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鎧、剣を視る

「エルデンリングの攻略目前で、最も高齢だったセイシュウがこの世を去ったんだ。

 ハイドランドも体力の衰えを理由に戦士としては引退。

 それまで一緒に戦ってきた者たちも、これ以上魔族を追い詰めずに、そこで別れたらしい。まぁ勇者たちといえど、人間なんだから寿命には勝てない、ということだな。」


「それで、魔族は?」

「魔族は、勇者たちがパーティーを解散する前に、エルデンリング全体の結界に閉じ込められたらしい。

 そのあと、ハイドランドは、魔神との戦いでできた大きな穴、その時はすでに湖となっていたらしいが、その湖、ハイエルン湖の近くに村を興し、そして寿命を迎えた。

 これがムハインド王国の創世記の元になった言い伝えだな。」


(エルデンリングか、、、)

俺は、少し懐かしさを感じた。

この鎧に取り込まれる前に居た森は、エルデンリングにある。

(数日しか経っていないけどな。)


「補足すると、その結界は、今はもう無い。この2000年の間に破られたらしい。だから、少し前に南方の国が魔王軍に襲われた、というのが最近の話だな。」

『ハイド、ありがとう。一つ聞くが、最強の勇者パーティー5人の中に、エルフは居なかったのか?』

『そうだな。ダンカイはドワーフだが、他の4人は人間だという話だな。それがどうかしたか?』

『そうか。実を言うと、とあるエルフの村に行った時に、その昔、その村にキキョウが立ち寄っていた、という話を聞いたんだ。』

「な、マジか!っていうか、あんた、エルフと知り合いだったのか!」

「なるほど、それで、神樹の枝葉なんてもってるんだ。」

『ハイド、ハイリン、これは秘密事項だから、他人のいる場所では、念話で頼むな。』

『あぁすまん。わかった。』

『ごめんなさい。』

『あと、それと、俺の師匠から聞いた話と知り合ったドワーフ鍛冶師の話でも、キキョウはエルフだった。』

『うん?』


『なんだか、キキョウは、人間にエルフということを隠していた気がするんだ。』

『ふーん、確かにばあちゃんの昔話には、キキョウがエルフってのは無かったものな。まぁ2000年も前の話だし?仮にキキョウがエルフだったとしたら、なにか問題があるのか?』

『いや、問題というより、期待かな?エルフなんだとしたら、まだこの世の何処かに存在していてもおかしくないだろ?そして、密かに魔術や武具の研究をしているんじゃなかろうか?そして、会えるものなら会ってもみたい。』


『おぉー、それは確かに、興味深い話だな。いつか、会えるといいな。』

『それにしても、ビルさんがエルフと知り合いって言う方が、僕には驚きです。』

(うん、ハイリン。君の横に座っているエルトがエルフなんだけどね。)


『ところで、ハイファーまでまだかかるだろう?ちょっと荷台の方でやってみたいことがあるから、ハイドの剣を見せてくれないか?』

『あぁ、いいぜ。そこにあるだろ。』

荷代の隅の方にハイドに返した直剣が置かれている。

俺は、御者をエルトに代わってもらい、荷台の方で作業をすることにした。


『ビルさん、何をするんですか?』

『ハイリン、少し場所を開けてくれ。このブロードソード、最初は気が付かなかったんだが、少し魔力を帯びているようなんでな、調べてみようと思って。』

ガタガタと揺れる馬車の荷台の中、ハイドとハイリンの座っている間に剣を置く。

俺が手甲を剣に近づけ、魔力を少し流してみた。

すぐに剣に反応が出た。

(やはりな。でもこの魔力は刀身ではないのか。ふむ、持ち手部分に何か細工があるのか?この剣の構造からすると、、、あ!有った。)

『ハイド、この剣に銘はあるのか?』

『いや、聞かなかったが、どこかのダンジョン内からの掘り出し物らしい。高かったんだぜ。』

『パーティー解散の原因だけどね。』

『ちょ、ハイリン、それは言うなって〜』


『何があったか大体想像できるな。それはともかく、この剣は魔力付与された宝珠が持ち手部分に隠されていたぞ。見た目にはわからないように柄内に埋め込まれているみたいだ。』

『ほぉ、それはすごいのか?どんな効果があるんだ?』

『ハイド、もうちょっと驚いてもいいと思うぞ。珍しいレアな剣なんだから。効果は、、、うん、よくわからんな。俺の知らない属性と魔術式だな。』

(キョウカなら知っているかな?、、、なんだか静かで不気味なんだが。)


『呪いのたぐいでなければ、別に構わないさ。効果は、使っているうちにわかるだろう?』

『え?えーと、そんな、あっさり?。』

『兄さんの良いところでもあり、悪いところでもありますね。もうちょっと、物事を考えて行動してほしい、とは思いますけど。』

『ハイリーン、悪かったって。蒸し返さないでくれー!』


『師匠でもわからないことがあるんですね。その剣の属性?』

『いやいや、エルト。わからないことの方が多いから、一つずつ知識を蓄えていくんだ。さほど重要と思わないことでも、時と場所によってはものすごく意味が有ったりするからな。』

『はい、師匠。今のお言葉も胸に刻んでおきます。』

『大げさだなぁエルトは。ハイド、この剣は、お前さんの言うように使ってみなければわからないところがあるが、鞘の方に俺の魔術を仕込んでもいいか?』

『それはいいが、なにを仕込むんだ?』

『今の俺ができるのは、この鞘に納まっている間は、軽くなるというものだな。』


(浮遊の応用だけど、鞘の方にも何故か魔力を感じる。いや、精霊力かな。これを利用する手はない。)

『そうか、じゃぁいいぜ。』

『本当にあっさりしているな。ほれ、できた。』

「「はや!!」」

二人とも息ぴったりで驚く。


『そういえば、ハイリンは、武器どころか防具もないのか?』

『えと、僕の装備は売ってしまいました。』

チラッとハイドを見るハイリン、、、

(あぁ、ハイドのせいか。それは、言わずが花か。)


『エルト。』

『はい、何でしょう?』

俺は、次元収納から一枚の布を取り出した。

(天樹の木の表皮から取り出した繊維を糸として紡ぎ、織ったのがこの天樹の布だそうだ。)

『この布を使って、エルトとハイリンの服はできるか?上着としてでもいい。』

『道具があればできますが、、、』

『おっとそうだな。こういう物がある。』

俺が次元収納から出した木箱。

中には、裁縫道具が入っている。

エルフの村の女性陣から布と一緒にもらったものだ。


『あぁ、それさえあればできますよ。』

エルトが御者台から振り返って、裁縫道具を確認した。

『ハイファーに着いて、妖狐討伐までにできるか?』

『はい、任せてください。』

『よし、頼む。俺は裁縫ができないから助かる。おっと、ちゃんと魔力を込めながらな。』

『えっと、いいんですか?僕のも作ってくれるんですか?』


『そうだ。遠慮はいらない。防具としては頼りないが、今の状態で魔物にでも襲われたら怪我だけですむか?この布で作れば、多少は丈夫なものが作れるだろうし、、、』

『あ、ありがとうございます。』

『それと、ハイリンには、杖も必要だろう?今から行く街で見繕うかな。』


『ビルさんよぉ、それ、いくらかかるんだ?杖やら防具やら、今の俺達には払えないぞ。』

『出世払いだな。その南の妖狐を狩りまくって稼ぐんだろう?これは、いわば投資だな。死んでしまったら元も子もないからな。しっかり稼ぎやすいように、便宜をはかるのも俺の役目だ。とでも思ってくれ。』

『あぁ、そういうことなら、ちゃんと働いて返すわ。だが、ありがたいという感謝の気持ちは受け取ってくれな。』


『なんだ、ちゃんと律儀なとこがあるじゃないか。その心持ちがあれば、、、と、準備さえしっかりしてれば、これから先、食うには困らんだろうさ。俺は、師匠にそう教わったから。』

『あぁ、そうあれば良いけどな。』

『ハイドやハイリンにも夢や希望があるだろう?お互いに頑張って生きていこう。』

『お、おぅ。勇気とやる気までもらっちまったなぁ。』

『あとは、ハイドの防具だな。さすがに戦士用のは簡単に作れないから、街で見繕うか?』

『あぁ、そのつもりなんだが、ビルは武器を持たないのか?木製の盾を2つ持っていたけど。』

『俺は、鍛冶師だ。剣術なんて習っていないからな。仕上げた剣の素振りくらいしかしてこなかったからな。魔術で戦うさ。』

『とことん、見た目で裏切るんだな。』

『魔物相手に見た目は関係ないだろうけどな。』

『違いない。あはは。』

(俺達もなんだかんだと気心が知れてきたのかな。ハイドなら相棒としていいかもな。)

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