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勇者のことが気になって仕方ないTS魔女さん  作者: MckeeItoIto
3章:思えばある種の決定的分岐点?
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魔女さんの超絶アドリブ最終試練 (4)






「お前ら、大丈夫だったか?」


「大丈夫」



 逐一監視してたから分かってたが、チャラ男たちは特に怪我も無く無事脱出できた模様。

 そそくさと私は黒髪ちゃんから離れて三人組のもとへと向かう。


 ……あ、いや、逃げたわけじゃないぞ。別にビビってないし。


 でもとりあえずギャルとマッチョの後ろに回り込んで、いったん黒髪ちゃんの視線から逃れたい。



「そっちもスライムだったみたいね? えっと……、ドロドロみたいだけど本当に大丈夫……?」


「ぜんっぜん大丈夫だよぉ……? ぜぇんぶ私が倒したからぁ?」



 笑顔だ……。でもこちらを見る目がパキパキで怒気がヤバい……。


 いやマジでなんでこんなに怒ってるん……?

 初見殺し食らってちょっと全身スライム浴をしたくらいでしょ……?



「同じ試験内容ってことか。てことはアルの方が結界を解いてたってわけだな」



 アル? ……あ、私か。


 いやまぁこっちでやってたのはただの暇つぶしなんだけど。

 黒髪ちゃんがスライムと戯れて、私がさっき結界を解いたわけだから、説明上は奇跡的に全部合ってるという。



「役割分担と共同作業……突然のことに驚いたが……実技試験としては合理的か……」


「そう、ゼフィールって結構こういうの得意なのよ。こんな見た目なのにね。それにしても……」

「ああ、あんなにデカいスライムは初めてみた。俺たちは3人いたから上手く立ち回りを変えて対処できたが……」



「あぁ……うん……大きかったよねぇ……?」


「……」



 訂正する必要も無いから黙ってるが、たぶんこの辺の認識にだいぶ齟齬があるだろうな、と。

 スライムは群体として成長するので、そのサイズがそのまま強さ的なレベルに直結してくる。


 だいたい野生のスライムってのは、こぶし大とか野球ボールサイズ程度のやつばっかで、この辺は普通に一般のガキんちょでも踏みつぶすだけでやっつけられる。レベル1とか2とか。

 大きくなってもせいぜいサッカーボールとかバスケットボールくらい。ここまで成長すると毒や酸の機能を持つようになったり、無くてもサイズ的に顔を狙われて窒息したりする危険性があるのでちょっと危ない。


 まぁ危ないって言ってもスライムは獲物を生かさず殺さず体液を搾り取るため酸素とかを与えたりもするから、窒息死ってのもほぼ無いんだけど。危険っちゃ危険だけどむしろ危険性は毒とか酸にあるわけで。

 ここまで来てようやくレベル5から10前後って感じ。冒険者ギルドでの初級冒険者がゴブリンとかと並んで討伐の対象にしてたりする。



 で、あっちに出したのがデカめのビーチボールとかバランスボールくらいのサイズ。レベル20くらい。

 攻撃性能は取り除いてるから、当然その辺を完備してたら耐久マシマシな分もっと強い。


 で、こっちで使ったスーパーウルトラ超絶アルティメットスライムくん(享年1.5)は……。


 ……なんだろ、あれほどデカいと例える対象が思いつかないな。大玉転がしの玉よりちょいデカいくらいか?

 これも攻撃性能が無いからレベル30から40くらいって感じだけど、フル装備ならレベル50とか60越えのエルダードラゴン級?


 いやはやここまでくるといくら危険性は少ないって言っても、野に放つには流石に生態系に悪影響がありすぎるのよね……。

 魔術院で実験資料を提出したら責任もって処分しろって言われてたけど、こんなんどう処分するんかっていう問題。


 かといって単純に処分するにも結構手間暇かけて作ったので勿体無かったというか……。


 ……まぁ、あのスライムくんもこれほどの美少女を最期にもぐもぐできたのだから本望だろう。たぶん。



「それでぇ、あんな意味不明に異常で巨大なスライムの相手をさせられた私に対してぇ、何か一言無いのかなぁ?」


「え? えっと……ごめんなさい……?」

「それ何が悪いかぜったい分かってないよねぇ??」


「おいおい、喧嘩はやめようぜ。一人が大変だったのは分かるが、役割分担の結果だろ?」

「いや、そうなんだけどぉ……そうじゃないというかぁ……!」


「冒険中に仲間同士で争うのが一番良くない。続けたいなら外に出て全部終わってからだ」

「むぅ……むぅぅ……」



 ギャルの影に隠れた私を責めようとする黒髪ちゃんに対し、それを見かねたチャラ男が仲裁に入ってくれた。

 ありがとう助かったぜチャラ男……。



「それにしてもほんとドロドロね……。ほら、綺麗にしたげるからこっちに」

「むむむむぅぅ」



 とりあえずクールダウンした様子の黒髪ちゃん。

 むくれたままギャルに布で拭かれてるけど……、あれ?


 そういえば聖職者って身体を綺麗にする奇跡使えなかったっけ? 『浄化の奇跡』だっけ?

 帝国教会でも普通に使う人いたと思うし、これほどの上位聖職者な黒髪ちゃんが使えないわけないよね?



 うーん……?


 ……まぁいっか。

 

 何にせよあとは帰るだけだ。




 本来であればこのダンジョン、転移装置とか便利なもん存在しないので徒歩で帰る必要があったりするんだが。


 めんどいから集団転移でサクッと戻ろう。




「えっと、告知。"試験を終了する。石碑の前へ。地上に送り届ける"」


「うん? 魔神の伝言か……? 俺的には結構手応えあったんだがどうだろうな……」

「というか送り届けるって……?」

「む……?」



 戸惑う一同。首を傾げてないで、はよ集まってほしい。

 バラバラでも転移は出来るけど効率が下がって大変なので。


 黒髪ちゃんと、何故か筋肉マンから視線を感じたが。

 私もちょっと疲れたのでそろそろ帰りたいってのが本音なところ。



 ……てなわけで、集まった四人と私、地上に帰還しまーす!








・・・








 そうしてあっさり目の軽い調子で、ダンジョンを出てから。

 係の人に、記録は自動でされてるからそのまま帰って良いと言われたので場所は魔術院前。


 まぁ、記録用術式がダンジョンには山ほど仕込まれてたからね。

 プライバシーに一応配慮されてたのか休憩スペースとかには無かったけど。


 ……黒髪ちゃんもその辺わかっててあそこで仕掛けてきたのかな。

 だからあの辺のごたごたは記録には残ってないはずだけど……。まぁどっちでもいいか。





「じゃあ、また明日だな」

「明日は最終面接、ね。流石に疲れたから帰ったらゆっくり休んで備えましょ……」

「……」

「……ばいばーい」


「……またね」



 3人と黒髪ちゃんと別れ際の挨拶。


 ……いや。どうだろうね。


 面接は一対一だ。

 実技試験の評価を伝えたら、もはや私が行く意味も無い。

 だから、村娘アルとしての私は今日でおしまいなのかもしれない。



「それにしても5人まとめての転移か、ほんとすげぇな帝国魔術院……」

「歩いて帰らず済んで良かったけど……。魔術院の魔神……、やっぱり雲の上の存在ね……」



 離れていく後ろ姿。


 はたして、次合うときは、どっちの私なのだろうか。

 合格なら魔術院の一員として会えるだろうが、そもそも不合格ならここで完全にお別れになるわけで。


 ……。


 いや、結局のところ合格したところで会う機会もほとんどないだろう。

 実際これまでも私は魔術院の人たちとほぼ交流してないし。弟子以外でちゃんと対面でちょくちょく会うのは院長くらいか。

 副院長は用事が無くてもコンタクトを取ろうとしてくるが、私が消極的拒否してるので……。



 うーん……、いや……。


 ……うーん。



 私もこれからは研究室に引きこもってないでもっと院の人とか外の人と交流すべきなのかなぁ……。


 人と話す機会が無いとどうにもコミュ力減る気がするし。


 帰っても弟子いないし。



 ……。



 ……いや、一人がさみしくなってるわけじゃないが?

 もともとずっと一人の時間のが長かったわけだし?


 違うが?






「……」




 何故か後ろ髪を引かれるような感触。


 気持ちを切り替えなければ。研究室に戻れば仕事がある。

 この試験の前の約束で、書類仕事は院長がある程度受け持ってくれてるとはいえ……。


 ……いや書類が片付くだけだいぶ助かるなほんと。院長さまさまだよ。


 つっても実務的な仕事は山積みなので。頑張って働かねばね。




 何度か振り返りつつも物陰に入り、ポーンと転移で研究室にワープ。

 それほど長い時間じゃなかったのに、なんだかとても長く留守にしていた気がする。


 そして、特に意味も無く、あいつがくれたローブを被るように羽織る。


 深く、深呼吸をする。




 ……よし、私はクー。


 魔術院の研究魔術師、魔女っ子クーちゃんだ。


 お仕事に戻るよ……!






(いや、18歳で魔女っ子ってのは流石に痛くないか?)

(見た目が貧相な中二レベルなんだから別に痛くないでしょ)

(中身も中二でも美少女だし多分許される。いや、いろんな意味でもうちょい成長した方がいいとは思うが)




 ……サブ思考もうちょっと調整しようかな。


 私の思考、流石にもうちょっとまともだったと思うし……。

 ああいやでも前からこんなもんだったっけか……?








・・・







<こどもとおとなの話し合い>



「……。どうしよっかなぁほんとぉ」


「……」


「……」



「おや、おや、どうも」

「!」



「お疲れ様です、お嬢さん」

「受付のおじさん……?」



「おや……? お気づきでなかったので?」

「……。……侮らないで。あなたがここの責任者ってのは気づいてるから。さっきまで受付として振舞っていたからそう呼んだだけ」



「ふむ、ふむ。その通りです」

「……」



「……そこまで警戒されずとも大丈夫ですよ。貴女と少しお話がしたいだけでして」

「……」



「それでは……、()()()()()()()?」



「……」

「……」



「……すっごい不愉快。そういうこと?」

「いえ、いえ。これも我々なりの誠意ですよ。失礼と取られたなら致し方ありませんが」



「……」

「……」



「……最悪というほどでもない」

「ふむ」



「善性は信じてもいい。だけど危険にもほどがある」

「ふむ」


「あんなの絶対に飼いならせないでしょ。上手く利用できるなんて思わない方が」



「ふむ。()()()()()()()()?」



「……」

「ですので、我々も我々なりに付き合っていこうという次第でありまして」



「……」

「ですので、貴女がたにも、適切にお付き合い頂きたいと考えておりまして」



「……。……おじさん、というかおじさんたち、性格悪いって言われない?」

「ええ、ええ。間違ってはいないかと。ですが、皆さんそれなりに身内思いでもありまして」



「……」

「信ずるに値する。ならば信頼する。その力に頼ることもあれば、頼られたなら力になる」



「……」

「仲間として、友人として、隣人として。そのような健全なお付き合いができた上でお互いの利にもなるなら、それはとても素晴らしいことではありませんか」



「……綺麗事の理想論」

「そうかもしれませんね。ですが無意味な空論ではありません」



「……」

「そして貴女も、悪人ではない。敵でもない。我々はそう信じたいと思っております」



「……あぁもう、頭いたい」

「お疲れでしょう。お送りしますよ。宿までにしますか?」



「いらないよぉ……」

「それとも、国まで? そこまで直接転移して差し上げましょうか?」



「……。なんかあの子にちょっとだけ同情するかも」

「おや、おや。我々にとっては貴女も彼女と同じように思えますが。おや、おや、どうなさいましたか? ずいぶんと顔をしかめておられますが?」



「……謝った方がいい?」

「その質問が出るくらいであればどちらにも必要ありませんよ。ええ、ええ、ですがこれ以上続ける必要もないでしょう。有意義でしたが今はこれ辺りまでにしておきます」



「……」

「では、では。とてもお強い貴女がたとも、敵ではなく良き隣人であれることを祈っております」




「……」




「……」





(……罪と怒り。愛情と慈悲。情報価値は高いが審問不可)



(私の方が多分強い。奇跡を使えばなんとかなる。でもここでの単独審問は避けるべき。今手に入った情報だけでも先に持ち帰った方がいい)



(だけど……いやほんと……どうやって上のおじいちゃんたちに伝えよう……)



(あぁもう……頭が痛いよぉ……)





・・・

(3章終わり→次回より4章)

(次回、勇者パート)

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