『ああ、わかってるって。とはいってもなぁ。』


ハイドは、受付嬢からもらったリストを見て、怪訝な顔つきになる。

『少し聞くが、ビルから預かった金貨は、ほんとに使って良いのか?』

『あぁいいぜ、足りないならもっと出すぞ。』

盗賊から頂いた金品は、かなりある。

元はといえば、襲われた商隊から奪った金貨だ。

(気兼ねはするが、使っても問題なかろう。)

『いやな、少し、いい宿を選ばせてもらおうと思ってな。というのも、格安の宿は、もうどこも一杯だと思う。少し高めの宿も、この調子じゃぁ入れなさそうなんでな。』

『そうだな、それだけ冒険者が集まってきている、とういうことか?』

『あぁ。それで、高級といわないまでもそこそこ値がはるトコなら、空いてるんじゃないかと。それにそこには、俺の知り合いがいるしな。』

『兄さん、まさか、、、』


ぐいっとハイリンがハイドを睨んでいる。

なぜゆえに?

『ちょ、ハイリン、落ち着け。勘弁してくれ。何も言うな。俺も男だから。』

(ははーん、そういう宿か。)

『師匠、どういうことです?なぜ、ハイリンは怒った感じなんですか?』

『あとで説明する。というか、行けばわかるんじゃないか?』

『お?ビルの旦那はわかってるねぇ。あんたもどうだ?そんな鎧なんぞ脱いで楽しめば、、、』

『ハイドには悪いが俺は遠慮する。というか、遊んでいる暇はないと思うが。』

『ちぇ、わかったよ。でも、その宿なら多少情報も集められるから、そこにするぜ。』

『兄さん、、、』

(ほらぁハイリンがジト目になっているじゃないか。)

『ハイリン、遊ばないから。情報を集めるだけだから。』

『ハイド、宿はそこで良いとして、宿に着いた後に少し付き合ってもらえないか?ハイリンとエルトは、宿で二人の服やローブを仕上げてほしい。』

『俺は構わないぜ。すこーしだけ、宿の人間に挨拶させてくれれば。』

『はい、師匠。了解です。』

『二人して、どこに行くんですか?』

(ハイリンのジト目が止まらないな。)

『いや、街の土地勘がないからハイドに道案内を頼もうと思ってな。あちこちの店を回るつもりだ。』

『そうですか、、、なら、いいんですが、、、』

(ハイリン、相変わらずジト目なんだが、、、)

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