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勇猛を讃える

青の宮からの情報とサポートにより、私はスムーズにディオナ達の朝の支度を終えることができました。

今は朝食を終えて、ゆっくりとお茶を飲んでいるところです。

「旦那様より、本日は王宮にてお過ごし下さいとのことです」

ネイサンに伝えられたレイモンド辺境伯の伝言は、今日はまだ街中も落ち着いていないし、自分も軍部に詰めているから手勢も動かせないということだった。

「迎賓館での遊戯室や図書室のご使用や、ご希望でしたら、王宮内の庭園へご案内いたします」 

私からの提案に、ディオナは母親と顔を見合わせる。

「そうねぇ……ゆっくりしたい気持ちもあるけれど、王宮の庭園もいいわね」

王宮の庭園は一般に解放されている部分と身分や許可の有無によって入れるエリアがある。

今日は天気もいいし、気分転換に庭園のどこかで昼食をとれるように手配してもいいかもしれない。

部屋付きとしてそばに控えているのは大変だけど、取り立てて仕事がないという状況は気が楽だ。


コンコン。

部屋のドアがノックされる。

ネイサンが軽くドアを開けテ確認するが、用があるのは私らしい。

ネイサンと入れ替わる用に私はドアへ向かい、廊下へと出る。

そこには朝にもいた青の宮の侍従がいた。

「殿下より伝言にございます。レイモンド辺境伯並びに夫人と令嬢と共に昼食をとられるとのこと」

マジですか。

「昼食の手配はすでにしております。正餐ではございません。場所は、軍部棟の……」 

侍従が昼食の時間と場所の指定を伝えてくれる。

私は了承の旨を返事して、すぐに部屋の中に戻る。

「なんだったの?」

夫人が不安そうに聞いてくる。

「アイザック殿下が、レイモンド辺境伯の皆様と共に食事を共にしたいということです。場所はレイモンド辺境伯がお忙しいことを考え、軍部の施設となることをご了承下さいとのことです」

私が伝えると、夫人もディオナも驚き固まっている。

いくら婚約者候補といっても、こんな忙しい最中に食事の席を設けるなんてそりゃ驚くだろう。

私もわざわざディオナのためにアイザックが時間を割くとは思っていなかった。

夫人の格好は迎賓館での上客として相応しい格好をしているから、このまま非公式に王族に会っても問題ない格好をしている。

これが公式的なものや正餐だったら、今からまたドレスをそれように選んで着替えなければいけなかっただろう。

昨日一応デビュタントを終えたばかりのディオナには、いきなり王子と会食とか緊張するのはわかる。

「軍部の近くには、『勇猛なる方々を讃える庭園』がございます。昼まで、そちらを散策されるのはいかがでしょうか」

「そうね、準備をお願い」

さすがに夫人の方はどんな事態にも慣れている。

私は帽子や扇子、日傘など貴婦人の外出グッズの準備を始めた。


軍部は外宮では一番大きな組織だ。

迎賓館から客人用の馬車に乗り、軍部本部近くの馬車寄せに停まる。

「夫人はこちらに来たことはございますか?」

軍部の本部の建物は大きい。

今日はここの一室での昼食になる。

本部建物の横には『勇猛なる方々を讃える庭園』と公開している練兵場がある。

このエリアだけが一般に公開されている。

「練兵場には足を運んだことがあるわね」

レイモンドから連れて来た領軍は、いつもこの軍部で合同訓練と称して力比べをしているらしい。

夫人はそれをたまに観覧しているらしい。

「ネイサンも訓練には参加したことあるわよね?」

「何度かは参加しましたが、最近はあまり参加できていません」

「そうね。最近は王都に来ても私達の護衛ばかりだもの。あなたも少しは体を動かしたいわよね」

「時間があれば、訓練に参加したいと思います」

ネイサンが練兵場で訓練するには、レイモンド辺境伯が戻って来ないと難しいだろう。


「レイモンド辺境伯夫人でいらっしゃいますか」

立ち話をしていると、本部から出てきた男が声をかけてくる。

どうやらアイザックがよこした案内人らしい。

「お時間まで庭園の案内をさせていただきます」

恭しく礼をしたのは、バーモントという軍部勤めの役人だった。

「こちらの『勇猛なる方々を讃える庭園』は、我が国で魔物と戦った方々の功績を後世へと伝えるために作られております」

小道の脇を彩る花々の中に、石碑が点在している。

それは邪竜や魔物と戦った人々の戦いを記し、特に功績があった人の姿が彫られている。

「これは300年ほど前にレイモンド領を襲った魔物の大襲来(スタンピード)を記したものです」

「ええ、よく存じておりますわ」

夫人の顔が曇る。

レイモンドの地に住まう人間なら、今でも語り継がれている出来事なのだろう。

私も王国史で習った。

領地を襲う大量の魔物。

それを救ったのはレイモンドの地に誕生した聖女だった。

ディオナはその時の聖女の末裔となる。

アイザックの婚約者候補の理由がメイナと同じ聖女のその末裔だから、とかだったら嫌だな。


そもそもこのキッシェリア王国の歴史は、邪竜と魔物との戦いの歴史である。

かつてこの地に魔物共に棲んでいた邪竜は、聖竜とその力の助けを借りた初代キッシェリア王によって倒された。

神にも等しい邪竜を完全に滅ぼすことは出来ず、王国のある場所の地中深くに封印されたという。

邪竜を封印した聖竜はこの地で眠りにつき、邪竜が復活しないように見張っているという。

そして、レイモンドの地は聖竜の力が及びにくいとされ、邪竜の力が漏れ出て魔物が多く現れる地となっている。

この国にはレイモンドのように魔物が頻出する地が複数あり、そこは邪竜の影響が強い場所とされている。

先程、邪竜が復活しそうになった時も、そういった場所で魔物の活動が活発になった。

それを討伐していたマクセルは、きっとこの庭園で讃えられること間違いなし。

彼の石像が建ったら、毎日のように見に来たいものだ。


「レイモンドは穢れを蓄積しやすいからね」

なんとなくしんみりと石碑を見て立ち止まっていた私達。

近づいてきた青年が声をかけてくる。

「きさま何用だ!?無礼だぞ」

明らかに一般人しかもこの国には珍しい服装に、ネイサンが警戒して彼と私達の間に立ちはだかる。

私の視界にはネイサンの背中で、

守ってくれるのはありがたいんだけど、その人攻略対象の一人レン・カタルギ(CV東原総一(ひがしはらそういち))ですから。

『りょくいぶ』キャラの中でも王都に住んでないから、出会うことが滅多にないキャラです。

私は今日初めての邂逅です。

私的にレアキャラのカイですが、彼は貴族ではない。

「ご婦人に不躾に話しかけるなど、いくらここが一般にも解放された庭園であっても許されません。まずはあなたの名をお名乗り下さい」

レアキャラ出現に意識を飛ばしてないで、きちんと自分のお仕事をしなければ。

ディオナを私の後ろにして、私もカイを威嚇します。

「ごめんごめん、驚かすつもりはなかったんだ。俺はレン・カタルギ。アイザックのこと探してここまで来たんだけど、どこにいるか知らない?」

「なっ!?キサマ、不敬であるぞ!!!」

周囲を気にしていたバーモントが今にもレンに殴りかかりそうです。

いくら一緒に旅した仲だとしても、ここは王宮。

アイザックを呼び捨てにするなんて許されません。

バーモントの怒鳴り声を聞いて、兵が集まってきてしまった。

「アイザック殿下を呼んで来て下さい!!」

私は駆けつけてきた兵の一人を捕まえて、叫んだ。

この事態を収集できるのはアイザックだけだ。

私はレンの初邂逅と久しぶりのCV東原総一を堪能する暇は与えてもらえなかった。


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