ゲームのキャラ達
昼過ぎから始まった会議は、途中休憩を挟みながらも夜になろう時間まで続いた。
「本当に申し訳ないけど……」
本来の規定された職務終了の時間だ。
「私のことはお気になさらず、エルザさんはお帰り下さい」
交代や当番、緊急性がない限り、王宮外に住む人間は夕方には勤務終了だ。
今日は夫が家にいるというから!エルザには是非とも家に帰って欲しい。
夫婦二人共王宮勤務だとシフトによってはすれ違いが起こるので、一緒にいられる時は共に過ごした方がいい。
「ファルノ、夕食のことですが…」
退室したエルザと交代に、クラッグが入ってくる。
「本日は殿下とカイン様を含めて五名がこちらで食事とります」
五名ということは、マクセルは帰ってしまうのか。
せっかくお声を聴けると楽しみにしていたのに。
勤務時間が長いと、仕事が少なくてもやっぱり疲れます。
こういう時こそ推しボイスを聞きたかったのですが、仕方ありません。
「夕食の準備が整うまで、ヒルデン様を小会議室にご案内して下さい」
「かしこまりました」
そろそろ会議が終わる頃合いだということで、会議室の前の廊下でクラッグと並んで待機する。
ざわめきの気配と共に会議室の扉が開く。
「それじゃあ、僕は忙しいから行くよ」
「早く調べて間に合わせないとな」
魔導士のセドリックと賢者のヒルメスが挨拶もそこそこに、足早に行ってしまう。
「メイナ、すまないが夕食まで少し仕事を片付けてくる」
残念そうにそう告げるのはアイザックだ。
本当はアイザック自身が、メイナを案内して夕食まで相手をしたいのだろう。
だけど、青の宮の執務室に足を踏み入れていないアイザックの執務机には処理しなければならない書類が積み上がっている。
アイザックの背後に控えるカインが、アイザックに早くしろと無言の圧力をかけている。
「ファルノ、メイナのこと頼むぞ」
クラッグから私のことを耳打ちされたアイザックが、私をメイナに紹介してくれる。
「メイナ、あとはこの侍女が案内するから、彼女に聞いてくれ」
「よろしくお願いします」
メイナが私ににっこりと笑ってくれる。
私のような一介の侍女に丁寧に挨拶してくれるなんて、イイコなんでしょうか。
笑顔と一緒に花が飛んでるのが見えます。
後ろ髪をひかれるアイザックは、カインとクラッグを従えて自分の執務室へと入っていった。
「メイナ」
マクセルがそっとメイナの腰を抱き寄せる。
「青の宮にいれば安全だ。必要なものがあれば持ってこさせるから、メイナはなるべく青の宮にいてくれ」
メイナに囁くマクセル。
その甘い美声に私は崩れ落ちそうになるが、なんとか侍女としてのプライドで平静を装う。
「時間が空いたら、なるべくこちらに寄るから…」
「あまり無理さらないで下さい、マクセル様」
人目を気にしない恋人同士のやり取り。
それをニヤニヤとレンが眺めている。
そういえばマクセルとの恋愛エンドのストーリーになっているけれど、アイザックは未だメイナに未練があるが他の人間はどうなのだろうか。
たしか、マクセルとセドリックは主人公に魔法を教えるというイベントが被っていて同時攻略はできなかったはず。
先程もメイナを気にする風もなく部屋から出ていったところを見るに、そんなに好感度は高くないのだろう。
それはヒルメスも同様だ。
残りの二人、レンもメイナとマクセルの様子を見てもなんともない感じなのでメイナに恋愛感情はないと考えられる。
それなら、メイナの幼馴染のイザードはと彼を見てみる。
「マクセル様、そんなに心配なさらないで下さい」
「私がそばに付いて守りたいのだ」
まるで今生の別れのような会話をしているメイナとマクセル。
その向こうにいるイザードを見て、私はゾッとする。
二人を見ているイザードの瞳には、仄暗い炎が宿っていた。
それは嫉妬よりも深い思い。
見てはいけないものを見た気になって、慌てて目を逸らす。
そんな私の姿は、レンにしっかりと見られていた。
「そろそろ行こう、メイナ」
一瞬私を見てフッと笑ったレンが、メイナとマクセルを引き離すようにメイナの肩に手を置く。
「いつまでもこここにいても仕方ないだろ?」
マクセルにシッシッと払うように手を振る。
「そうだな。イザード、レン、よろしく頼む」
マクセルは何度もメイナを振り返りながら、ようやく去っていった。
「さ、案内よろしくな?あ、君の名前は?」
気安いレンが私に声をかける。
こういう時は客人に名前は名乗らないのがマナーなのだが、しばらく滞在する彼らは私の名前を知らないと不便かもしれない。
「私はファルノ・エイシルと申します。このフロアを担当しておりますので、御用がある時はお申し付け下さい」
ペコリと礼をしておく。
「それでは、案内させていただきます」
ようやく私の本来の仕事ができる。
どうやら夕食は人数が多いから会議室でとることになるらしく、私達と入れ替わるように侍従達が夕食の準備のために会議室へと入っていった。
「ねぇ、エイシルさん?君って親はエイシル伯爵?」
先導するはずの私の横をレンが並んで歩く。
「父をご存知でいらっしゃるのですか?」
「カシェートの領主だよね?」
「私の父はたしかにカシェート領に赴任しております。ですが、カシェート領は王家直轄領にて、領主ではごさいません」
父は王家直轄領の管理を任されているだけで、領主とか畏れ多い。
「変わらんだろ」
そうレンが呟くのが聞こえる。
父はただの雇われの身なので領主なんて言ってしまえば、王家にふたごごろ有りなんて思われてしまってもおかしくない。
「とにかく、君の父親と母親にはここに来る時にお世話になったんだ!」
メイナのために小会議室の扉を開ければ、レンがさっさと入って応接用のソファに座ってしまう。
とりあえずレンはほっておいて、部屋の中を一通りメイナに紹介する。
「一通り用意しておりますが、必要なもの、足りないものがございましたらなんなりとお申し付け下さい」
「ありがとう」
さっそくメイナが引き出しなんかを開けて確認を始めた。




