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勇者のことが気になって仕方ないTS魔女さん  作者: MckeeItoIto
3章:思えばある種の決定的分岐点?
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魔女さんの超絶アドリブ最終試練 (3)



 ……。


 ……。



 といっても、いやまぁ採点っていうか?


 こちらはそもそも採点の余地無いし、あちらは妨害を防ぎつつ結界突破出来たらクリア、出来なかったらアウトの2パターンしかないから終わるまで見守るしかないんだけど。

 別に最初の簡単な命令付与以外でスライム操作したりしないしする必要も無いし。




(なんていうか、ホラー系バトルアクションゲームのトラップ解除みたいな?)

(時間制限付きパズルってめんどいけどロマンよね)

(失敗したらゲームオーバーのデッド・オア・アライブ。しぬぅ、ころさえぅ)




 いや死なんがな。これ試験やぞ。万が一の時は介入するわい。

 そもそも人を増やすための採用試験で人減らしてどうすんねん意味不明だろ。


 確かにマンガとかだと明らかに人死ぬやろって描写の試験とかあったりするけど、ああいうのはあくまでフィクションであるからして現実的ではない。


 まぁこの試験がどこまで現実的なのかはさておくとして……。




 帝国魔術院はコンプライアンスを重視してますし!

(注:皇帝様の意向と帝国法の範囲内)



 安全性に配慮した安心の試験をご提供いたしております!!

(注:皇帝様の意向と帝国法の範囲内)


 


 ……まぁ、少なくとも今回のスライムたちは攻撃性能ほぼ無いし、どっちに転んでも安心して見ていられるよね。

 できることならあちらはクリアしてほしいし、こちらは暇なのでそれなりに時間を稼いでほしいけども。




 と、いうわけで。


 それいけ! スーパースライムくん!

 黒髪ちゃんをぬっちょぬちょのねっちょねちょにしてしまえ!!


 



 




「『雷撃』」




 突然の空気を引き裂く衝撃。


 あわれ、ウルトラビッグなスライムくんは無残にも爆発四散。かわいそう。

 魔力残滓が煙のように漂う奥からバチバチと魔力のこもった指を突きつけた黒髪ちゃんの姿が現れる。




「……まぁ? 所詮スライムだよねぇ? ……バカにしてるの?」




 えぇ……、なんかさっきから黒髪ちゃんめっちゃ不機嫌じゃない?


 多少話せるようになったと思ったのに、また妙に私へのヘイトが高いような……。


 私もこう、ただ突っ立ってるわけじゃなく私だけ何もしないってのもアレなので一応、勝手に動いて私にも襲ってくるスライムくんを適当にさばいたりしてるのだけど……。

 何故だか勝手に黒髪ちゃんの中で、スライムアンド私、バーサス黒髪ちゃん、みたいな構図になってる気がする。


 いや事実としては間違ってないんだが。



 あぁ……、あと一応。この子の今の行動を評価するなら割と高得点だったりする。


 一般的にスライムは物理耐性が非常に高い。

 群体生物だからといって全部の核を壊さないといけないってわけではないけど、切ったり殴ったりした程度ではすぐにくっ付いてしまう。

 一応、群体のコア的な密度の高い中心部分は存在するので、そこをピンポイントで壊せば全体が崩壊するけど、パッと見じゃまずわからないし。


 故に対処法としては、高火力広範囲の魔術で全体を叩くのが一般的。

 水系魔物なので水系の魔術は効果いまひとつだし、使うなら広範囲を焼ける火属性がオススメ。

 だけど、一番効くのは電気。個体によっては絶縁性が高いのもいなくはないけど、たいてい効果抜群だし一気に全部を焼けて手っ取り早い。


 電気って基本属性じゃなくて、風と火の元素を巧いこと合成して扱わないといけないので結構難易度が高いのだ。

 水と風は親和性が高いので水属性の黒髪ちゃんも風属性を普通に使えるとは思ってたけど、火属性の扱いも中々上手みたい。


 やはりこの子はレベルが高い……、のだけど、一つちょっと気になる点として。


 何ていうかあまり理論派じゃないのか、たまに変な構築してたりして術式覗くとモヤったりもする。

 ちょいちょい冗長というか、動けばいいという感じというか。


 たしかに相手と共有すべきじゃない攻撃系の術式の可読性を上げる意味ってのは冒険者ならあまりないけど。魔術って人間しか使わないし。

 相手の使う術式を瞬時に読み取れる魔術師自体ほぼいないのだから、そこまで気にする必要も無いっちゃ無いのだけども。

 でも悪意ある超上級の魔術師と敵対した時とか、だいぶ致命的というか危険だったり。


 この子は使ってないけど座標系の攻撃魔術とか、万が一ハックされて座標初期化されたりすると座標ゼロにあたる術者の中で発動して盛大に自爆したりするし。

 例えば帝国にちょっかいかけてくる魔族とか、結構そういうセキュリティ甘い構成の魔法をバンバン使ってくるので出オチ気味にあっさりやられがちなんだよね。きたねぇ花火だ。


 それに私たちは研究魔術師なので、その辺の粗はかなり気になってしまう。粗探しをしたいわけではないんだけど。




 ……ちょっと脱線しちゃったけど、試験の続きに戻ろう。


 というか終わった気満々でいるみたいだけど……。






 ()()()()()()()()()()()()










「っ! 『雷撃』!」




 分裂した群体が不意打ちを掛け……、でもそれも見えてたみたいだね。

 上手く迎撃されてしまった。



 そう、スライムは分裂する。



 普通なら核が焼き切れたらお終いなんだけど、生き残った個体の数がコア部分再構築に足りれば、すぐ再構築して別々の群体として行動するようになる。

 まぁ、魔力的な消耗も核の損傷もそのままなので分裂するたびに最大HP的なのは減るんだけどね。

 いずれ分裂も再構築も出来なくなって完全に死滅するので不死身ではない。



 あと当たり前だが野生のスライムは普通こんなに頑丈ではない。

 というか、私判定100レベル近い上位聖職者の攻撃を一発でも食らって生き残れるスライムとか普通存在しない。


 ただ単に、私が魔改造した超絶スライムくんの耐性とHPがアホほど高いだけである。




「これくらい見えてる! 『雷撃』!」




 またもやバラバラに吹き飛び散らばるスライムくん。

 ぶすぶすと魔力残滓の煙を上げながらも即座に各々で再集合し、分裂して復活する。


 決して効いてないわけじゃない。

 というか普通にダメージはあるし、徐々に小さくはなっていっている。

 だが通常ワンパンで倒せるような魔物が何度も復活して増えていく様は不気味であろう。




「っ!? 『氷撃』!」




 お、ちょっと焦ったね。


 効くはずの攻撃が効かない。むしろ状況が悪化してるように見える。

 だから手段を変え、効かないはずの得意な属性を試してみる。

 効きにくいまでも凍結させて隙を作ろうって魂胆だろう。


 抜け道を探るために悪手を試すのは、選択肢として一見正しく見えるかもしれないけど。

 でも、それは選ばされた不正解。試行錯誤に見せかけた逃避だよ。


 邪道はつまり茨道なのだから。

 冷静に、慎重に、最悪を想定しながら、それでもあえて選択しなければ致命傷に帰結しかねない。





「えっ……」





 魔力吸収反射。


 魔力核が特定の属性魔力を検知して活性、吸収して自己強化に利用する。

 魔物にはそれほど珍しくも無い反射的生理機能の一つ。


 まぁ、ゲームとかだと属性吸収ギミックとかお馴染みだけど、現実はそんなバランスブレイカーな代物ではない。


 スライムは水属性の魔力を食べて活動する、半魔力生命体だ。実際に小動物や魔石片などを分解して捕食したりする。

 生き物に襲い掛かるのは血とかの体液に含まれる水魔力を求めてのこと。そして魔力活性を起こして魔力核を増やし大きくなる、単為生殖的な性質を持つ。



 が、流石にぶつけられる魔術効力そのものを直接分解できるわけじゃないし、単純に変換効率の問題もある。

 あくまで食らった後の余波と残滓を利用するに留まるのだ。つまりダメージは普通に食らう。


 その辺の野良スライムでは、それこそクソザコ魔物たちの小競り合い位でしかまともに活かされない機能だろう。




 だがこの私謹製の激ヤバスライムくんなら耐えてしまう。

 一般ドラゴンくらいなら一撃必殺してしまうような魔術にさえ、数回程度なら。


 耐えてしまうとどうなる?




「えっ……、えっ」




 飛び散ったスライム片が、先ほどと同様に新たな子スライムとなる。


 水属性以外ならほとんど吸収できないので分裂の度に小さくなっていくが、水属性の攻撃を食らって耐えられたら、その魔力を吸収できる。


 吸収した魔力を使って核が増え、あっという間に立派な群体の大人スライムと化す。



 結果、めっちゃ増える。




「な、なっ」




 もはやそれほど広くないこの結界内はスライムの巣のような状態。

 見渡す限りところ狭しと這いずり回るスライムたち。地獄絵図かな?


 ぶっちゃけ私も手動で迎撃するのが面倒になってきたので風属性の攻性障壁を張って自動迎撃してる。



 うーん……。なんか、見ててアレだね。

 黒髪ちゃん、対人戦闘の経験は豊富っぽいけど対魔物の経験はあまり無さそう?


 これだけ強かったら大抵の敵は無理くりゴリ押しすれば問題ないんだろうけど。

 高耐久ループ対策がなってないね。火力が足りずジリ貧になっちゃってる。


 まぁそうは言ってもレベル差かなり大きく、魔力的なリソース量もだいぶ違うわけだから受けきれなくなるのも時間の問題ではある。





「あっ」




 あ、捕まった。


 もちろん身体全体を守る防御系の術式も使ってたみたいだけど、物量に負けてその上から無理やりガバっと覆われちゃった感じ。私みたいに攻撃を弾く攻性障壁にしないから……。

 こうなっちゃうと全身がオールレンジの攻撃を常に受けてるみたいな状態になるから防御術式を維持するのが結構大変になる。




「あっ、ちょ」




 隙を見せてしまった黒髪ちゃんにスライムが殺到する。

 次から次にくっ付いて、こう、どんどん取り込まれて……。




「や、ぃ……、ごぽっ……!」





 ……。


 えっと。


 ていうか……、なんか……?


 あー、いや、なんだろう……。


 すっごい……。




(女の子丸呑みスライムくん)

(あー! えっちです!)

(美少女聖職者×スライム。これなんてエロゲ?)




 ……えー、いや、うん。


 私もあの子をぐちょぐちょぬらぬらにしろとは言ったけどさぁ……。


 いざこうなると、なんか申し訳ない気持ちというか、居たたまれない気持ちになるというか……。


 ……。うん。


 あんまり見ちゃいけない気がするし、私はあっちの三人組の採点に集中しようかな……。

 まぁ万が一に備えて魔力的な注視だけするけど……ほっといても別に命の危険は無いだろうし……。




「……! ……ぁぷ!」




 チラッ。


 うわぁ。すごい……。




 ……まぁいいや、んーっと、あっちは順調みたいだね。うん。


 役割分担して、マッチョが解析、二人がスライムへの対処をしてるみたい。

 何気にマッチョが一番魔術解析能力が高いみたいで、レベルのわりにそこそこ手際が良い。9割くらい解析が終わってるのかな。


 ギャルとチャラ男もお互いの死角を補いながら丁寧にスライムを魔術で叩いている。

 あちらも野生のスライムよりは耐久高いので戸惑ってる様子はあるけど、まぁセオリー通りの対処だ。

 ほとんど片付いてるし、解析が終わって結界の解除をする前には殲滅できるだろう。




「……!? ゃ……!」




 いやはや。


 なんだかんだ、難易度設定としてはテコ入れも含めていい感じだったんじゃないかな。自画自賛。


 かつての失敗は繰り返しませんよ。ちゃーんと相手のレベルに合わせた試験ができましたし。成長したね私。


 あの三人には、研究魔術師としても冒険魔術師としても良い感じの評価を与えられそうだし、このデータをまとめて担当の人に伝えればきっと良い結果が貰えるだろう。




「……っ! ……! ……」




 うん、よかったよかった。


 私も研究で出ちゃった処理に困る産業廃棄物を有効活用できたし。


 結果オーライ、万事解け――








「……ぁぁあああッ!! 『海裂の(Divisio )奇跡(Maris)』!!!」








 へ?




 あれ……、えっ……と?


 一瞬何が起こったかわからなかったけど、そこには粘液まみれの黒髪ちゃんが真っ赤な顔で立っている。






 ()()()()()()()()()()


 数えきれないほどの魔力核全てが、耐性を無視して完全に真っ二つに裂かれ、霧散している。






 え、なんだこれ? 水属性の概念的切断……?



 ……すっご。こんな奥の手があるんか。


 これまで見てきた並の聖職者の奇跡とは、完全に次元が違う。

 散々すごいって評価してきたけど、改めてやべぇな、この子……。





「ハァ……! ハァ……!! 終わったけどぉ……!?」



「え、も、……もしかして怒ってる?」



「怒ってないけどぉ……!?」

「ひぇ……」




 いやブチ切れですやん……。私悪いことしてないよね……?

 大股でこっちに歩いてくる威圧感がすごい。思わず後ずさりしそう。




 ……あ、あっちも終わった。


 よ、よし、終わり……! 状況終了……!


 終わりよければ全てよし……!!

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