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悪殺し -悪を引き寄せる話-  作者: 皆口 光成
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悪ー伍ー


--殺す者(キーラー)--


読んで字の如く殺す者のことである。

しかしその対象は決められており、その対象以外への危害は加えることは皆無とされている。


各々が自分の中に宿している概念を具現化することでその対象を殺すことが出来る。また、一度具現化した概念は形は変えられるが消すことは出来ない。


その歴史は古く、最も古い伝承では紀元前頃から存在していたのではとも言われているが確証はない。

目的は世界の均衡を保つバランサーの様な役割をしているが、その理由は不明とされている。


能力の形態は各々異なり、自分に合った形、性質に出来ることが分かっているが、ほぼ自動的に決まっているので自由自在に変えられるわけではない。


また“殺す者(キーラー)”となった際、その肉体は本人にとって最も適した状態で成長が止まり、また第三者からの危害を受けても死なない限りは何度でも復元される(感覚は残る)。


能力を得る際、何かしらの代償を失う。


寄せる者(アダー)”を作ったと言われている。





--“寄せる者(アダー)--


概念を引き寄せる者。

その能力はむしろ体質に近いものとされ、能力者本人がその体現とも言える。


その目的は概念のみを殺す“殺す者(キーラー)”の効率を上げるために作られたと言われているが、長い時を経てかその力は強大となっていき、ついには人そのものを概念化させてしまう事態となってしまった。


そのため“殺す者(キーラー)”は一頻り“寄せる者(アダー)”を使って対象の概念を殺した後は“寄せる者(アダー)”を殺すことにしている。


なお“殺す者(キーラー)”も“寄せる者(アダー)”も先天性と後天性があり、いずれも先天性の方が能力が高い傾向がある。が、先天性はそれ以上能力の飛躍を望むことは出来ないとされており、その代わり後天性は最初は弱くともいくらでもその能力を上げることが出来るとされている。


また特例で先天性でも能力の増減を図れる『特異型』が存在する。





副産的に概念化の能力を持つ“寄せる者(アダー)”の能力には三種類ある。


・近接型

近づくことで能力が発動するタイプ。概念化には一人ずつと効率は悪いが浸食時間が短いため確実に人間を概念化することが出来る。


・遠方型

近接型とは違い遠くからでも能力が発動するタイプ。距離の制限は曖昧そのもので、個人の認識によるもの、つまりはゆかりある場所、馴染み深い場所であるならばどこでも発動することが出来る。一度に複数人を概念化出来るが浸食時間が長いため、その間抵抗する時間もあるため概念化する確率は低いがその分概念を集めやすい。


・特異型

近接型とも遠方型とも当てはまらないタイプ。



------



「だいたいこの辺りです」




僕が一頻り言い終え、一息つくためにお茶を飲んだ。うん、美味しい。




「何か分からないところや聞きたいことはありますか?」




その後言い忘れていたことがないかの確認をするためにサヤさんに質問があるかを聞いてみた。




「…………」




しかし当の本人であるサヤさんは固まっていた。無理はない。いきなりこんな話をされても信じる方がどうかしてるしそもそもついていけないだろう。

だがこれは真実なのだ。嘘隔てのない紛れも無い真実。

だから本人がどう思うかは本人が決めるしかない。




「え……っと…」




ようやくサヤさんの重い口が開く。




「私が…その…ア、“寄せる者(アダー)”ってことなの…?」


「はい。“悪”を引き寄せる“寄せる者(アダー)”なので僕は“アクヨセ”と呼んでいますが」


「それで…その…サツキくんは“悪”を殺すキ、“殺す者(キーラー)で“悪殺し”ってこと…?」


「はい」


「“悪”を…殺しているの?」


「はい」


「私がその“悪”を……引き寄せているの?」


「はい」


「…………………」




再び、黙る。

おそらく自分の中でどう判断するかを考えているのだろう。




あるいは…。




「そ、それで…」




サヤさんの口がまた開く。




「私の…この能力は消えたの?」




しばらくの静寂。その空気はなにか重く張ったようなものがありその場にいる人物を重苦しくさせていた。

ちなみにコノエさんは結構早い段階で寝た。




僕の返事を待つかのようにジッとこちらを見つめるサヤさん。

その目には期待と不安の色が混ざっていた。

それを見て僕は一度目を瞑り深く、しかし静かな溜息をついた。

そして答える。




「いえ、あなたの中には今現在も“アクビト”の力が存在しています。しかもさっきよりも強力に」


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