鎧、街に入る
「ハイドさん、ハイリンさん、少し早いですが、軽く昼食を摂ってください。といっても、水とパン、干し肉だけですけど。」
『よし、エルト。御者を代わろう。二人の世話を頼む。』
『あぁ、ありがたい。色々世話をかけるな。』
『そういえば、冒険者ランク?D?って言ってたな。良くは知らないんだが、どのくらいの実力なんだ?』
『ランクDのパーティーって言ったら、そうだなぁ。ワイバーンを一匹討伐できるって言えばわかるか?』
『でも、兄さん。二人だけじゃ無理だよね。』
『だからさ、ビルやエルトちゃんの実力次第じゃ、いけるんじゃないかと、、、パーティーバランスもいいし。』
『でもビルさんやエルトちゃんは、僕達と目指すものが違うし、手伝ってもらえるのは今回だけってことなら、考えても仕方ないでしょう?』
『そりゃそうなんだが、、、』
『そういえば、ギルドに登録する必要があるんだったか?』
『あぁ、臨時登録という手を使う。妖狐討伐の依頼を受注するための人数合わせ的に申請するのさ。俺は、個人でDランクを持っているから、そこは問題ない。が、ギルドの仕事を受注するには、人数の要件があってな。最低でも4人。』
『ほう、話からするとハイドは結構強いのか?』
『あ、いや、それほどでは、、、』
『いやいや、兄さん。盗賊に負けたこと、うやむやにするつもりですか?』
『うぅ、ハイリン、、、あんまり責めるなよぉ。言い訳をさせてほしい。盗賊が魔術をつ使うなんて思っていなかったんだって。』
『だから、それが考えが浅いっていうか、、、』
『まぁまぁ、ちょっといいか?あの盗賊の頭領は、確かに魔術を使って俺の罠を抜けてきた。俺も正直驚いたさ。』
『でも師匠。罠から抜けてくるやつがいるかも知れないって、私達におっしゃっていたじゃないですか。』
『そりゃ万が一のことは考えるさ。戦闘なんてしたことがないんだから、これでもかって策は練るさ。』
『ビルよぉ。そりゃ、才能なんじゃないのか?もったいないねぇ。ほんとに冒険者にならんか?』
『それは悪くない誘いなんだが、今の俺には、エルトを一人前にするという役目がある。この娘の村全員に託された形だからな。』
『そうかぁ、まぁ、あんたならいつでも冒険者になれるか。そん時は、俺を頼ってくれな。』
『あぁわかった。約束はできないけどな。』
『はは、予防線をここではるのか、、、まぁいいけどよ。』
(さて、今向かっているハイファーという街でやらなきゃならんことをまとめるか。)
水や食料物資の補充、ハイドの防具、ハイリンの杖、エルトとハイリンの服兼防具の準備。そしてギルドへの登録と南の妖狐討伐の受注と情報収集。
(こんなものかな。あとは、訓練をするっていってたな。)
「あ、見えてきましたよ!」
エルトがいち早く何かを見つけたようだ。
「壁?でしょうか。ものすごく大きいですが。」
まだ遠くの方だと思うが、街の城壁でも見えているんだろうか?
この辺は、木々も多くなっていて視界が遮られているというのに、、、
「エルトちゃんは、ものすごく目がいいのか?言われても俺にはまだ見えないぞ。」
(エルフだからかな、、、)
『エルトは、おそらく、この4人の中で一番、目がいいと思うぞ。あと周囲の風の変化にも敏感だったっけ?』
(そう、昨日、ハイリンの救助の声を俺より早く察知したしな。)
『それはそうと、ハイファーって大きな街なのか?』
『まぁそうだな。隣国との玄関口の街だしな。隣のフーエル公国と揉めた話なんかはないが、ムハインド王都への使者の行き来には、必ずここを通るから重要な拠点であることは間違いない。』
『そうか。なら、簡単には入れないのか?』
『一応審査があるが、俺のギルド証を見せればすんなり入れるぜ。もっとも多少並ぶことにはなるけどな。』
(ハイドのお陰で、簡単に入れるなら問題ないか。もっとも、こんなナリじゃぁ目立つからなぁ、俺は街中をあんまりウロウロできないかな。)
なんて、考えているうちにハイファーの城門?壁門?に着いた。
ハイファーの街の門の外に着いたはいいが、ずいぶんと想像と違った雰囲気だった。
『なんというか、俺達以外周囲に人が居ない?』
『おっかしいなぁ。以前来た時は、このあたりまで人が並んでたんだぜ。商人や冒険者があふれるほどに。』
『兄さん、ちょっと守衛の兵隊さんに事情を聞いてみましょうよ。』
『だな。よし、このまま門まで馬車を進めてくれ。』
俺達は、門の近くまで馬車を進めて、ハイドが門番の一人に話しかけている。
もう一人の門番が馬車まわりをチェックし、荷車の方を覗き込んできた。
俺達は、軽く会釈する。
そうして、「異常なーし!」と、門の方へ大声で叫ぶ。
ハイドが話しかけていた門番も「こっちも問題なし!」と合図を送っている。
重々しく、門が開く。
ハイドが馬車に戻ってきて、俺達に説明する。
『馬車を進めながら、説明するぞ。』
『やはり、兄さん、何かあったんですか?』
『うん、二つ問題が有ってな。』
『2つ?』
『まず、例の盗賊どものせいで、ハイファーと王都の行き来は、制限されているらしい。国の兵が動いて、討伐に向かったのが三日前。連絡が来るまでは、王都への往来は使者以外禁止らしい。』
『あぁ、それで。誰ともすれ違わなかったんだね。僕ら死にかけた原因だけど。もう1つは?』
『うむ、こっちの方が深刻だな。例の妖狐討伐に向かった冒険者パーティー3組が帰還していない。』
『帰ってきていない?ということは、、、』
『何かあったのは確かだ。それが魔物の大量発生、スタンビートの前兆ではないかと。そういうワケで、門の外には人はいないし、まだ日没前だがカンヌキで門を完全に閉めるらしい。』
『ほぇ、良かったねぇ、完全に閉まる前に街に入れて。』
『事情はわかったが、ハイド。どうするんだ、その妖狐討伐。』
『ははん、そんなことくらいじゃ諦めないぜ。ただ、冒険者ギルドでちょっとばかり情報を集めて、対策を立ててからにするさ。ってなワケで、このままギルドに向かう。そこで、宿屋も斡旋してもらおう。』
『久しぶりの宿だね。』
『ハイリン。』
『はい。ビルさん、なんですか?』
『お前さんの兄さんは、浅慮ってワケではなさそうなんだが?』
『そうですねぇ、ビルさんの影響が出てるんじゃないですか?』
『こらこら、本人も聞こえる念話で何をコソコソ話しをしてんだよ。』
『どうも、ビルさんに勇気とやる気だけでなく、慎重さももらったんでしょう。』
『もう、勝手に言ってろ。ほら、ギルドが見えてきたぞ。』
街の門の外は閑散としていたが、街の中は確かに人が多い。
立ち並ぶ石造りの建物も結構な高さを持っている。
中には、見上げるような大きな建物まである。
日没前だからか、そんな建物前に屋台が軒を連ね、買い物客を呼び込んでいる。
そんな大通りを俺達の馬車はゆっくり進み、ひと際大きな建物前で停止した。
(ここがこの街の冒険者ギルドか。最初に見た、あの村のギルドとは比べるべくもないな。)




