悪ー參ー
しばらくの静寂。
今この部屋には三人もの人間がいるというのに誰も声を発していない。
というか動きもしない。
コノエさんはまるで精神的ダメージのため現在石像状態になっており、僕はというとこの現状をどうしたものかと長考に入っており。
そしてサヤさんは燃え尽きていました。真っ白な灰のように。
「……それじゃあそろそろ」
本題に入りましょうか、と言おうとしたところで。
突然サヤさんは動き出しました。
まず立ち上がりリビングを出ようとし、その手には携帯を持っており、その番号は警察の──。
「いや何しようとしてるんですか!?」
僕は慌ててサヤさんを止めに入る。
「いーやー!離してー!!」
サヤさんはまるで誘拐された女子校生のような悲鳴を上げた。
「いやいやいや!!いきなり警察とか呼ぼうとしたらそりゃ止めに入るでしょう!?とりあえず一回落ち着いてください!!」
「突然中学生の娘を嫁と言ってしかも年齢を偽ってあまつさえ自分の年齢まで嘘ついた人の言うことに従えるわけないでしょう!!?」
「ごもっともですけど全部本当なんです!!お願いだからせめて警察は勘弁してください!本当に困るので!」
「いやー!離してー!助けてー!幼女誘拐犯に襲われてるー!!」
「人聞きの悪いことを言わないでください!今何時だと思ってるんですか!?あと歳が十、十一はもう幼女とは呼ばないと思いますよ!多分!!」
「保健室で手足を拘束された時から変態だとは思っていたけどまさか筋金入りの変態ロリコン野郎だったなんて!!私は明日から何を信じて生きていけばいいのー!!?」
「誰がロリコ」
ンですかぁ!!と言おうとしたところで。
突然背後から殺気。
サヤさんも感じ取ったのか、顔面蒼白で顔中冷や汗をかいて止まりました。
恐る恐る、その方向をほぼ二人同時で見ると。
そこには髪をゆらゆらと立ち昇らせ、闘気を纏ったコノエさんがこちらを睨んでいました。
「……手足を……拘束?」
そのままゆっくりこちらに歩み寄ってきました。
その目は、血のように赤い目は、真っ直ぐこちらを見据えて。
「どういう……意味?」
その殺気をこちらに向けて。
「い、いえコノエさんこれには訳がですね…」
やや上擦った声でなんとか弁明を試みるも。
否定をしないところを真実と悟ったのか。
「……モンドウ…………ムヨウ!!!」
「いや待ってお願いですちょっと話をさせていやごめんなさいなんでもないです僕が悪かったですだから許してください頼みますから止めてくださいもうしませんからとにかくお願いですから許してくださいなんでもしますから勘弁してくださいお願いだからやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッッッッ!!!!!!!」
その後、僕達が住む住宅街に僕の悲鳴が轟いた。
かなりの大音量で叫んだはずなのに、なぜか不思議と苦情を言う者がいなかったのは幸と取るべきか不幸と取るべきか…。




