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勇者のことが気になって仕方ないTS魔女さん  作者: MckeeItoIto
3章:思えばある種の決定的分岐点?
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魔女さんの超絶アドリブ最終試練 (2)





 さて。そもそも使い魔とは何か。


 帝国魔術の定義で説明すれば、それは術者が魔力パスを直接つなげて主体的に行動を操作することが可能な生命体、もしくはある程度自律的な魔道具のことを指す。


 例えば私がこれまで隠れてこっそりあいつのことを見たり眺めたり見つめたり観察したり見上げたりするのに使ってきた見守り使い魔くんズ。


 あれらは生きてない魔道具タイプの使い魔になる。色々作ったので外装も内部設計も様々だが、どれもリモートで動かしてるラジコンのようなもの。

 色々命令を与えてるので半自律でも動くし、動力も自前で作ったりしてるけど、完全に私から独立してるわけじゃない。


 あと、前に作るつもりで結局作ってない完全自律型の使い魔くん。一応そのうち研究目的で作るつもりではあるけど。

 この設計構想も、結局のところパスは付けたり外したりして手動操作できるし、自律といっても行動権限は私が主なので、使い魔に定義される。


 ちなみに使い魔と似てる概念で、眷属ってのがあるけど、それは別の話になるので今は置いておくとして。


 使い魔としての中核は、魔力核に繋げたパスによる主従の関係だ。

 使用者と使用人、つまりはエンプロイヤーとエンプロイー、マスターとサーヴァント、といった与えて受け取り応える関係性が必要になる。



 なので農作業ゴーレムのAGRIや元アル人形のソルなんかの疑似人格型自律ゴーレムたちは使い魔ではない。

 私が直接パスをつなげて強制的に弄ることは可能だが、別に私がその行動権限を持っているわけじゃないからだ。


 あくまで、行動の主体はあの子たちにある。

 まぁ逆にそれを無理矢理書き換えて掌握すれば使い魔となるわけだが。


 私にはそんなつもりも予定も無いし、あの子らのような高機能疑似人格術式相手にそれをできるような術者はほぼ存在しないと言っていいだろう。




 で、魔道具タイプの使い魔の他にも、生命体タイプの使い魔も存在するわけだが。


 そう、例えば。





「……! すっ……スライム?」





 どたぷんっと、虚空から出現した半固形ジェル状の生き物。


 スライム。


 この世界では、水の自然魔力さえあればどこにいてもおかしくない有り触れた魔力生命体。

 大量かつ極小の核から延びる魔力線で液状の身体を繋ぎとめる単純な組成でありながらも、群体的性質も持ち、大きくなればなるほど強くなる魔物。

 でも小さいスライムはほぼ害が無いと言っても良い。こぶし大程度のサイズであれば子供でも鼻歌歌いながら散らして退治することができるくらい。


 生き物のイメージとしては……ちょっとマイナーだが個虫群体タイプのクラゲモドキが近いかもしれない? カツオノエボシとかみたいな。

 一体だけでは独立性の低い生き物がコロニーを作り、その集まりによって性質を変えて、まるで大きな一個の生命のような振る舞いをするっていう小さな生き物たち。


 それの、クラゲよりももっとドロドロした、陸上でも活動する半液状タイプな魔物。

 見た目は勝手に動く半透明のゼリーだね。気泡のように濁って見えるのは全部魔力核で、溶けかけ色付きこんにゃくといってもいいかも。


 スライムはこのダンジョンにも至る所に勝手に住んでる。暗くてジメジメしたところは水の魔力が溜まりやすいので勝手に集まってくるわけだ。

 魔力を持つ魔物の中でも組成が単純なので割と実験の材料にもしやすいし、魔術院にとっては勝手に沸く資源みたいなもんでもある。


 そして組成自体は単純なので魔力で無理やり核同士の動きを制御して動かしたり、なんなら術式化していろんな機能を持たせたりもできる。


 そう、魔物でも魔力核を掌握して術式を刻むことができれば、行動を操作したり情報を受け取ったりと使い魔化することもできるわけだ。

 中でもスライムは個々の魔力核の数は多くとも抵抗は弱いので使い魔にするにはもってこい。初心者向け。


 まぁ大型のスライムとかはそれなりに複雑なコロニーになってて魔力連携による抵抗も強くなるので難易度は上がるけど。




 ……ああ、あと余談だけど。


 どんな生き物でも理論上は魔力核を完全に掌握することができれば支配して使い魔にできる。

 人間の魔力核、すなわち人の魂は非常に高密度かつ複雑なのでほぼ不可能だけど、例えば小動物とか弱い魔物とかは比較的容易。


 で、魔物の魔力核ってのはその魔物の固有魔法と密接に関係している。




 それ故に、魔物の魔法を完璧に模倣できる魔族はその魔物を使い魔として支配することもある、とされている。




 ……上位の魔族は強い魔物を従えることもあり、これは魔王が恐れられている理由の一つでもある

 なので魔物を使い魔にするってのは正直かなり外聞が悪いんだけども。


 スライムは見た目が液状であまり生き物っぽくないし、というか魔術師の使い魔として割と一般的かつ身近でイメージしやすく害の少ない魔物だったりするので問題になることも少ない。


 てなわけで王国とかならともかく、少なくとも帝国周辺で魔術師のスライム使い魔が問題になったことは無いし、そもそも冒険者の魔術師も普通に使うことある。


 まぁでもゴーレムみたいな魔道具を使い魔化して運用する方が一般的かな。メンテ楽だし。生き物を使うってのはそれはそれで大変なのだ。




 んで、いま私が呼び出したのは私が魔改造しまくった使い魔スライムくん。


 百体以上のスライムを魔術的に合成して作った実験用の人工的な巨大スライムで、私の背丈よりでかい大質量だから結構迫力ある。


 でも今は待機中なので触腕とか生やしたりしてないし、見た目はただのクソデカ水まんじゅうって感じ。ぷるぷる震えててかわいいね。



 なんかその場からめっっっちゃすごい勢いで飛びのいた黒髪ちゃんも、その可愛らしい姿に毒気を抜かれたのか、困惑?といった表情をしてる。

 ほんの一瞬敵意みたいな不穏な気配を感じたけど、別に召喚は無宣言で魔力隠蔽もしてるので私が出したとはバレてないはずだし……?



 まぁいいや、とりあえずこれで暇をつぶしてもらうとする。




「これ、試験のボス」

「えっ……? えぇ……?」


「あ、あとあっちにも出し……出た」



 ついでにあちらの三人組が見てると結構順調だったのでちょっぴりテコ入れ。

 流石に三人がかりだと結界解析の難易度も易しくなっちゃうし、お邪魔キャラとしてスライムくんを送り込んだ。



「は? これを……?」

「あっちのはこっちよりも小さくて弱い」



 あっちのやつは魔女さん判定レベル的に20くらいかな?

 流石に私たちと実力差が大きすぎるので、送ったのは多少改造してるけど一応は普通なスライム。

 三人がかりなら余裕だろうけど、一対一だと少し苦戦しそうな感じ。


 こっちのキングなスライムくんは30から40くらい。油断しなけりゃ上級冒険者が一対一で十分対処できる程度。

 つよつよな黒髪ちゃん相手には不足にも程があるけど、そこそこ歯応えあって暇つぶしにはちょうどいいくらいだろう。

 



「あぁそう……なんだぁ……? 良かったのか良くないのか……いや良くない寄りかも……あぁもう」




 ……うーん? なんか反応がイマイチだな。



「えっと、来るよ? 気をつけて?」



 まぁ正確には来るというか行くというか、けしかけるというか。


 触腕を伸ばし身体を震わせズルズル!っと意外に機敏に動く姿も、なんていうかキモ可愛いと思うんだけどなぁ。


 毒も酸も出さないような調整をしてあるので、口を塞がれたりしない限りは命の危険もほぼ無い。ただし物理はほぼ無効で魔術的な対処が必須なので決して簡単な相手でもない。


 適度な難易度で危険性も少ないためこういう試験用ダンジョンのボスとしては最適かもしれない……と思いきや作成難易度とか維持管理コストとかの問題もあるので常駐には向いてないのが玉に瑕。

 生きてる使い魔は魔力核が代謝で更新されちゃうからね……長く使うには結構めんどいのだ。


 てなわけで人工スライムみたいな使い魔は基本使い捨て。実験が終われば処分行きなので、こうして有効活用できるならそれに越したことはない。勿体無いし。




 それじゃあ私はこれで採点に入るので。


 みんな、頑張ってね!

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